タイ東北モーラム酒店/神泉

私は2017年にバンコクに延べ1ヵ月滞在食中毒で入院までしたレベルなので、タイ料理についてはちょっとうるさいつもりです。渋谷近辺のタイ料理と言えば「パッポンキッチン」一択だったのですが、惜しまれつつも閉店。その頃、神泉駅徒歩30秒の地(写真正面のビル1F)に「タイ東北部イサーン料理を限界までリーズナブルにご提供」と威勢の良いお店がオープンしました。
店内はまさにタイの食堂といった雰囲気。蛍光灯がキンキラキンに輝き、安っぽい鉄製の椅子やガタついたテーブルなどが、今からタイ料理を食べるぞという気持ちを盛り上げてくれます。料理人はタイから来日した好青年2名のコンビ。
生ビールが550円とこの辺りでは控えめな価格設定。加えてビールサーバーのメンテナンスに命を懸けているのか、非常に美味しく感じました。こんなに美味しい香るエールはなかなかないぞ。
「ピータンガパオ」。いわゆるピータンにガバオごはんのお肉部分をトッピング。唐辛子主体の刺激的な味わいであり瞬で発汗。ピータンのクセはどこにもなく、苦手な方もゆで卵的にプレーンに取り組むことができるでしょう。
「モツの透明なトムヤム(トムセープ)」。酸っぱ辛いモツ煮込みらしいのですが、その辛さが常軌を逸しており、辛い料理が得意ではない私は意識を失いそうになりました。耳鳴りがする。「ねえ、ちょっとあんた、人の話きいてるの?」と連れに怒られるほどの辛さです。
タイとは何の関係もありませんが白ホッピー。その氷を舌でナメナメしながらトムセープの辛さを和らげます。
「鶏パッポンカリー皿」はプー・パッ・ポン・カリーの鶏肉版といったところ。見た目通りの味わいであり、日本人であれば誰でも好きな味覚でしょう。
イサーン料理の代表格、「ガイヤーン」。様々なハーブに醤油風味のタレを漬け込みこんがりと焼き上げた逸品。ケンタッキー2ピースほどの食べ応えがあり、決して辛くなく、こちらも万人受けする味わいえす。
以上を食べ、連れと3杯づつ飲んで6,700円。中々の費用対効果です。が、イサーン料理と名乗る割には入門編でベーシックな料理が名を連ね、「ナニコレ!?食べてみたい!」とゲストを釣ってくれるような魅力には乏しい。わざわざ電車を乗り継いで来るお店ではなく、あくまで近所の割安なタイ風居酒屋といったところでしょう。ご近所限定でオススメです。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

関連ランキング:タイ料理 | 神泉駅渋谷駅駒場東大前駅

玉鮨(たまずし)/麻布十番

十番の路地裏、「十番のおばちゃん」の斜向かいにあるレトロな鮨屋。ちょっと入店に躊躇うエクステリアです。
店の中に入ると更に躊躇う空気感。雑然としたインテリアに清潔とは言い難い変色した壁紙、昼から酒とタバコを飲む常連客。他方、店主は非常に低姿勢で物腰は柔らかい。キープされたボトル1本1本に「七」「戸」「じ」「ゅ」「ん」とあり、なるほど繋げて読めば政治家の人名となりました。この手があったか。
ランチは900円台~。十番の鮨屋としては破格の値付けです。私は1.5人前のにぎりを注文。1,250円です。
味噌汁は油揚げに豆腐・青菜とスタンダードナンバーが続くのですが、ドロっとした濃密な白味噌が迫力満点であり食べ応えあり。
期待以上に量が多い。照明が蛍光灯ということもあってタネの色はあまり良くないのですが、1,250円ということを考えればまあこんなもんでしょう。
シャリは赤く、手毬寿司のような変わった形状で小さめなのですが、酸味が非常に強く味も濃いので、ちょっと食べ疲れします。このあと喉が渇いて大変でした。
旨いと手放しで褒めることは難しい鮨なのですが、十番のランチで1,250円ということを考えると、そう悪くない選択肢です。ランチに手軽に安く鮨をつまみたい場合にどうぞ。


