金月そば(きんちちそば)/牧志(那覇)

読谷村に本店を置く人気の「金月そば(きんちちそば)」。沖縄そばの麺は製麺所に外注し、そこで茹で油をまぶして冷まして仕入れるのが一般的ですが、当店は自家製の生麺が自慢です。読谷村本店のほか恩納村にも展開し、国際通り店は「むつみ食堂」という食堂を引き継いだ形で営業しています。
平常時は常に行列の人気店ですが、コロナ的に観光客が減り、正午前に入店できればガラガラです。席間にはゆとりがあり換気も消毒もバッチリ。明るく清潔なお店です。
1日15食限定の「本ソーキそば」を注文。880円です。「麺が自慢」と事前に伺っていたため、150円の追加料金で大盛りにしてもらいました。そばの部と本ソーキの部は別々に提供されます。
主題のそば。フスマの部分まで練り込まれているため香りが大きい。また麺の形が変わっており、太い麺に1本の筋が入り窪んだような形となっています。その筋にスープが良く絡み、また、ワシャワシャとした食感が印象に残ります。沖縄そばというかラーメンの麺みたい。

スープは魚介中心で一見クリアなのですが、食べ進めているうちに濁りが生じ味に複雑性が増すという面白い仕組みでした。 
本ソーキ。骨付きのまま煮込んだお肉であり、肉の味が濃く味付けも濃い。ネギがたっぷりトッピングされているのがネギ好きとしては嬉しい。
なるほど沖縄そばの生麺ブームの立役者だけあって、興味深い味わいでした。ちなみに昔は「むつみ食堂」の食堂メニューを引き継いでおり様々な定食がオンリストされていたそうですが、現在は殆どそば一色に染まっておりPMIは完了した模様。読谷本店では「つけめん」や「担々麺」などの(沖縄そばとしては)変わり種も用意されているようなので、次回はそちらを試してみようと思います。

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沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。

Le Bonze(ルボーズ)/銀座

東銀座駅から歩いて5分ほどの場所、日本最古のインド料理店「ナイルレストラン」あたりにあるビストロ「Le Bonze(ルボーズ)」。青木健晃シェフは銀座の老舗フランス料理「ペリニィヨン」でそのキャリアを長く費やした後、2012年に当店をオープン。食べログでは百名店に選出されています。
雑居ビル3階のテナントであり、エレベータを降りるとすぐ入り口(写真は食べログ公式ウェブサイトより)。

ところで18時に予約を入れていたのでその7-8分前に到着したのですが、スタッフに予約名を告げるとすごくすごい嫌な顔をされ、しぶしぶと席に案内されます。着席後も「オープンは18時なのでそれまでお待ちください」と謎の宣言。なんだ、君?一体、揉めるのか?てゆーかあと数分なんだし、そんなことワザワザ言う必要ある?メニュー渡して放っておけばええんとちゃうの?てゆーかそもそも定刻になるまでドア閉めとけばええんとちゃうの?

この互いが不愉快になるシステムにつき、解決策はパっと考えただけで10個ぐらい思いつくのですが、敢えて塩対応に徹するという個性的な客あしらいは何かしらの哲学があるのかもしれません。
18時ピッタリにメニューが手渡され、この正確さは時報として活用できるかもしれません。しかしながらワインリストには記されていない欠品があり、一生懸命選んでも「それはありません」の刑に処されるので、予め在庫があるのはどれかを聞いた上でワイン選びに臨むと良いでしょう。
気を取り直してお料理。スペシャリテの「鳥の巣」はカダイフを巣に見立て、半熟卵を配置します。ベーコンのジュレで周囲を満たすのが面白い。簡単に混ぜてから頂くのですが、カダイフのサクサクとした食感や卵黄のトロっとした舌ざわり、ベーコンのコクと真新しい美味しさです。
「大地のサラダ」はその名の通り新鮮なお野菜がたっぷり。調味もシンプルながらセンスが良く、大地の恵みをモリモリと心地よく楽しむことができます。
「パテ・ド・カンパーニュ」は少し変わったカットであり、エアーコンディショナーのリモートコントローラーを薄くしたようなサイズ感。肉やらレバーやらナッツやらが色々と練り込まれており、丸ごと買って帰りたいほど旨かった。付け合わせのラペも手堅い美味しさです。
パンは「ジョアン(JOHAN)」の紙袋から出てきたので、恐らくそうなのでしょう。素朴な味わいですが、深みのあるバターをたっぷりつけてフランスそのものの味わいです。
メインは京都は七谷鴨のモモ肉をローストで。このひと皿は畢生の出来栄えですねえ。逞しい肉そのものの美味しさはもちろんのこと、付け合わせの野菜やキノコの調理も抜群で、最近食べたフランス料理の中では最も心に残ったメインディッシュのひとつでした。
以上の料理ならびにワインを1本ふたりでシェアし、お会計はひとりあたり8千円ほど。銀座という地でこのクオリティのフランス料理を食べ、この支払金額は非常にお値打ち。

