中華そば 和渦 TOKYO(わか)/北品川

この日はケータイもカメラも何もない無装備で外に出てしまったので、絵として記録に残すことはできません。ただ、文章だけでアレコレ記すのもアレなので、世のインスタグラマーたちの画像を引用しながらお店を紹介しようという新しい試みです。

北品川駅というマニアックな駅から徒歩数分。住宅街の路地のどん詰まりにある、変すぎる立地です。ちなみに元々は大井町で同名のラーメン店を営業していたのですが、2019年4月に移転して来ました。

メニューは「醤油そば」「塩そば」「昆布水つけ麺」などがあるのですが、一番人気は「三位一体」。3つの味覚は日替わりであり、この日は「鯵煮干し×真鯛×牡蠣」でした。

入店時の香りから薄々は感じていましたが、スープが抜群に旨いですねえ。外観通りの透き通った味覚でありピュアッピュア。罪悪感の無いキレイなスープ。それぞれの素材の何かが尖っているということはなく、まさに三位一体というべき統合された味覚です。

「特製」にしたので、肉やら味玉やらが増えていくのですが、豚特有の臭みなどがなく、それぞれがきちんと料理として成立しており、愛情を込めて作られたことが手に取るようにわかります。豚ワンタンと鶏ワンタンも、専門店で食べる味覚と同等かそれ以上。
必食はゴハンもの。なんと50円で小ぶりな丼を食べることができ、それが滅法旨い。種類はいくつかあるのですが、私は真っ赤っかで手で摘まめそうなほどタフな卵を贅沢に使った卵かけご飯をチョイス。十番右京であれば1,000円を突破しそうなほど上質な味わいでした。

私はそれほどラーメンに詳しくないですが、銀座「むぎとオリーブ」大森「Homemade Ramen 麦苗(むぎなえ)」に近い食後感であり、安心で安全な味覚。かなり辺鄙な場所にありますが、これのみを目的にしてでも訪れる価値のあるラーメン屋です。オススメ!


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品川は心からグルメ不毛の地ですね。気取った店はことごとく割高です。エスニック料理屋は割に納得感がある。

「ハイパーローカルなシティカルチャーガイド」を標榜するオシャレな本。今号のターゲットは品川です。とにかく地元に密着した情報が満載で、グルメコーナーは一見の価値あり。別冊の天王洲アイル特集など、色々と目のつけどころが面白い本です。

関連ランキング:ラーメン | 北品川駅新馬場駅品川駅

Naporizza(ナポリッツァ)/麻布十番

麻布十番駅6番出口すぐに突如現れたピザ専門店。 「居酒屋あじと」の1階というか、「居酒屋あじと」に間借りしているかのような出で立ちです。
テイクアウト専門店と書かれており、デリバリは実施していないのですが、カンタンなイートインスペースはあります。広い歩道に面したテラス席であり、地味に居心地が良い。お水やお手拭きなども出してもらえます。
メニューは本当にピッツァしかありません。最も安い「マリナーラ」は800円と、十番最安値級。
セットとしてコールスローがついてきました。ケンタッキー的な細切りではなくザクザクとした食感であり、ハムやコーンも加わって食べごたえ充分です。
主題の「マルゲリータ」は1,000円。生地の加水量は低くモチモチとした食感というよりもサクサク気味ではありますが、チーズとソースの量が余りあるほどたっぷりであり、見た目以上に腹に溜まります。近所の「サヴォイ」や「ジャンカルロ」と比べるとやや見劣りはしますが、並ばずにすぐに食べることができることを考えると、利用価値は十二分にあります。
それにしても、すぐ隣にドミノ・ピザがあるのがシュール。アチラはアメリカンな雑なピザでデリバリがメインであり芸風が異なると頭ではわかっていても、ついつい色々と考えてしまいました。


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麻布十番はイタリア料理屋も多い。ただし、おっ、と思えるお店は少数です。個人のお店のランチが狙い目ですね。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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食べることばかりが目的の和歌山


