鮨処木はら(すしどころきはら)/函館

函館空港からタクシーで10分ほどの場所にある湯の川温泉。その中心に位置する「鮨処木はら(すしどころきはら)」。食べログでは百名店に選出されており、道外のゲストも多いお店です。
大きな窓からグリーンが映え、遠くには下北半島が飛び込むという抜群の眺望。カウンター席が中心ですが個室もあり、地元の子連れファミリーが楽しそうに鮨をつまんでいます。

木原茂信シェフは北海道出身。15歳からこの世界に入り、34歳の若さで独立し当店を開業。ロマンスグレーの髪を湛えたダンディーな職人であり、気持ちの良い接客です。
酒は1合(?小さいとっくり1本)で千円前後と良心的。PB醸造の「木はら」を始め、北海道の酒が取りそろえられており、旅行者には堪らないラインナップです。

ちなみに食事の注文は13カン6,600円のにぎりを中心にアラカルトで色々お願いしました。昼夜のメニューに違いはなく、昼にコース料理を頼む客や徹頭徹尾おこのみで通すゲストなど、完全にフリーダムなシステムです。
お通しにアンコウの共和え。一口食べて連れと大きく頷き合う。この店はアタリであると。サッパリとした身にキモのクリーミーな舌ざわりが見事な味わい。
ナマコ酢。コリコリっとした歯触りながら噛みしだくほどに粘性が出てくる不思議な食感。風味は全く軽やかであり、夏の前菜にピッタリ。
麺被りですが好物なのでアンキモを。フォアグラのようなアンキモではなくフワっと空気を含んだ軽やかなタイプであり、ポン酢(?)のジュレと良く合う。やばいほど旨いですねコレ。
続いて自家製の塩辛。塩辛って、オヤジ臭くてダサい味わいであることが多いですが、当店のそれは実にクリアであり爽快な味わい。イカの質の良さがダイレクトに伝わる逸品です。
握りに入ります。まずはヒラメ。シュっと身が引き締まり噛みしめるほどに旨味が滲み出る。シャリは赤酢タイプで、函館の鮨屋としては珍しい部類だそうです。
ヅケ。しっかりと調味しつつもマグロの美味しさがハッキリと伝わる。
スルメイカ。数日前に同じ産地の同じ食材を食べたのですが、質が全く異なり怒りがこみ上げてきました。つまりそれぐらい美味しい。道路の看板の標識にイカの絵を書いてしまう市だけある。
ボタンエビ。くわー!最高!エレガントを超えてエレファントな美味しさ。口いっぱいにエビの甘味が広がる幸せ。
イクラ。赤い真珠とも言うべき食欲をそそる外観であり、海苔の磯の香りと共に、思わず目を閉じてしまう美味しさです。
ホタテ。ガシュガシュと中々の噛み応えであり、マッチョな味わい。隣のゲストは磯辺焼きにしてもらっており、何とも自由な鮨屋である。
釣りのキンメダイ。軽く炙ってキモをのせて、じっとりと甘くいまめかしい味わい。連れは余程気に入ったようでお代わりを要求。何とも自由な鮨屋である。
おや、ハタだ。ハタをこういう感じのにぎりで食べるのはあまり無い経験ですが、なるほど説得力のある味わいであり、気品を感じる味わいです。
ニシン。東京の人からすれば雑な魚扱いですが、北海道で食べる生のニシンは本当に美味しい。来月産まれる次男の名前はニシンにしよう。
函館のバフンウニ。思わず目を閉じてしまう官能。北海道はいいなあウニの産地がいっぱいあって。
ホッキガイ。一般的にクセの強い食材とされていますが、なかなかどうして清澄な味わいです。肉厚で食べ応え抜群。
海鮮スープは魚介のエキスが詰め込まれたオールスターな味わい。恐らくはゼロに近いカロリーなはずですが、これが自宅に常備できればダイエットも成功するのではなかろうか。
トキシラズ。言わずと知れた高級魚であり、魚そのものの味が濃い。どこまでもクリアな味わいであり、乳飲み仔羊を食べたのと似たような食後感です。
中トロ。見て下さい、この特大のカットを。勝どき「はし田」を彷彿とさせる迫力であり、その外観に負けず劣らずどっしりとした風味であり、思わず背筋が伸びる美味しさです。
毛ガニはこれでもかというほどカニの身がギュウギュウに詰まっており、カニミソと共に思わず酒をもう一本追加してしまう。
玉子。ハッハッハッ、ギョクで私は終わらない。むしろ終わりの始まりである(何が)。
追加でシメサバ。コッテリと脂が乗り、それでいて優しい〆であり後をひく美味しさ。
アナゴは独特ですねえ。大振りのカットでかなりの肉厚。ムシャムシャとパワフルな食感であり、私の決して短くはない人生においてトップクラスに好みなアナゴでした。
〆はカンピョウ巻き。たっぷりと自慢のシャリを楽しめて余韻に浸ります。
ワサビ風味のシャーベットで〆てごちそうさまでした。