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麻布十番には日本料理店も結構多いのですが、割高であることが多いです。外すと懐が大ダメージを受けるので、信頼のおける口コミと、味覚が似た友人の感想に頼って訪れましょう。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

関連ランキング:寿司 | 麻布十番駅赤羽橋駅六本木駅

Le Cinq(ル・サンク)/パリ8区

パラス(最高級ホテルに与えられる称号)であるフォーシーズンズホテルのメインダイニング。「ホテルのレストランには3ツ星を与えない」というミシュランガイドの不文律を打ち破った店として名前を馳せました。
シェフはChristian Le Squer(クリスチャン・ル・スケール)。前職の「Le doyen(ルドワイアン)」においても3ツ星を受賞し、三顧の礼をもって迎えられた当館においても3ツ星を獲得。現代フランス料理界の頂点と評して良いシェフでしょう。
席数は50〜60ほど。我々を含めて殆どが外国人でありスタッフも巧みに英語を操ります。そこで私は唐突にカタコトのへっぽこフランス語を話すわけですが、これがもうウケることウケること。我々に接するサービス全員をポップな気分にさせました。
シャンパーニュのグラスは5〜6種の用意があり、見たことのないパイヤールのロゼを注文。サクランボのような香りに爽やかな口当たりが食前酒として最適。しかしながらお会計の明細で1杯39ユーロがついていたので軽く鼻血が出ました。
アミューズから美しいですね。人参風味の生地には爽快感あふれる酸味が詰まっています。塩系オカズ系のギモーブも試みとして面白く、奥のピッツァ的なポリポリも酒が進むスナック。ちなみに土台の派手な赤い部分とサツマイモっぽい箇所は飾りであり食べることができません。
塩系ケーキの上に乗ったキャビアにイクラ(?)。シャンパーニュで乾杯するに最適な味覚です。ちなみにコチラも土台の部分は食べることができませんのでご注意を。
アミューズ、続く。グレープフルーツのソースにグリーンピース。なんてことでしょう、茹でただけのグリーンピースが信じられないぐらい美味しいのです。給食の嫌われ者であるそれとはまるで別物。こんなフレッシュなグリーンピースには出会ったことがありません。
泡が覆いかぶさっていますが、中にはカニやロブスターなどの甲殻類のほぐし身と味噌などが詰まっています。これらの旨味には神秘的な深みがありますね。一本取られたと、思わず唸ってしまう美味しさでした。
パンは3種。さすがはフランスの3ツ星、どのパンにも外さない旨さがあります。個人的にはプレーンなバゲットがお気に入り。写真奥の有塩バターをたっぷり塗って食べれば、それだけで立派な食事となり得るクオリティの高さでした。
今が旬のホワイト・アスパラガス。謎に火入れが均一であり、どこから食べても絶妙に繊維と甘味を感じる仕様でした。タイムやレモンの風味も実に爽やか。それほど高級とは言えない素材でここまでの味覚を完成させるとは、やはり料理とは値段ではないのだ。
メインは鳩を選択。シンプルにグリルしただけの料理ですが、これがもうべらぼうに美味しかったです。酸味を感じるオリーブなどの付け合せも見事なのですが、何よりもまず、鳩が旨い。コンテンポラリーで絵のような盛り付けの料理ながら、ここまで直線的にマッチョな味わいは珍しい。
ワインリストは百科事典のようであり(ワインセラーには5万本以上のボトル!)、客の財布を萎縮させるに充分な厚さなのですが、覚悟していたよりも値付けは悪くありません。絶対額も50ユーロ〜とこの手のレストランとしては破格であり、ホテルの懐の深さを垣間見た瞬間でした。
口直しは何だっけ?酸味のきいた滑らかな味わいだったとは記憶していますが、特殊な味覚ではありませんでした。まあ、口直しとはそういうものであり、それにこれだけの意匠を施すことに矜持を感じます。
メインのデザートの前に小菓子たち。外観からして実に細かい仕事ぶりであり、ひとつひとつの味覚もしっかりしており、一体このレストランには何人のパティシエがいるのでしょうか。個人的にはキャラメルのきいたナッツな一口がお気に入り。
私が選んだデザートはチーズケーキ。銀箔が乗ってるよ。こんなハイカラなチーズケーキは初めてです。チーズケーキとしての味はさておき、中と脇に置かれたバジル風味のソースが秀逸。れっきとしたスイーツであるはずなのに、どことなくオカズ的なニュアンスを含む興味深い一皿でした。
連れのデザートはイチゴ。ホワイトチョコレートで味を整えアクセントにリコリスを用いているとのこと。
メインのデザートの後にはシェフの故郷ブルターニュ地方の名産品、クイニーアマンが供されます。これが静かなるドンというか何というか、ジワジワと心に響く朴訥な味わいでした。
〆にコンフィズリー(砂糖菓子の総称)のカートがやってきます。お好きなものをお好きなだけ。
チョコ好きの私は狙ってチョコばかりをチョイス。いずれもショコラトリーで1粒400円で売り出しても問題のないレベルです。写真左上の箱はお土産用。チョコばっかりを食べている私を見かねてか、塩キャラメル(ブルターニュの名物)を箱に詰めて持たせてくれました。
これが3ツ星だと言わんばかりの完璧なレストランでした。店の風格良し、スタッフの対応良し、料理良し。文句の付け所がどこにもありません。加えて値段が結構安い。これだけ食べて、泡を1杯赤を2人で1本飲んで、ひとりあたりの支払金額は2.5万円ほどです。これを有意義と言わずに何というのでしょう。きちんと前もって連絡すれば予約が取りづらいわけでもないので、パリへの旅行を決めた際には是非どうぞ。