1.5年ぶりの和歌山。2018年のお正月に「にっぽん丸」の新春クルーズとして新宮に立ち寄った際は7時間しか滞在することができず、ご当地グルメを1ミリも堪能できなかったので、今回の和歌山旅行は食べることばかりが目的です。
奇しくもG20開催期間と重複し、警備の関係上、関空で車を借りることができないなどの手間はありましたが、全体としては良いレストランに巡り合えた旅でした。


■和歌山城/和歌山市
まずは和歌山市のランドマーク、和歌山城へ。徳川御三家の一つ紀州藩紀州徳川家の居城です。
歴史的意義などについては詳しく知らないのですが、観光地としては空いていて、無料で、和風の庭園も広がるなど、大変居心地の良い空間でした。大阪城とか姫路城は人が多すぎて無理。


■オテル・ド・ヨシノ/和歌山市
https://www.takemachelin.com/2019/07/hotel-de-yoshino.html
何かの雑誌でタテル・ヨシノが和歌山に出店したという記事を読み、加えて和歌山の食材を用いたフレンチと知り、何としてでもお邪魔したいと考えていました。しかしながら、これはガチヤバいクオリティの低さですね。家賃の安い和歌山で、食材が豊富で安価と言われている和歌山で、8千円というランチにしてはガチヤバい金額を払ってこの満足感はガチヤバイです。詳細は別記事にて


■高野山
https://www.takemachelin.com/2019/07/koyasan.html
讃岐生まれの弘法大師空海。本当は二十数年滞在しなけりゃいけない遣唐使を2~3年でさっさと切り上げ、日本に戻って密教をブレイクさせ真言宗の開祖となった宗教家。その彼がメッカとして指定した聖地がココ、高野山です。
この手の話には疎い私ですが、この地に戦国武将など歴代のスーパースターが数多く眠るのは興味深く、また、バブル期にステータスのひとつとして建てられまくった企業墓などを眺め歩くのも面白い。締めくくりには寺院に泊まって精進料理という珍しい体験もして参りました。詳細は別記事にて



■JA紀の里ファーマーズマーケット OINACITY/岩出
後述のイタリアンレストランの予約時間までの時間つぶしで訪れたJA関連のスーパー。これが大当たり。どの素材も実に旨そうで、安い。しこたま買い込んで宅急便で送ろうかとすら考えましたが、直近は外食が詰まっており消費できないだろうと残念。
その場で作るお惣菜も美味しそう。オバチャンたちが和気あいあいと楽しそうに働いており、こういう職場から創られるモノには間違いがありません。ちなみに近くに「JA紀の里 ファーマーズマーケット めっけもん広場」という、これまた良さそうな市場もあり、JAの底力を感じた瞬間でした。


ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出
和歌山の僻地にある一軒家イタリアン。1日1組の客しか受け付けず、ゲストの到着にあわせて自家菜園から収穫するという徹底ぶり。雰囲気も、味覚も、センスも、費用対効果も、何もかもが抜群。我が心のイタリアン第1位に出会えました。詳細は別記事にて


■白浜
関西有数の温泉リゾート、日本のワイキキ、白浜。パンダが山ほどいるアドベンチャーワールドやマリンアクティビティなど楽しいことが盛りだくさんの地域なのですが、残念ながら天気は最悪。白浜らしいことは何もできませんでした。また来よう。


南紀白浜マリオットホテル
https://www.takemachelin.com/2019/07/marriott21.html
高野山の宿坊とは対照的に、リゾート地白浜においては街いちばんの外資系ホテルに泊まります。もともとはラフォーレ系の宿泊施設だったのですが、最近マリオットに運営が変わった模様。スタッフの皆さんは方言は強いもののニコニコと親切であり、やはりきちんとしたホテルのオペレーションには見習うべきものがあります。詳細は別記事にて


長久酒場(ちょうきゅうさかば)/白浜
https://www.takemachelin.com/2019/07/tyokyu.html
白浜で最も有名な飲食店。観光客はもちろんのこと、地元の客もひっきりなしに訪れる人気店。お会計はひとりあたり4,500円と、東京の居酒屋に比べると非常に安く感じます。詳細は別記事にて


