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安田食堂(やすだしょくどう)/麻布十番

秋元康がプロデュースしたアイドルグループ「ラストアイドル」の主要メンバーとして活動していたマダム安田愛里がオープンした「安田食堂(やすだしょくどう)」。どこぞのスポンサーが出資した安易な企画モノではなく、実業家であるお父様と共に、地元・小田原のネットワークを駆使して開業した真面目な飲食店のようです。
ちなみに私は元ラスアイメンバーを中心に結成された「高嶺のなでしこ」の現場に、タイミングが合えば足を運ぶようにしており(次回は5月6日の東京国際フォーラムだ)、そんな背景もあって勝手に親近感を抱いてお邪魔することにしました。
平日の遅いランチであったためかゲストは私のみ。アイドルが1on1で接客してくれる状況には流石に緊張します。私がイケメンだからかファンサも丁寧。ここは「会いに行ける」どころか、手料理を振る舞ってくれ、心地よいおしゃべりまで楽しめる場所なのです。
ランチは「特選真あじ干物御膳」か「生姜焼き御膳」の2択。いずれも3千円を超える強気の価格設定ですが、コンカフェで同等の食事を摂ることを考えれば、むしろ安上がりと言えるかもしれません。なお、夜はアラカルト中心の居酒屋的な業態になるようです。
御膳に含まれるサラダ。生野菜はシャキシャキと鮮度良く質が高い。ドレッシングは自家製で、野菜の摺り下ろしをベースにしたような、とろりと濃厚で深みのある味わいが印象的。オイルのしつこさを感じさせない軽やかな後味で、これはサラダ単体で山盛り食べたくなる勢いです。
主役の「特選真あじ干物」は、彼女が幼少期から親しんでいる小田原の味を特別に卸してもらっているとのこと。なるほど干物の概念を覆す瑞々しさが特長的で、箸を入れた瞬間に溢れ出す上質な脂には、酸化を感じさせない澄んだ旨味があり、身はふっくらとジューシー。青魚の濃密な味わいが巧みに凝縮されています。卓上の固形燃料で自分好みに焼き進めるスタイルも楽しいです。
お椀は具沢山の豚汁。銘柄豚である「和豚もちぶた」を用いているそうで、きめ細かく柔らかな肉質から溶け出した脂が出汁に甘みと力強い旨味を溶け込ませており、奥深いコクが感じられます。根菜を中心とした具材はそれぞれの食感を残しながらも出汁を芯まで吸い込んでおり、食べ応えもバッチリです。
ご飯は50円の追加料金で「十六黒米」として頂きました。全体として黒米由来のモチモチとした食感でありつつ所々にプチプチとした雑穀特有の歯ごたえが感じられます。滋味あふれる味わいであり、噛むほどに素材の風味が広がっていきます。
小鉢も気合が入っており、こちらは茄子と豚肉の炒め物でしょうか。トロトロになるまで火を通した茄子が豚肉から出た旨味たっぷりの脂をスポンジのように吸い込み、甘辛い調味と共にゴハンが進むのなんのって。脇役と位置付けるには惜しい、主役を張れる存在感のあるひと品です。
こちらの小鉢は玉子焼きにきんぴらごぼう。これぞ日本の定食という丁寧な作り込みで、家庭的な温もりに溢れています。玉子焼きは甘めの仕上がりで、おそらく上質な卵を使っているはず。スーパーで1パック600円の鶏卵を日常的に買う私が言うのですから間違いありません。
思いのほか、いや、期待を遥かに上回る美味しさでした。元芸能人の企画モノということは決してなく、きちんとしたホテルの和朝食に勝るとも劣らないクオリティであり、少なくとも1泊10万円超の「セント レジス ホテル 大阪」の朝食より断然こちらの方が好みです。ランチの定食が3千円強という価格設定は賛否あるかもしれませんが、立地や食材の質を考えれば私は妥当に感じました。

アイドルのセカンドキャリアとして、これほど真摯な取り組みは素晴らしい。この調子でソムリエ呼称資格でも取得すれば、ワイン界隈で天下取れそうな気がします。

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ラ メゾン コンフォターブル(La Maison Confortable)/麻布十番

現代フランス料理界の巨星、ピエール・ガニェールの右腕として長年活躍してきた赤坂洋介シェフが、2025年4月に満を持して自身の城「ラ メゾン コンフォターブル(La Maison Confortable)」を構えました。場所は麻布十番の雑居ビル4階で、店名はフランス語で「心地よい家」を意味します。ちなみにピエール・ガニェールは「ポトフ 美食家と料理人」という映画で、チョイ役ですが俳優デビューを果たしていますこれ豆な。
白を基調としたミニマルな内装で空白のキャンバスを想起させます(写真は公式ウェブサイトより)。窓が無いため人によっては圧迫感を覚えるかも。全体で15席ぐらいで、入口近くで小さな個室もあるようでした。