かなり自由に暴飲暴食したのですが、お会計はひとりあたり1.2万円で済みました。面壁九年、私の鮨屋巡りのゴールは此処にありました。金に飽かせてピンのピンばかりを集める東京の鮨屋とは芸風が全く異なり、地元の食材で地元の客を心ゆくまで楽しませようという方向性。鮨屋の答えは函館にあったのです。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

シングルマザーはGoTo淡路島。パソナの託児所付きオフィスが斬新すぎた件。

パソナが本社機能を東京から淡路島へ移すと報じられてから約一年(上記は読売新聞オンラインより)。私は東京の一極集中は反対で、アメリカみたいに色んな都市にその街自慢の会社があっていいのにという思想の持ち主。そのため私はパソナとは何の利害関係もありませんが、当該ニュースを勝手に好意的に捉えていました。
そんな折、古くからの友人がパソナに転職し淡路島へ移住したという連絡。おお、身近にこんなにトレンディな女子がいるなんて。でも彼女、結婚してて子供もいるんじゃなかったっけ?
ネット越しに訊ねるには明らかにややこしそうな気配が感じられるので、直接淡路島に赴いて事情聴取することに。このあたりの私のフットワークはめちゃ軽です。
羽田から伊丹へと飛び、そこからレンタカーで淡路島へ。あまり意識していなかったのですが、淡路島って結構おおきな島なんですね。調べてみるとシンガポールを一回り小さくした、東京23区ほどのサイズ感だそう。それでも今回は北端の市街地を中心に滞在するので、大阪北部からは1時間強、神戸から30分でアクセスできます。
廃校を活用した観光施設に集合してランチを楽しみつつ近況報告(レストランについての紹介は別記事にて)。平たく言うと、彼女は旦那と別れてシングルマザーとして生きていくことを決意し、社宅や託児所などが充実しているパソナへの就職を決めたようです。今かなりサラっと書きましたが、そのへんの韓国ドラマが尻尾を巻いて逃げ出すほど複雑で奥行きのあるストーリー構成でした。
食後は島内をドライブ。私は淡路島随一のMICE施設「淡路夢舞台」にある「グランドニッコー淡路(旧ウェスティンホテル淡路)」に滞在しており、いったん私の車を置き、そこから彼女の車でドライブに出るのですが、「この建物の中にオフィスがあるけど、覗いてみる?」とのお誘い。おおー、行く行く、大人の社会見学だ。
ちなみに「淡路夢舞台」は安藤忠雄のグランドデザインに基づくものであり、最近では「櫻坂46(旧欅坂46)」の「BAN」という曲のMVの舞台となって話題となりました。確かに直島の「地中美術館」にテイストが似ている。それにしても、安藤建築に職場があるなど贅沢なライフスタイルである。
オフィスへとお邪魔します。おー、イマドキのノマドテイストというかカフェ・レストラン風の作業場です。でも、バーカウンターがあったり帳場のレジ台があったりと、「風」を通り越してレストランそのものにも見える。「そう、もともとレストランがあったテナントをそのまま居抜きで使ってる。そのへんあまり拘りがないみたい」
続いて彼女が普段居るオフィスにも立ち寄ります。「淡路島の中にオフィスはいくつかあって、フリーアドレスというか、そのどこで働いていてもいいのね。でもあたしはこのオフィスの上の社宅に住んでるから、ここに居ることが多いかな。通勤時間1分。ふっふっふっ」てゆーかこのエクステリア、どう見ても元スーパーマーケットでしょう。
入り口に野菜が並べられており、まさにスーパーマーケットです。「あ、これは会社が農業もやってて、そこで作られたものが各オフィスで無人販売されるの。1袋100円。お、今日は大葉が良いかもしれない」
オフィスへとお邪魔します。こちらは大学のカフェテリアみたいな雰囲気ですね。それにしても騒がしい。「そりゃあもう、オフィス内に託児所があるから、仕事中にウチ
の子の叫び声が聞こえてくるなんて日常茶飯事。気分転換に抱っこしに行ってもいいし、静かにしてられるなら膝の上に乗せたまま仕事しててもOK」ということで、不思議なカタチで彼女のお子さんにご対面する運びとなりました。やあこんにちわ。
なるほど「オフィスに託児所を併設」のような売り文句は良く聞きますが、コチラでは併設どころか一体化しています。おねいさんがExcelでゴリゴリVLOOKUPやってる隣で子供たちがでんぐりがえしをしている。シュールである。
ここはフィットネススタジオ?オフィスの中に?「そうそう、会社からタダで習い事が提供されるの。昨日はバレエ、今日は空手、明日はブレイクダンス」待て待て待て待てブレイクダンスは幼児が人から習うものじゃないだろう。ストリートだろストリート。
「ウチの子は欲張って習い事を取り過ぎてるから、家に帰るともうグッタリ。あとはお風呂に入れて寝かしつけるだけ。シングルマザーでも子育て楽勝楽勝」え?ちょっとまって?晩御飯とかどうすんの?「ああ、それは会社から出る。昼も夜も。だから平日はほとんど家事をすることがないんだよね。お給料は大して良くないけど、そもそもお金を必要としないライフスタイルなのかもしれない」なるほど富とは心の豊かさであって、財布の中身ではないのだ。
「いろいろ福利厚生が充実してるのはもちろん良いんだけど、やっぱり似たような境遇の人が多いのが気楽でいいかな。シングルマザーだらけだから好奇や同情の眼差しなんて一切ないし、ヘンな詮索もされない。同僚がママ友だから、ママ友同士の妙な見栄の張り合いもゼロ。向き不向きはあるかもしれないけど、あたしはこのムラみたいな生活は結構やりやすいかも」なるほどこの生活様式は、狩猟民族や農耕民族などの時代のムラ社会をコンテンポラリーに進化にさせたものなのかもしれません。