召膳 無苦庵(しぜん むくあん)/紀伊田辺
https://www.takemachelin.com/2019/07/mukuan.html
和歌山県下食べログ最高得点の当店。紀南の珍しい食材に徹底的に拘るその姿勢は職人を通り越してハンターです。この日はスッポンとウツボ。いずれも外観はグロいですが味は絶品。詳細は別記事にて


井出商店(いでしょうてん)/和歌山駅
https://www.takemachelin.com/2019/07/ide.html
この辺りのご当地ラーメン「和歌山ラーメン」の火付け役となった井出商店。1953年創業と半世紀以上、和歌山の胃袋を満たし続ける有名店。TVチャンピオン「日本一うまいラーメン決定戦」で無名ながらも全国の並み居る強豪店を押さえて優勝し、続いて新横浜ラーメン博物館に出店するなどで一気にスターダムにのしあがりました。詳細は別記事にて



りんくうプレミアム・アウトレット/泉佐野
フライトまでの時間調整に利用しました。腕まくりをしてショッピングに勤しむことはなく、海用のクロックスと雨の日用のビジネスシューズ、靴屋が作った名刺入れのみを購入。洋服はダメですね。バーゲンやアウトレットのディスプレイはどうしてこんなにも購買意欲を削ぐのでしょうか。


■ぼてぢゅう/関空
https://www.takemachelin.com/2019/07/marriott.html
久しぶりの関空、かつ、夕食時だったので、大阪らしい食べ物を食べようと1タミ3階「ぼてぢゅう」へ。入店して驚き、客も従業員も半分が外国人です。目に見える範囲の料理人は全て外国人であり、明らかに日本人離れした顔立ちのメンズが器用にお好み焼きを裏返す様はカルチャーショック。忙しいのかホールスタッフはてんてこまいであり、およそ客として歓迎されている空気は一切感じられませんでした。詳細は別記事にて


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

水炊き鼓次郎(コジロウ)/田町

久我山の超絶人気居酒屋「器楽亭」の姉妹店。水炊きが自慢のお店であり、1年ほど前にお邪魔して大変満足した記憶があるのですが、期間限定でランチ営業を始めたとの噂を聞きつけてお邪魔しました。
ランチは「唐揚げ定食」のみ1,000円1本勝負と大変潔い。注文してから揚げに入り、数分後着丼すると、あり?唐揚げが無い。。。
じゃーん、なんと別皿での用意でした。夜メニューとほぼ同じ仕様であり、スカッシュボール大の唐揚げがドンドンドンドンと4つ並びます。瑞々しさを湛えたジューシーな肉質であり、肉そのものの旨味と脂もたっぷり。調味は至ってシンプルで、鶏肉の味で勝負する大変優れた唐揚げです。
お椀が嬉しい。味噌汁ではなく、なんと当店自慢の鶏スープです。雑味は一切なく鶏の味覚のみで勝負する潔さ。口の中でひっかかりすら感じるコラーゲンの豊かさ。ランチでここまで上質なスープを提供するお店は珍しい。
ライスは標準的な定食屋のそれと同等。お漬物は自家製なのかなあ、あまり一般的なものではなく不思議な味がしました。
小鉢はピーマンの煮浸しでしょうか。味の濃いピーマンが丸のまま調理され、品の良い出汁と共に出色の味わい。唐揚げの美味しさは想定の範囲内ですが、この小鉢のクオリティは嬉しい誤算でした。
冷奴はパックから出しただけ感はありますが、それでも豆の味が濃い中々の味わいであり、第二の小鉢として居てくれる分にはありがたい存在です。

大満足のランチでした。唐揚げ定食の世界大会があれば入賞間違いなしのクオリティです。ちょっと不便な場所であり、平日ランチで訪れるには難度が高いですが、お値段以上の価値は確実にあるお店です。オススメ!