赤坂洋介シェフはフランスで経験を積み、2003年からピエール・ガニェールのもとで研鑚を重ね、2011年から2025年1月まで東京店のエグゼクティブシェフを務めました。ソムリエもピエール・ガニェール時代の同僚のようで、チームワークはバッチリです。
ワインの値付けはインターコンチの感覚を引き継いでおり、市中のフランス料理店としてはやや高め。コース料理に合わせたペアリングだと2万円程度だったのでお願いすると、これが大当たり。シェフの料理に寄り添うクラシックなチョイスであり、変なカクテルとか日本酒とかが出てこないのがとても良い。
アミューズからバリバリに凝っており最初から絶頂に達します。カリフラワー、サツマイモなど素材は素朴なものが多いのですが、正しく理を料っており、実に豊かな酒のツマミです。この少ない席数でこんな凝った仕事しちゃって身体は大丈夫かと余計な心配をしてしまうくらいです。
ひと口のホタテもゲストが入店しタイミングを見計らって調理に取り掛かっており、サクサクのホカホカ。アミューズが旨い店は何をしても旨いのだ。
ボタンエビ。海老の美味しさは当然として、彩り豊かな紅芯大根の千切りにはミミガーが組み込まれており。なるほどビストロで豚の耳を食べる機会はそれなりにありますが、このようにガストロノミックに楽しむのは初めての経験かもしれません。
牡蠣は牛肉で巻いてきます。主張の強い食材同士で大丈夫かしらと心配するのですが、これが予期せぬ調和を発揮しており抜群に美味。付け合わせにホウレンソウ、ソースはビーツといずれもクセの強いものばかりですが、不思議と一体感が感じられます。これはソムリエのワイン選びが大変だ。
全体を通してソースがしっかりとした料理が続くからか、パンはソースに寄り添う素朴な味わい。とは言え穀物の豊かな風味を感じられる地頭の良い味覚です。
フォアグラ。数年前に比べて段違いに値上がりした食材のひとつですが、これがまた実に丁寧に調理されており、プリンのような舌触りと後味の良さを楽しむことができます。季節のキノコの風味も良くエスカルゴとの調和も素晴らしい。フォアグラは惰性で出す店が多いので、当店のようにきちんと美味しいフォアグラ料理を出すのはかなり珍しいと言えるでしょう。
お魚料理は甘鯛。緻密な火入れにより、ウロコのクリスピーな食感と鯛の身のふっくらとした瑞々しさを実現。甘鯛の上品な味わいを最大限に引き出しています。付け合わせ(?)に梅を練り込んだカボチャのペーストが用意されるのですが、これがまた不思議と旨く、今度家でやってみよう。
メインは鹿肉。鉄分豊かな赤身の力強い旨味と上品な野性味に対し、ソースは甘さを抑えたチョコレートが基調としています。深いコクとほのかな苦味、複雑な香り。平成の攻めを感じさせる味覚です。面白いのはイカをトッピングしている点で、独創性を通り越して前代未聞の組み合わせではなかろうか。
〆にリゾット。1年間熟成させたカルナローリ米を用いており、ナッツのような豊かな風味と粘りを持ち、芯を感じる絶妙な食感を楽しみます。そこに辛うじて形を保っている牛タンが乗り、濃厚な肉の旨味と深いコクを加えます。仕上げに新鮮なウニをトッピングするのも挑戦的で、リゾットの熱でわずかに温められ、磯の香りとクリーミーな甘みを添えて全体をまとめ上げます。
お口直しにクレモンティーヌのシャーベット。柑橘の甘味と鮮烈な酸味が心地よく、ハイビスカスを用いたジュレの華やかな香りが洒落てます。
デザートに栗のペースト(?)にメレンゲ、柿。アクセントにマッシュルームも潜んでおり、その土を思わせる豊かな香りとほのかな旨味が、栗の風味と共鳴する。秋の味覚を巧みに組み合わせた驚きのあるひと皿です。
お茶菓子。最後の最後まで手抜き無しに凝っており、気の遠くなる仕事量でしょう。席数に対して妙に料理人が多いという印象を持ちましたが、なるほどこれだけ凝っていれば必要な配員なのかもしれません。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上の料理が3万円、ワインのペアリングが2万円、水やらなんやらでお会計はひとりあたり5万円強といったところ。ピエール・ガニェール時代よりも解き放たれている感があり、独創性みを強くした印象を受けました。奇抜な組み合わせが多いものの、いずれもきちんと美味しいのが素晴らしい。これは星の獲得間違いなし。かけてもいい。

