オステリア セルヴァジーナ(OSTERIA SELVAGGINA)/駒込

ジビエとチーズとプーリア料理で評判の「オステリア セルヴァジーナ(OSTERIA SELVAGGINA)」。店名はイタリア語で「狩猟肉」を意味し、シェフ自らが山に入り仕留めたジビエ料理が人気。食べログでは百名店に選出されています。山手線または南北線の駒込駅の目の前です。
店内は木材を基調とした温かい雰囲気。ドライな植物に満ちており、秋冬を感じさせる内装です。

高桑靖之シェフは防衛施設庁事務官や作業潜水士を経て渡伊するという興味深い経歴。イタリアではプーリアの名店「チブス(Cibus)」で経験を積み、帰国後は当店を開業するに加え自身のチーズ工房「カゼイフィーチョ」を旗揚げするなど意欲的な人生です。
ワインはイタリア産のものが中心で、グラスで色々あいています。ペアリングだと飲むペースに合わせて様々に提案してくれるのが嬉しい。価格も実に良心的です。
まずは真鴨のシャルキュトリ。手前の砂肝は独特のコリコリとした食感の中に鉄分を感じる深いコクがあり、レバーペーストは滑らかな舌触りと共に濃厚な旨味が口いっぱいに広がります。串に刺さっているのはキジであり、たまたま運よくゲットできたそう。鶏肉よりも筋肉質で味が濃い。
きょう作ったばかりのブッラータ。ナイフを入れると溢れ出るストラッチャテッラは濃厚でありながら軽やかな口当たりで、ミルクの甘みが純粋に感じられます。ここに鴨の塩漬け肉を合わせており、塩気と熟成香がチーズの甘みを一層引き立てます。野生のクレソンが持つピリッとした辛味と青々しい清涼感も良いですね。
パンも自家製でセモリナ粉を用いており、独特の黄色みを帯びています。丸っこいプレッツェルのようなものはプーリア州伝統の堅焼きスナック「タラッリ」。サクサクと崩れる軽快な食感と、生地に練り込まれたオリーブオイルの風味、そして微かな塩気が後を引きます。
真鴨のモモ肉と手羽。濃厚な脂が全体に回っており、脂の旨味とコラーゲン質を堪能します。シンプルに焼いただけなのに信じられないほど旨い。合わせるレンコンのシャキシャキとした食感が、筋肉質な肉との楽しいコントラストを生みます。
トルテーリーニ(詰め物パスタ)には鴨の煮込みがギッシリ。モチモチとしたパスタ生地を噛み破ると中からトロリと濃厚な鴨肉が溢れ出します。ソースは何と深谷ネギで、加熱されてトロトロになったネギの甘みは、鴨の脂との相性が抜群。まさに「鴨ネギ」のイタリア版です。
メインは真鴨の薪火焼き。燻香を纏わせつつ胸肉はしっとりとロゼ色に焼き上げられ、シルキーな食感と共に上品な血の香りが漂います。ハツはプリッとした弾力があり、内臓特有の野性味ある鉄分の味を楽しむことができます。ソースはサルミで種々の内臓を感じる濃厚で複雑な味わい。付け合わせのチーマディラーパ(西洋ナノハナ)のほろ苦さが肉の脂と濃厚なソースによく合う。
〆の炭水化物はラーメン(?)。鴨のガラを長時間炊き出したスープは透き通っていながらも黄金色の脂が浮き、鴨の甘みとコクが凝縮されています。味の決め手は自家製の「肉醤」で、発酵由来のの深い旨味と塩気がスープに複雑なレイヤーを加えます。具材には真鴨のササミ肉を用いており、濃厚なスープとのバランスを上手く調整しています。
デザートはタルトタタン風にソテーされたリンゴにシナモンのジェラート。リンゴは熱が入ってトロトロに仕上がっており、シナモンの香りをまとった大人な味わいのジェラートに良く合います。
黒文字を加えたハーブティーでフィニッシュごちそうさまでした。以上のコース料理が1.2万円で、酒やら何やらお会計はひとりあたり2万円弱。料理に係る密度の濃さを考えれば実にお値打ちであり、シェフの食に対する執念に近い情熱が、皿の上ですべて報われているように感じます。

これだけ手間暇のかかったジビエ尽くしのコースに、ワインを存分に楽しんで2万円でお釣りがくるとは都内では奇跡に近い満足度。次回は季節を変えて、ジビエではないタイミングでの料理も試してみたい。オススメです。

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