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七輪や(しちりんや)/麻布十番

ジムの帰り、突発的に肉を摂取したい気持ちになり、ノリでご近所さんを誘って予約ナシで突入。
テーブル席は5~6卓しかなく、焼肉店としてはかなりのミニサイズです。たまたま1卓だけ空いており運よく滑り込むことができました。後から来たグループは入ることができず肩を落として帰っていくなど、意外に(失礼)人気のお店のようです。
私は生ビール、e-girlsに憧れる彼女はレモンサワーを注文。この生ビールが結構美味しくって、焼肉屋にありがちな雑なビールとは一線を画す繊細な味覚でした。
イチオシのタン。確か2,000円近くする高級品ではあるものの、カチカチに凍っており質もそれなり。まあ、街の焼肉屋とはそういうものである。
スペシャリテの塩カルビ。こちらもパリパリに固まっており風情がない。七輪で軽く炙りワサビ醤油で楽しむのですが、先のタンと同様の感想でした。
並ハラミは相当に旨い。これはがハラミかと振り返ってしまうほど柔らかい食感に、猛々しい肉の風味。フランス料理においてバベットステーキとして接する機会の多い私ですが、これはこれでありよりのありな味わいでした。
地鶏には柚子胡椒がたっぷりと塗られており、基本に忠実に美味しい。
ミノもサクサクとした食感を湛えるほど分厚い仕様であり、ハラミに次いで心に残った肉でした。
〆にはビビン麺。モチモチと独特の食感を放つコシの強い麺に、酸味を主体としたピリ辛のタレがしみじみ旨い。スープの無い冷たい和え麺であるため、ツルツルとあっという間に完食。
ガムは焼肉屋にありがちな瞬で味の無くなるフニャフニャタイプではなく、きちんとしたロッテのものでした。

2杯飲んでそれなりに食べてお会計はひとりあたり5,000円チョイ。まあ、こんなものでしょう。地代の高い十番の中では控えめな価格設定かもしれません。飲み放題プランなどもあるそうなので、思い切って貸し切りで臨むのも楽しそう。


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麻布十番は隠れた焼肉激戦区。突出したお店は無い一方で、優等生が多い印象です。
  • 焼肉 おくむら ←ランチでは都内トップクラスの費用対効果。ハラミが旨いんだ。
  • 焼肉苑 ←十番いや日本全体で見たとしてもお得なランチ。
  • みやび ←ランチがお得。スープのおかわり無料がバッチグー。
  • 叙々苑 ←欠点が何一つ見当たらない。
  • 新興苑 ←韓国大使館向かい。日本語が通じず異国情緒満点。
  • 大昌園 ←川崎の有名店が都内に初進出。
  • コソットエスピー ←お洒落だが割高。
  • 韓日館 ←文字通り震え上がるチーズダッカルビランチ
  • ブルズ ←半個室なのでのんびりできる。
  • 山本牛臓 ←サムギョプサルが良い。レタスとエゴマはお代わり無料♪
  • おんがね十番 ←ランチだとオイキムチとカクテキが食べ放題♪
  • 鳳仙花 ←老舗の超有名店。
  • 焼肉トラジ ←お友達家族とのランチなどで真価を発揮。
  • 大邱家(タイキュウヤ) ←常に空いている理由。
  • 純豆腐 田舎家 ←店員含め本格派。
  • 三幸園 ←ランチの焼肉丼が特徴的。
  • 栄来亭 ←創業は1965年、麻布十番で初めてできた焼肉屋。
  • 花十番 ←+220円でユッケジャンスープがお買い得。
  • Kintan ←雑穀米が美味しい。
  • 一番館 ←何この量!?カンナムスタイルかよ。
  • 新鮮ホルモン ランボー ←味と量と価格のバランスは十番焼肉業界でトップ
  • 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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召膳 無苦庵(しぜん むくあん)/紀伊田辺(和歌山)