ただし課題はホールスタッフの血の通わない接客姿勢で、素敵な時間を過ごしてもらおうという気概は食事中、1秒も感じませんでした。こんなことならシェフだけのワンオペで、あとは客がセルフサービスでやったほうが余程食事を楽しめることでしょう。料理と接客のクオリティに大きな隔たりがあり困惑したディナーでした。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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ルアン 竹田城 城下町 ホテルEN/竹田(兵庫)

竹田城下の観光資源として最も重要な役割を果たす「城下町 ホテルEN」。宿泊施設としてはいくつかの町家を飛び地でリノベしているのですが、メインダイニングは「ルアン」と称し、竹田駅プラットフォーム沿いの建屋に位置します。
400年の歴史を持つ酒造場をリノベした店内。天井が高く無数の梁が走り、力強い土塀の厚みにも迫力が感じられます。ビジターでの利用も可能なようですが、この日のゲストは皆、宿泊客のようでありカジュアルな装いでした。
リゾートホテルのレストランとしてはアルコールの値付けが安く、ビールやグラスワインなどが千円を切り、ワインについても1万円を切るものがいくつかありました。
アミューズは「地元野菜のガルグイユ」であり、ブラスのような派手派手なひと皿を期待していたのですが、何でしょう、この普通の極北とも言えるプレゼンテーションは。野菜そのものに罪はありませんが、盛り付けがダサすぎます。
続いて「新玉ねぎと魚介のアンサンブル」とのことで、玉ねぎのムースにホタテやサーモンなどの魚介類が散らされているのですが、どこいなの披露宴といった仕様です。
パンもそのへんのスーパーで買ってきたような味わいであり、フランス料理愛好家としては絶対に許せないクオリティです。
こちらはスペシャリテだそうで、アワビをブルゴーニュのエスカルゴっぽく調理したものであり、素材に忠実な美味しさです。キノコでセッシュされているのはご愛敬。
スープはベーシックな味わい。妙に「カプチーノ仕立て」と連呼されていましたが、そんなに珍しい工夫なのでしょうか。
本日の鮮魚。マダイのナージュ仕立て(魚介の出汁とクリームをつないだソースで食べる)とのことですが、これが全然美味しくない。普通に塩焼きでいいんだけど。
メインは但馬牛。シンプルに焼き目を付けただけであり、これはさすがに美味しいです。それにしても盛り付けがダサいなあ。ABCクッキングスタジオでももう少しマシな指導をすると思うのだけれど。
デザートは「朝来みどり」というブランド緑茶を用いたブランマンジェとのことですが、これは中々に美味しかった。
何だこの不気味な皿は。本日のお茶菓子とのことですが、呪いでもかけたようなおどろおどろしい外観に腰が引けてしまいます。
冗談にしても冴えない食事でした。どこぞの有名シェフが監修されているようですが、掘り尽くされた炭鉱とも言えるラインナップであり、20世紀からOSがアップデートされていないような印象。これはいったん焚書坑儒したほうが良いでしょう。このままではフランス料理が誤解されてしまう、そんな危機感を覚えたディナーでした。

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ルアン 竹田城 城下町 ホテルENフレンチ / 竹田駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.0



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★2、15000円

竹田城 城下町 ホテル EN(えん)/竹田(兵庫)

竹田城への登山道直下にある「竹田城 城下町 ホテル EN(えん)」。「木村酒造」という歴史ある造り酒屋の建屋をリノベーションしたホテルです。宿泊施設としてだけでなく、レストランやカフェ、観光案内所など竹田エリアにおける重要な観光拠点としての役目も担います。
宿泊施設はいわゆるホテル的な大きな建屋ではなく、竹田の街に点在する古民家をそれぞれ。つまりはコテージと管理棟といった関係に近い。我々は奮発して自室にお風呂のある広めの部屋を予約しました。
確かに広いのですが、うーん、ボロい。。。外界との隔たりは薄いガラス戸一枚であり、軽いパンチで割れてしまう勢いです。これはちょっとセキュリティ的にどうなんでしょう。同じリノベ案件と言えども「里山十帖」「御宿 富久千代」とは意識の高さが大きく異なる気がします。
リビングとは別に寝室も用意されているのですが、通路に段差があったり通路に頭をぶつけそうになったりと、とにかく不便。壁も薄く、枕元に耳栓が置かれている時点でお察しです。また遮光カーテンのような文明の利器は存在せず、夏場は朝5時ごろに朝日で目覚めることでしょう。
ミニバーにつき、ミネラルウォーターやコーヒーなどは無料なのですが、ビールについては図々しくも千円近くをチャージしてきます。
ウェットエリアは広いのですが、やはり無理くりリノベしているだけあって使い勝手が悪い。ちなみにアメニティは愛媛の「SILMORE(シルモア)」でした。
風呂場は広く、バスタブは木製で特大です。温泉ではありませんが、脚をノビノビできてリラックス。一方で、バスタブの無い部屋はいちいち公道に出て管理棟の大浴場に向かわないといけないので面倒かもしれません。
お手洗いはよくぞ古民家に最新鋭の便器を持ち込んだなと感心するのですが、ガラス窓で外から見えるは水は濁ってるわ虫は多いわで落ち着いて用を足せませんでした。
食事は管理棟脇にあるダイニングへ。どこぞの有名シェフが監修するフランス料理とのことですが、掘り尽くされた炭鉱とも言える時代遅れのコース仕立てであり、どこいなの披露宴といったお気持ちです。詳細は別記事にて
朝食は夕食に比べるといくらかマシでしたが、それでも余計な工夫、例えば卵料理を無理くりスフレ風にしたり、湯葉をパン粉チーズ焼きにしたりと、何故もっと自然体にできない・なぜスタッフの誰も疑問を呈しない、と考えることが多い朝食でした。
竹田城そのものは観光地として大変魅力的なのですが、竹田の街はその観光客を迎え入れるにヘボすぎますね。なんせ当館が一番の宿なのですから。竹田城を訪れる際は、竹田の街に滞在するのではなく、姫路や大阪、京都などに宿を取り、そこから日帰りツアーで訪れるべきだと結論付けさせてくれた宿でした。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

