私は2019年から2024年3月までJALのダイヤモンド会員だったのですが、コロナ後のサービスの劣化が甚だしく、何度か真剣に苦情を申し立てたにも関わらず
改善の兆しは見られなかったのでサヨウナラ。2024年からはANAに鞍替えし、そのデビュー戦としてホノルル行きのファーストクラスを予約しました。
A380通称「フライングホヌ」に乗りたかったので出発は成田から。ファーストクラス客向けの秘密のチェックインカウンターZへと向かいます。
これはなかなか、いや、かなり見事なチェックインカウンターですね。他の空港のチェックインカウンターにつき、ファーストクラス客はレーンこそ分けられているもののカーペットを敷いてあるくらいの違いでしかないのですが、コチラは完全に空間が分けられており、カウンター数もエコノミークラスのそれよりも多いくらいです。もちろん専用の手荷物検査場もあってスイスイ。
我々が乗り込む機体はA380の3号機「ラー」。ハワイの言葉で太陽を意味するため、機体のカラーもオレンジなのでしょう。ファーストクラスは2階に位置し、そこへ直結する通路から乗り込みます。
ラウンジ同様、良く言えばスタイリッシュですが悪く言えば安普請であり、
JALのファーストクラスのほうが高級感があるように感じます。もちろんこれは路線や機体にも拠るかもしれません。
妻と並びのシートを予約したのですが、パーティションを完全に取っ払うことはできず、ダブルベッドのように楽しむことはできません。それでも2人で合計3畳近い広さは感じられ、アルファードの後部座席を全て使用しているような感覚です。
アメニティにノイキャンのヘッドホンに機内特別販売のご案内にwifiのカード。「機内特別販売のご案内」は響の100周年記念ボトルを1人1本限定で5万円で買えるというもので、ファーストクラスの乗客はほぼ全員買っていたように見えました。我々も帰りに2本買いました。
アメニティはレザーボックスがイギリスを代表する高級レザーブランド「エッティンガー(Ettinger)」のもので、コスメ類は「SENSAI」。私は極潤しか使わないので妻にプレゼントすると、とても喜んでいました。愛妻家たる所以である。
席に着くとすぐにウェルカムドリンクが振舞われます。A380は520席もあるので全乗客が乗り込むには時間を要するのですが、あれやこれやと設備に見どころが多いので、決して待ちくたびれるということはありません。SNSで時おり「出発時刻なんて一緒なのに急いで乗る意味あんのwww」と嘲笑を向ける心ない方もいらっしゃいますが、我々はシャンパーニュを飲みながら渡航先の最新レストラン情報などをCAから仕入れるのに忙しい。
CAの接客は良い意味でカジュアルで、スタバの店員のようにフランクに話しかけてきてくれます。
JALのファーストクラスのCAは取引先の秘書のような慇懃無礼な接客なので、このあたりの方針の違いは非常に対照的に感じました。
夜に飛び立ち朝に着くフライトなので、離陸前にパジャマに着替えてしまいます。ゲストの全員が同じネズミ色のスウェット上下に着替えるので、皆、囚人のようで何だかおかしかったです。
化粧室は
カタール航空のファーストクラスとまでは言えないものの、中々の広さです。ただ、内装はエコノミークラスのそれと大差なく、高級感に欠けているのが残念。
水平飛行に入るとアペリティフ、アミューズと続き、すぐに夕食が用意されます。テーブルの広さはかなりのもので、下手なレストランよりも面積は広いかもしれません。
フライト中のシャンパーニュはクリュッグで通します。ボディに厚みがあって、空の上でも充分に美味しい。
JALの目玉はサロンですが、若いブランドブランは軽すぎて高高度で飲むには適していないような気がします。
アミューズは和食・洋食共通のもので、どちらかというと洋食寄りのスタイル。リエットの芽キャベツ包みとタコをどないかしたやつが良かったです。
先付はホッキガイとお浸しであり、機上で楽しむものとしてはかなりの美味しさ。今シーズン初のマツタケも嬉しい。前菜も色々と盛り込まれており、酒のツマミに最適です。
お椀はアマダイに月見豆腐。スープに旨味がきいていてわかり易い味わい。月見豆腐は中心部がキンキンに冷えたままであり、このあたりは機内食の難しいところかもしれません。
お造りはハタに本マグロにイカ。先のホッキガイもそうですが、魚介類はいずれもかなりの品質。海外発のフライトだと難しい面もあるでしょうが、日本発のフライトの見どころのひとつと言えるでしょう。
メインは和牛サーロインの吉野煮。ハモなどの小鉢も色々と添えられかなりのボリュームです。ゴハンも一緒に持って来てもらってすっかり満腹。
デザートは洋食メニューからも選べるとのことだったので、キャラメルポムをチョイス。が、これはアメリカで食べるスイーツのようで、とても大味。バニラのアイスがシンプルに一番美味しかったです。
食後は化粧室でしっかりと歯磨きし、その間にCAにベッドを作ってもらいます。長さは結構ありますが横幅は狭く、寝返りを打つことは難しい。ミイラのように行儀良く寝る必要があります。ちなみに左後ろのゲストが明らかな睡眠時無呼吸症候群で、機内にCPAPは持ち込めないのかな、など、彼の身を案じながら眠りにつきました。
朝食はアラカルトメニューから好きなものを好きなだけ注文するスタイルで、まずはガーデンサラダ。これはまあ、コンビニレベルの味わいです。
メインにハンバーガーを選んだのですが、これは全然美味しくないですね。
ラウンジのハンバーグも不味かったので、ANAはハンバーグに対してもっと真面目に取り組むべきだと思います。太平洋航路を飛ばしているエアラインとしては唯一倒産経験が無い航空会社なのだから、その矜持を活かして欲しい。
妻は鮭茶漬けを注文したのですが、鮭のボリューム感が半端なく、鮭弁を3D化したような迫力がありました。
初めてフライングホヌのファーストクラスに乗った感想は「何だか忙しかったなあ」ですね。そりゃあ僅か7-8時間の航路でフルコースの食事を楽しみ、睡眠を取った上で朝食まで食べるのだから、当たり前と言えば当たり前です。
こういった中距離のレッドアイフライトにファーストクラスの設備やサービスは過剰であり、LCCのフルフラットシートでひたすら寝続けるのが一番賢いような気がしました。やはりファーストクラスは
十数時間にも及ぶ超ロングフライトでこそ、その真価を発揮できるように思います。いずれにせよ時差の前には無力ではあるのですが。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。