和歌山県下で食べログ1位の「召膳 無苦庵(しぜん むくあん)」。観光資源に乏しいこの地域(普通の観光客はお隣の白浜まで行ってしまう)でこの記録は只者ではありません。
紀伊田辺駅から徒歩10分ほどの立地。我々は車で向かい、店先の駐車スペースに泊めます。ココがいっぱいになっても提携のかなり広い駐車場があるので、満車でムリということはまずないでしょう。
雲井利益シェフは四万十の地にて鰻使いの名人として名を馳せ、2016年に新たな食材を求めて紀南の地に移転。独自の仕入れルートを開拓し、今では紀南の僻地、古座川の天然鰻やスッポンまでをも入手するようになりました。
八寸は青梅にマグロの手毬寿司、カメノテ、シャドークイーン(紫ジャガイモ)のきんぴら、田辺産のアーモンド、南高梅を用いた「封じ梅」。マグロの手毬寿司が印象的。表面はごくごく味の薄いマグロなのですが、中には酒盗(内臓を用いた塩辛)が詰め込まれており、ついついお酒を飲みたくなります。「封じ梅」は、むかしむかしの紀州のお殿様のオキニだったようで、この辺りの独占品として指定した、大変手間のかかる加工品とのこと。
田辺産のアーモンドはハンドサイズの万力を用いてセルフで割ります。これが結構難しくって「関西人はすぐに諦めるが、関東の人間は最後までやり抜くことが多い」とのこと。私は最後までやり抜きました。
イサキをお刺身で。弾力と凝縮感が感じられ、白身魚としては相当に味が強い。「今日は珍しい魚が手に入らず、一般的なもので申し訳ありません」と頭を下げる店主。そう、当店は決まりきったコースというものはなく、予約時に予算を伝えるなり絶対に食べたい食材を伝えるなりして店主にアレンジしてもらうお店なのです。我々はひとりあたり1万円でお願いしました。
鮎の塩焼き。頭から丸っとかぶりつき、バリバリじゅわあと大人の味。葉の下には木炭が忍んでおり、水蒸気が常にモクモクと上がり古典的ですがありそうでない演出でした。
お椀にはアカハタ。共産党員というわけではなく、雌から雄に性転換する高級魚。先のイサキと同様に身が締まり食べ応えが強く、白身としての旨味も強い。葛で固められたトウモロコシは一粒一粒が非常に存在感のある逸品であり、主役を食う美味しさでした。
「悪天候に備えて保険をかけておいた」ということで、超高級食材のスッポンが出てきました。しかも鶏のから揚げ4つ分ほどの特大ポーションであり、本当に1万円のコースなのかと不安になる。当然に美味。和のジビエとも言うべき猛々しい味わいに、地鶏のような筋肉質な食感。エール系のクラフトビールなんかが合いそうな気がします(田辺産のクラフトビールも置いてある)。京都の「本家たん熊」で食べた記憶は「高い」しかなかったので、純粋に味覚を楽しむことができて嬉しかった。
メインはウツボ。新鮮なキクラゲやナス、タマネギなどと共にすき焼き風に仕立てます。
これは滅法旨いですねえ。海の嫌われ者であるはずのウツボも接し方を変えればこんなにも素晴らしい食材に昇華するのか。フカフカと柔らかい歯ざわりに上品でクリアな味覚。ひょっとするとフグなんかよりも平均点の高い食材かもしれませんよウツボは。
ごはんは私の好きな硬めの炊きあがりであり、汁気の多いメインに合わせて食べるに最高の友人でした。
デザートはこれまた希少価値の高いスモモであり、酸味は一切なく完熟した桃のような甘さに度肝を抜かれました。

紀南の食材に徹底的にこだわり、客の要望に100%応じようとするシェフの姿勢は商売人というよりも職人のそれです。食材が豊かとされている四万十から更なる高みを目指してこの地に移住してくるハンター的な側面もあり、東京の「全世界から食材を取り寄せる」スタイルとは一線を画す芸風。仕入れに大きく左右される面もあるためギャンブル的な要素も強いですが、和食に一家言ある方であれば、一度は訪れたいお店です。


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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。

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