鮨まつもと/赤坂

赤坂の歓楽街ど真ん中にある「鮨まつもと」。ミシュラン1ツ星。正午から夜まで通しで営業しているので使い勝手良し。きっと同伴需要があるのでしょう。
店内はカウンターが7-8席に個室がひとつ(写真は食べログ公式ページより)。最近流行の数千万円をかけたという感じではなく、割と素朴な内装で好印象。
飲み物は日本酒1合が1,500円前後から始まり少々お高い。まあ、このあたりの鮨屋という意味ではこんなものかもしれません。大将はスペインで働いていたこともあるそうで、イネディットが置かれているのはその名残かもしれません。
瞬でバーっとツマミが並びます。カツオにぬか漬けに鯨ベーコン。鯨ベーコンがいいですね。自家製のもので、なるほど確かに哺乳類であることを感じさせる肉質で酒が進みます。
お椀は焼鮎しんじょう(だっけ?)。透き通ったスープに香ばしい魚の香り。まるで日本料理店にお邪魔しているかのようです。
早速にぎりに入ります。名刺代わりに中トロです。かなり分厚いカットでありムシャムシャと食べ応えがあります。
ガリは米酢で漬けたものと赤酢で漬けたものの2種。シャリは穏やかな調味なので、いくらか物足りない場合はガリで調節すると良いでしょう。
トキシラズ。やはり厚みのカットであり贅沢な1カンです。
シマアジもワシャワシャと食べ応えがあります。
ウニをイカで包んでしまいました。これはありそうでない逸品。イカには細かく包丁が入っており、総体として飲める1カンです。
スッポンの茶碗蒸しは冷製で。スッポンの身がたっぷり入っており食べ応えがあるのですが、少々温度帯が低すぎるきらいがあるので、個人的には温かい状態のほうが良かったかもしれません。
ハモの東寺揚げ。東寺揚げとは湯葉を衣にして揚げた料理のことで、なるほど同じ京都出身のハモの身とよく合う。ソースはポルチーニを主体としており香りと旨味が豊かであった。
ヅケは程よく酸味が感じられエレガントな味わい。
クロムツはド迫力なカットであり、やはりムシャムシャという食感が特長的。
しめ鯖が美味しい。脂たっぷりなところを心地よい酸味で整理しており、調味も強く、私好みの逸品です。
ミスジのしゃぶしゃぶ。え?ミスジ!?私が焼肉屋でしか食べたことの無い食材であり、相当に困惑する。しかしながら桜海老と芽ネギをトッピングし、フキノトウ味噌で味を調えるあたりセンスを感じました。
エビをフリットにし、ウニを乗せた手巻き鮨。ミスジに続いてフリーダムな発想ですが、これは企画倒れですね。それぞれの食材がバラバラにその存在を主張しており調和が感じられませんでした。
ホッキ貝は軽く炙って甘味を増します。
トロが爆裂に旨いですねえ。そのパワフルな味覚に合わせて恐らくシャリも変えており、私好みのひと品です。
冷製のビーフンはアワビとウニと共に。なるほどビーフンは米粉から作られるものであり、ある意味では鮨と構成要素は同じといったところでしょう。
巻物につき、ネギトロに海ぶどうを巻き込みました。これは面白い試みですねえ。私は年に3ヵ月ほど沖縄に滞在し、また、年に30回は鮨屋に訪れるものの、海ぶどうと鮨のコラボというものは初めての経験かもしれません。
アナゴにギョク。いずれも甘味が強くスイーツのよう。玉子についてスイーツのようと評することは多々ありますが、アナゴについても同列に語るのは珍しいかもしれません。
正統的なお椀でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

何とも自由奔放な鮨屋でした。その独立不羈な佇まいは湯島「すし初」を彷彿とさせ、その活発すぎる試みから賛否が両論となるかもしれません。とは言え飲んで食べて2.5万円というのは立地を考えれば悪くない価格設定であり、通し営業という使い勝手の良さと相俟って、ある意味「都合の良い」お店に成り得るかもしれません。使えます。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。