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グランコントワー(grand comptoir)/大手町

大阪を中心に雰囲気の良いレストランを展開する「The DINING(ザ ダイニング)」グループ。表参道で成功を収めた後、2018年秋、大手町に進出。大手町プレイスの果てしなく広いテラススペースを陣取っており、今の季節は最THE高です。
店内はまさにビストロといった雰囲気。席の間隔が狭くBGMも大きいので、ゆったり過ごすという雰囲気ではありません。ちなみに店名は「大きなカウンター」という意味のはずですが、それほどカウンターは大きくなかった。

「おひさしぶりです」なんだかんだで半年近くぶりに会う美人女医(私の周りには美人女医が10人ぐらいいる)。しばらくの間に少し痩せ、長い手足はより長く伸び、少女から女性へと脱皮したような印象を受けました。
グラスのスパークリングワインで乾杯。値段や味は中くらいですが、量をたっぷり注いでくれるのは嬉しい。

「うーん、そう、ですかぁ?確かに前みたいにムチムチはしてないかも。でも、そういうふうに直接的に言われることは少なくて、間接的に、それとなくそういう対応をされることが多いかな?」
サラダは山盛りで満足感が大きい。キャロット・ラペと、もうひとつは何だろう。店員の説明が雑なのが難点ですね。これじゃあ料理人が可哀想だ。ピークタイムで忙しいのはわかりますが、もう少し愛情をもって料理に接して欲しいです。

ムチムチしないのかあ。夏場のキミのホットパンツ姿、すごく好きだったんだけど。「大丈夫、ホットパンツはまだまだ履くから、夏を楽しみにしててね」元気いっぱいに片目をつぶる彼女は運命的に可愛い。
スープはおそらく(店員からの説明はナシ)カボチャのポタージュ。悪くないのですがカボチャの甘味が峻烈であり、まるでお汁粉のようです。2,500円というそれなりの値段を取るコースの割にストーリーが無く、箱根の学連選抜のようなまとまりのなさを感じました。

