参宮橋駅から歩いてすぐの「Orchestra (オルケストラ)」。薪火を取り入れたイノベーティブなイタリア料理が評判で、ミシュランではセレクテッドレストランとして取り上げられています。店名はイタリア語で「オーケストラ」を意味し、生産者・職人・料理人・サービスマンが一体となって最高の体験を生み出す様子を例えているようです。
カウンター8席のみの店内は劇場のような雰囲気(写真は食べログ公式ページより)。オープンキッチンスタイルで、薪ストーブを置き、目の前で料理が仕上がる様子目で楽しむことができます。BGMにクラシック音楽が流れているのは店名を意識しているのでしょう。
小川慎二シェフは長崎県生まれ。フランス料理からそのキャリアをスタートさせ、2012年にイタリアへ渡り、エミリア=ロマーニャ州のミシュラン2つ星「リストランテ・サン・ドメニコ」で5年間経験を積み、スーシェフとして活躍しました。帰国後は目黒「リナシメント(RINASCIMENTO)」のシェフを務めた後、2023年に独立したようです。
ワインは結構、いやかなり高いですね。ワインペアリングの用意もあるのですが量が少ない。また、イタリア料理店なのに置かれているワインはフランス産のものが支配的というの引っかかるポイントでした。最初にトルテッリーニ イン ブロード 。エミリア・ロマーニャ州の伝統料理をシェフの故郷の食材で再構築しています。主役となる黄金色のスープは、長崎県五島列島産の焼きアゴを用いており、さらにはキジや生ハムやチーズから抽出した旨味も活かしています。和食のお椀をも思わせる親しみやすい味覚です。
「Orchestra」という店名を象徴する、遊び心あるアミューズ。器(?)をピアノの鍵盤に見立てており、ひと口サイズの美しい料理が並びます。ただ、外観に心を奪われすぎてしまい、味わいに集中できなかった自分がいる。
埼玉は貫井園(ぬくいえん)で作られるシイタケ。原木栽培ならではの強い香りがあり、そこへズワイ蟹の繊細で上品な甘みが重なり合います。パクチーの爽やかな香りもアクセントとして感じられ、山と海の幸が織りなす旨味の相乗効果を楽しめます。
自家製のニョッキ。カボチャを練り込んでおり、ほんのりと甘く、もっちりとした優しい食感が魅力的。ソースには力強い旨味を持つ鴨肉と黒キャベツを用いており、仕上げに削りかけられたトンカ豆が、桜餅や杏仁にも似た甘く妖艶な香りを漂わせます。冬らしい温かみのあるひと皿です。
「サン・ドメニコ」直伝のスペシャリテ「ラヴィオーロ」。薄く伸ばしたパスタ生地の中には、リコッタチーズ、ほうれん草、そして宮崎県産の濃厚な卵「よかもよか卵」の卵黄が丸ごと包まれています。ナイフを入れると、とろりと溢れ出す黄金色の卵黄がソースとなり、焦がしバターの香ばしさとトリュフの高貴な香りと混ざり合います。濃厚でクリーミーな味わいが口いっぱいに広がる、美味そのものパスタです。旨すぎてビル建ちそう。
お口直しにリンゴの氷菓。果物のフレッシュな酸味と甘みに、白ワインの華やかな風味が大人っぽさをプラスします。そこにカルダモンの清涼感あるスパイスの香りが効いており、口の中をさっぱりとリセットしてくれます。滑らかな口当たりも見逃せない美点です。
メインは薪火で豪快かつ繊細に焼き上げた平戸の猪。燻製のような香ばしい香りを纏わせながら、脂身は甘く、ジューシーな仕上がり。噛むほどに赤身の濃い旨味と脂の甘みが溢れ出し、野性味がありながらも臭みのない、生命力あふれる味わいを堪能できます。何ともエッジの立った肉料理です。
〆パスタはピチ。トスカーナ地方発祥の、うどんのように太くモチモチとした食感が特長の手打ちパスタです。小麦の香りがしっかりと感じられる極太麺に、酸味と甘みのバランスが良いトマトソースがよく絡みます。具材を入れずシンプルに仕立てることで、薪火料理の後の胃にも心地よく収まりつつ、パスタ自体の美味しさをダイレクトに楽しめる、満足感の高い締めくくりでした。デザートは「松ぼっくり」の形を模しており、視覚的にも楽しい。フルーティーな酸味が感じられるアマゾンカカオを用いており、ガナッシュやプラリネのザクザクとした食感を楽しみます、添えられたジェラートには茄子で、焼きナスのようにして甘みを引き出し、違和感なくチョコレートと調和します。
ピスタチオのフィナンシェと温かいウーロン茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコース料理が2万円で、酒やら何やらでお会計はひとりあたり3万円強といったところ。ワインがちょっと高いかなあと思いつつも、ラヴィオーロの衝撃的な美味しさに全てがどうでもよくなりました。現在はミシュランのセレクテッドですが、星の獲得はもう目前。結果を焦ることなく、堂々とこのオーケストラを奏で続けて欲しい。そんな期待を抱かせるディナーでした。
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イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。