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麻布 あみ城(あざぶ あみしろ)/麻布十番

網代公園すぐ近くの「あみ城」が2024年に業態を変更し、「麻布 あみ城(あざぶ あみしろ)」として移転リニューアルオープン。朝食からランチ、飲みまで提供するカジュアルなスタイルでの営業です。麻布十番駅1番出口近くの「叙々苑」の斜向かいに位置します。
「カジュアルなスタイル」と記しましたが、どちらかというと雑然とした店内。所々にモノが積み重なってあり、また、謎の布がかかっていたりと、お片付けが苦手な友人の家に遊びにきたようなアットホーム感があります。水もウォーターサーバーからのセルフサービスです。
「カジュアルなスタイル」と記しましたが、定食はいずれも2千円前後と麻布十番価格です。私は2,100円の「ぶり炭火焼き」を注文。ゴハンのお代わり200円、お味噌汁のお代わり100円はまだ理解できるとして、ランチのビール(中瓶)が千円というのは随分と攻めた価格設定と言えるでしょう。
主題の「ぶり炭火焼き」につき、美味しいは美味しいのですがポーションは小さく物足りなく感じました。
小鉢も付くのですが貧相な盛りつけでロマンがありません。味もご覧の通りです。
ライスは一般的な定食屋に準ずるクオリティであり、可もなく不可もなくといったところ。それよりもスタッフが配膳時もお会計時も段ボールの開梱時もずっと同じ手袋をつけっぱなしなのが気になる。私は潔癖症なのだ。
以前の業態にお邪魔した時にパっとしない店だなあと思いましたが、リニューアルしても相変わらずパっとしませんでした。2,100円という価格に納得できる魅力は見当たらず、これなら大戸屋の千円程度の定食を2セット食べたほうが満足度は高いでしょう。お疲れさまでした。

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たそがれ/麻布十番

元麻布で好評を博した一軒家フレンチ「麻布れとろ」がリブランドオープン。移転先は暗闇坂近くで、1階には安田食堂が入居しているスタイリッシュなビルディングです。
店内はカウンター7-8席のみの狭小レストラン。以前が割に大箱だっただけに、全く別のお店に変わったなあという印象を受けました。それでも黒板手書きのアラカルトメニューは健在で、相変わらず旨そうな料理が盛りだくさん。これだけバラエティに富んだ料理をシェフおひとりで対応しながら、それでいて待たされた記憶は全く無く、凄腕中の凄腕です。
ワインはフランス産が中心で6千円台から始まり、このあたりのフランス料理店の相場といったところでしょうか。我々はボトルで通しましたが、お料理に合わせてグラスワインもご提案頂けるようです。
まずはフキノトウとエビすり身のフリット。フキノトウの独特のほろ苦さと香りにエビの旨味が良く合います。サクサクとした口当たり含め、シャンパーニュにピッタリだ。
牡蠣と焼き葱のマリネ。旨味がギュっと凝縮した牡蠣。それをマリネにすることで、牡蠣の旨味がさらに引き立ち、奥深い味わいが生まれます。焼いた葱は甘味が増して香ばしい。ハーブもたっぷりで、やはりワインにピッタリです。
ニシンのレアチーズケーキ。聞いただけでは謎過ぎる料理ですが、本当にレアチーズケーキで驚きました。もちろん甘味は控えめで、その代わりにニシンの旨味たっぷり。魚の脂とチーズがこんなにも合うとは驚きです。酸味で全体を上手く整理しており、本日一番のお皿です。
玉ねぎとサクラエビのキッシュ。玉子の風味と玉ねぎの甘味が支配的で、シンプルながら実にリッチな味わいです。土台のサクサクとした食感とバターの風味が、具材の美味しさを引き立てます。
鯛のフライを注文したのですが、少しだけ生でもお出し頂けました。これは大変なことになるぞと予見される品質の高さであり、続く料理の魅力的な予告編と言えるでしょう。
鯛のフライ。予告の通り大変上質な個体であり、淡白な味わいでありながら、上品な旨味を奏でます。それをフライにすることで、外はサクサク、中はふっくら。もうそれだけで美味しいのに、独特な仕立てのタルタルソース(?)を用いての味変も素晴らしかった。
サワラの瞬間燻製。春を告げる魚であり、脂がのって身はシットリ。それを燻製にすることで、燻香含めて極上の味わい。鼻腔をくすぐる芳醇な香りが食欲を掻き立てます。
メインに鹿カツ。なんともぶっきらぼうな料理名ですが、その名の通り質実剛健で実質的な美味しさ。鹿肉特有の野性味溢れる香りが揚げることでまろやかになり、ジビエが苦手な方でも楽しむことができるでしょう。トンカツソース(?)のノスタルジックな味わいもツボります。

以上を食べ、けっこう飲んでお会計は3万円弱。それほど飲まないのであれば2万円に着地する価格帯であり、このクオリティの料理をしっかり食べてこの支払金額はリーズナブル。「麻布れとろ」時代に比べて高級志向になりましたが、それに見合った食後感。割烹料理店のような自由な雰囲気もすごくいい。大好きだ愛してる。

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