そういや転職したんだっけ?と水を向けると「転職はしてませんよ(笑)。病院を変えただけです」なるほどこれはとても含蓄のある発言。一般的な日本人だと「所属組織を変える=転職」ですが、実際のところ職業は変わっていない場合がほとんど。彼女は医者としての職業意識が高いために先の発言が自然と出て来るのでしょう。転職とはダーマ神殿でするものでありゼロからの再出発。しかし賢者には転職しないとなれないのが人生の面白いところ。賢明に、そしてゆっくりと。速く走るやつは転ぶ。
メインの和牛ステーキプレート。お肉は希少部位である「カイノミ」です。今回お邪魔した中で唯一具体的な食材名を店員が述べたのは当カイノミなのですが、果たしてこの調理で食べるべきかは疑問。肉もソースも悪くないのですが、どちらも脂っこくて喧嘩両成敗な印象です。ハラミのほうが王道っぽくて良いと思うんだけどなあ。付け合わせの野菜はお見事。特にシイタケが良いですね。本日一番の一口でした。
デザートがあると伺っていたので期待していたのですが、ごくごく小さいパンナコッタ(?)が出されただけでした。これはまともなフランス料理店のミニャルディーズの規模である。味はまあまあですが、いかんせん迫力に欠ける皿でした。

「そう、慌てていいことなんて何ひとつ無いですよ」彼女は私に同意した。「仕事はもちろんそうだし、人間関係もそう。『○○ちゃん○○ちゃん!』ってグァって来られると、やっぱり一歩引いちゃいますもん」それはあたしを口説く場合もそう、と彼女は小さく付け加える。心を食い荒らす緊張感。その後われわれはたっぷり数秒間見つめ合った。
コーヒーや紅茶は淹れ置きを紙コップで飲み放題というシステム。なんとも風情に乏しいスタイルです。

ランチに2,500円のコース料理を食べるという意味では全然ダメなお店でした。一方で、調理や調味についてはセンスを感じたので、夜にアラカルトで居酒屋のように注文すると良さそうです。また普通のランチは1,000円を切って上記のコーヒーもつくので、それはそれでお買い得。注文戦略が論点となるお店でした。


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L'As du Fallafel(ラス・ドュ・ファラフェル)/パリ4区

ユダヤ人街と知られるマレ地区の名物料理と言えばファラフェル。この地域だけでも数年のファラフェル屋がひしめき合っていますが、とりわけ人気で行列も長いのが「L'As du Fallafel(ラス・ドュ・ファラフェル)」。
お店の正面に向かって左手がテイクアウトの行列、右手がイートインの行列です。テイクアウトだと全てのメニューから2〜3ユーロ安い印象です。回転が早く、テイクアウトでも
イートインでもそれほど待つことはないでしょう。
店内はファーストフードよりも雑然とした雰囲気。机や椅子は安普請であり席の間隔も狭いため落ち着いて食事することができません。スタッフもとにかく忙しそうであるため、どことなくやっつけ仕事な印象が拭えませんでした。
フランスを代表するカクテル「Panaché(パナシェ)」で乾杯。「混ぜ合わせた」の意味であり、 ビールとレモネードを同量で割った軽い飲み物です。シャンディガフのレモン味といったところ。なのですが、当店のそれは缶を自分で開けて注ぐだけであり、これで5.5ユーロというのは高杉晋助です。
スペシャリテの「Falafel Special(ファラフェルスペシャル)」。ヒヨコマメやソラマメから作ったコロッケのような中東の食べ物であり、それを紫キャベツやトマトと共にピタパンに挟み込みます。
ファラフェルそのものの味は悪くないのですが、ソースが雑で投げやりな味わいであり、パンも哲学を感じさせない味わいです。まあ、ファストフードなんてこんなもんか。六本木のファラフェルブラザーズのほうが余程こだわり抜いて作っているように思えました。
2推しの「Shawarma(シャワルマ)」。「回転」を意味する料理名であり、塊肉を回転させながら炙り削ぎ落とすもの。いわゆるドネル・ケバブ的な食べ物です。当店の肉はラム。試みとしては悪くないのですが、それほど質の良いラムではなく食後感はイマイチでした。
1杯と1つを食べて15ユーロほど。うーん、ちょっと割高だなあ。これならパリのそのへんのパン屋で普通のサンドイッチを食べたほうが余程満足度が高いです。もちろんこれはイートインだから割高に感じるだけで、テイクアウトで「Falafel Special(ファラフェルスペシャル)」だけを食べれば6ユーロで済みます。それならお得。すなわち当店を試したい方は、必ずテイクアウトにしましょう。


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