「でもあたしはもうアラフォーで、さすがにこの歳で見ず知らずの離島に移住するのは勇気が要ったけどね」年齢なんて気にすることないよ。若者特有の訴求力は失ったかもしれないけど、きみは既に違った種類の魅力を手に入れつつある。少なくとも僕は二十歳の女の子ふたりとデートできてラッキーぐらいに思ってるよ。

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リストランテ・スコーラ(ristorante scuola)/淡路島

2010年に閉校となった淡路市立野島小学校を活用した複合観光施設「のじまスコーラ」2階に位置する「リストランテ・スコーラ(ristorante scuola)」。地産地消マニアの奥田政行シェフがプロデュースするイタリアンレストランです。
店内は小学校とは思えないほど雰囲気のあるハコで、ビシっとクロスが張られ、きちんとレストランしています。一方で、ホールは学生のバイトが中心なのか、店や料理の格に比べるとサービスがぎこちない。もう少し自然体でレガートに接してくれると居心地が良いのだけれど。

また、対面で座る場合にアクリルボードを設置するのは時節柄理解できるのですが、それに覆いかぶさるようにピアノの生演奏が流れているので、連れとの会話にたいへん苦労しました。
運転があるのでノンアルコールのスパークリングワイン(?)で乾杯。ちなみに厨房を取り仕切っているのは淡路島出身の岡野満シェフで、大阪の名店で腕を重ねたのち渡仏。帰国後も関西の有名レストランで活躍し、「DRAGON CHEF2021」では兵庫県代表として腕を鳴らしました。
アミューズ。ちょっと不思議なプレゼンテーションですが、左上の鰻がマッチョな仕立てで美味しい。お口取りに鰻って贅沢やな。
トウモロコシの冷製のフラン。大地の恵みを感じる立地な甘さ。ポップコーンをトッピングするあたりシャレがきいています。
今が旬のアコウ(キジハタ)。ムッチムチの食感ながらジトジトと脂が乗っておりゼロイチファミリアに所属レベルの美味しさです。調味は最小限に留め、素材の良さを前面に押し出しているのも好印象。
パンはちょっとそっけない味わいですね。1階にしっかりとした窯を設けたパン屋もあるようなので、もう少しややこしい味わいのものでも良かったかもしれません。
パスタは「雲丹と焼海苔バターのフェデリーニ」をチョイス。これはもう、本当にこれを選んで良かったと思わせてくれる味覚。ウニの美味しさは当然として、焼海苔バターが反則級の美味しさであり、いや、これ美味しいなあ。自宅で真似してみよう。
メインは「淡路島産鹿肉のロティ 赤ワインソース」を選択。素材の良さはさておき、完璧な火入れや堂に入ったソースの味など非常にレベルの高い調理です。ところで連れが注文した「淡路ビーフのビステッカ」も実に旨そうであり、しかもバラバラの選択であってもOKという懐の深さ。関西の皆さん、ここの厨房ちょっと凄いですよ私は見つけてしまいましたよ。
デザートはカシスのジェラート。気前の良いサイズ感であり、リコッタチーズもたっぷり。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。

お邪魔する前は廃校を再利用した企画モノの観光地レストラン、という斜に構えた認識だったのですが、料理のレベルは結構、いやかなり高いです。その分やはりサービスのぎこちなさが悪目立ちするのが残念。凄腕のカーポ・カメリエーレが参画すればミシュラン1~2ツ星は当選確実なポテンシャルを秘めたお店でした。

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