精肉卸の「ミート矢澤(ヤザワミート)」が手掛けるイタリア料理店「Bostro(ボストロ)」。以前は「Steal Eda」という会員制のレストランだったようですが、2025年夏にリブランドし一般客の受け入れが始まったようです。白金は四ノ橋の近くに位置します。
店内はカウンターが5-6席に個室がひとつ(写真は食べログ公式ページより)。オーセンティックバーのような重厚な雰囲気です。
厨房につき、会員制レストランから一般開放へリブランドしたタイミングで宇野哲也シェフへとバトンタッチ。岐阜のフランス料理店でそのキャリアをスタートし、東京では広尾「インカント」、中目黒「イカロ」、広尾「ボッテガ」などで経験を積んだようです。
ワインリストの主旨は良く分からないですねえ。ステーキを目玉としたイタリア料理店のはずなのに、ミレジムのシャンパーニュとブルゴーニュばっかし。ペアリングもトータル400ミリリットル程度で1.2万円とコース料理との価格設定のバランスが悪く、港区の会員制レストランの残り香が抜けきれていません。また、ソムリエから何が何でも追加で課金してもらおうという意気込みが感じられるので居心地が悪い。君はこんなことがやりたくてサービスマンになったのか、胸に手を当ててよく考えてみるといい。
お料理はコースでお願いしました。まずはブッラータにプリカのマリネとサラミ。ストラッチャテッラのリッチな乳脂肪に程よい辛さのサラミが良く合う。モスコット(ぶどう果汁を煮詰めたシロップ)の凝縮された深い甘みと芳醇な香りも洒落てます。
続いてメカジキ。程よく脱水しスモークさせており、心地よい薫香を纏っています。完熟したトマトとサルサヴェルデとの対比も面白く、モダンで洗練された味わいです。
表面はカリッと香ばしく、中は水分をたっぷり含んでジューシー。噛みしめるたびに小麦の甘みとオリーブオイルの華やかな香りが広がり、程よい塩気が後を引きます。
ホタテ。香り高いトリュフとバターの風味が全体を優しく包み込み、口の中にリッチな多幸感をもたらします。トマトのエキスも用いているのか料理の濃厚な余韻をキリッと整理し、また、ほうれん草のほのかな苦みと土の香りで重層的な味覚を演出します。
キンキ。昆布締めして力強い旨味を与えてからバリっと焼いています。それだけでも旨いのに、ハマグリと名古屋コーチンのスープで味わいを補強。キンキの脂がスープに溶け出し旨味の層を形成し、パワフルな日本料理を感じさせるひと皿です。
パスタはタリオリーニ。卵がたっぷりと練り込まれており、添えられたウニからはとろけるような甘みと雑味のない澄んだ潮の香りが感じられます。こちらにもハマグリのお出汁が注がれており、ネギを含め、やはり和のニュアンスを感じさせるひと品です。
真打登場、ヤザワミートによる特選和牛です。この日のお肉は田村牛で、表面は香ばしく内部はシットリとした質感。和牛ならではの肌理細やかな脂が感じられ、濃厚な甘みが広がります。
なのですが、このタイミングでソムリエがトリュフ・ハラスメントをかましてきてガッカリ。これだけで充分に美味しいじゃん。美人に厚化粧するのやめてくれる?シェフはシェフで飄々としており、「オレはそういうの関係ないもんね~」と明後日の方向を向いているのが面白かったです。
デザートはミルクのジェラートにイチゴ。ミルクからはフレッシュなコクが感じられ、スッと溶け出す瑞々しい質感が特長的。イチゴは弾けるような甘酸っぱさと鮮やかな香りを放ち、ミルクのまろやかさに心地よいコントラストを添えます。アクセントにホワイトチョコも用いており、全体の味わいをワンランク上の贅沢なものへと引き上げます。
温かい紅茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。
飲んで食べて3万円。料理の質は間違いなく一級品ですが、店のコンセプトひいては運営の不全が目立った夜でした。皿の上の完成度に対し、ワインリストや客層、店構えが向いている方向がバラバラで、全体を支配するチグハグ感が否めません。これほどのシェフを擁しながら宝の持ち腐れとなっている印象が強く残ります。
会員制からの一般開放、そしてシェフの交代。その迷走の理由は、この一夜に凝縮されていたように思います。ここのところ港区から距離を置き国内外の地方を巡っていたせいか、久々に浴びた港区の毒気にすっかり充てられてしまい、心がもたれた夜でした。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- Totto(トット)/宜野湾市(沖縄) ←テロワール、テロワール、テロワール。
- prospero(プロスペロ)/新栄町(名古屋) ←炭水化物の王者。
- シンポジウム(SYMPOSIUM)/新根塚町(富山) ←富んだ山を体現。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- Orchestra (オルケストラ)/参宮橋 ←ラヴィオーロが旨すぎてビル建ちそう。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- オステリア セルヴァジーナ(OSTERIA SELVAGGINA)/駒込 ←シェフの食に対する執念に近い情熱が、皿の上ですべて報われている。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。
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