鶏敏(とりとし)/恵比寿

ビール坂にあり、恵比寿の焼鳥店としては安定した人気を誇る「鶏敏(とりとし)」。ロブションのスタッフ御用達の「ちょろり」のすぐ近くに位置し、恵比寿駅から歩いて7-8分といったところでしょう。
店内はL字型のカウンター席に加えテーブルが数卓。予約が必須というわけではありませんが、基本的に満席の人気店なので、予約をして訪れたほうが無難です。スタッフのオッチャンたちは声が渋くイカついものの、気さくで感じが良く、いい味出してます。
「ビール坂」の中腹に位置しているので始まりはもちろんビール。中瓶は800円で生ビールは700円と、周辺相場に準じた価格設定です。サワー類はもちろん日本酒やワインの用意もあり、居酒屋らしいアルコールのラインナップです。
お通しのめかぶ。程よく粘り気があり、口に含むとトロリとした滑らかな食感が広がります。まろやかな酸味も感じられ、鶏の脂をすっと流してくれます。
こちらもお通しの香の物。この日は大根とキュウリであり、どちらも主張しすぎない控えめな味付けで余計な雑味がないため、串の合間の味覚の空白を埋めるに丁度良い塩梅です。
コールスロー。粗い千切りのキャベツに器の底に溜まるほどたっぷりと注がれた特製ドレッシングが絡みます。やはり焼鳥の脂を中和し、食欲を加速させる不思議な中毒性があります。
焼鳥に入ります。まずはササミさわび。表面をさっと炙り、中心部は絶妙なレア感を残すことで、鶏肉本来の繊細な甘みを引き出しています。そこに添えられた本わさびが、キリッとした刺激を与え、淡白な中にも一本筋の通った深い味わいを演出。肉厚ゆえに噛み応えがあり、咀嚼するたびに新鮮な肉汁がじゅわっと染み出します。
レバーも一粒一粒が大きく、エッジが立っています。炭火で外側をカリッと、内側をとろりとフォアグラのような質感に焼き上げており、口に入れた瞬間に濃厚なコクが広がり、雑味や臭みは一切ありません。これは赤ワインが欲しくなる。
うずらの玉子。表面は薄く焼き色がついて香ばしく、白身はプリッとした弾力。真骨頂は中の黄身にあり、半熟状態がキープされており、歯を当てた瞬間に濃厚な黄身がとろりと溢れ出し、口内をコーティングします。
ハラミのオクラ巻き。鶏ハラミの力強い旨味とオクラの個性が融合した創作串。ハラミは独特の弾力があり、それに繋がるオクラが熱を通されることでトロリとした粘り気を出し、肉の脂と一体化しています。
団子。「つくね」ではなく「団子」であり、武骨で愛らしいボリューム感。挽肉の柔らかな質感の中に、細かく刻まれた軟骨がたっぷりと仕込まれており、このコリコリとしたアクセントが食べていて実に楽しい。
ソリ。いわゆる鶏の足の付け根にある希少部位「ソリレス」であり、モモ肉をさらに濃縮し、究極の弾力を与えたような味わいです。筋繊維の強さが感じられ、噛み切る際のブリンッとした反発力が心地よい。
名物の「もんもん串」。せせりとにんにくスライスの挟み焼きであり、じっくり焼かれたニンニクはホクホクとしてジャガイモのような甘みを持ち、その強烈な香りがせせりの脂に乗り移っています。ひと口ごとにガツンとくるパンチの効いた味わいだ。
ネギマ。焼き鳥の王道であり、肉厚なモモ肉は皮はバリッと思い切りよく火が入っており、その間に挟まれたネギは鶏の脂をたっぷりと吸い込み、中心部までとろけるように甘い。
ハツモト。心臓の付け根にあたる部位で、ハツのプリッとした質感と、レバーのような濃厚さ、そして管の部分のコリコリとした食感を併せ持っています。脂の乗りが良く、口の中でじゅわっと広がる脂の甘みが心地よい。複雑な食感のレイヤーが重なり、1本で多様な表情を見せてくれます。
ナス。皮目は香ばしく中は蒸し焼き状態でとろとろのペースト状態。たっぷりとかけられたカツオ節の踊るような旨味と、おろし生姜の清涼感のある辛みが加わり、肉厚な串が続く中で心が安らぐ1本です。
手羽先。強火で焼き上げられた皮が煎餅のようにパリパリと香ばしく、その内側にはラーゲン質と肉汁が閉じ込められています。骨の周りの肉こそが最も旨いことを再認識させてくれる濃密な味わいです。
宴の締めくくりを飾る鶏スープ。鶏ガラを長時間じっくりと炊き出しているのか、余計な調味料に頼らずとも鶏の純粋なエッセンスがビンビンに伝わります。五臓六腑に染み渡るような優しくも深いコク。これまでに食べた多くの串たちの脂を温かく包み込み、整えてくれるような安心感があります。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は7千円と少し。暴騰に暴騰を重ねる東京の焼鳥業界に一石を投じる価格設定であり、焼鳥そのものは客単価2万円を超えるお店に勝るとも劣らず。次回は鶏そぼろ丼やラーメンなど、炭水化物系も試してみたいと思います。

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素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。