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ハイアットハウス金沢(Hyatt House)

2年ぶりの「ハイアットハウス金沢(Hyatt House)」。むかしむかし1か月単位でお部屋を借りていた時期があり、久しぶりに帰ってきたなあというお気持ちです。今回はここ2年の間での変化点について記していきます。
今回は「キッチン コーナー スイート ツイン」にご案内頂けました。日本風に言うと1LDKの53平米であり、まさに「ハウス」な住み心地の良さです。細かな仕様については以前滞在した際に丁寧に記しておきましたので別途ご確認ください。
最も大きな違いはロビーラウンジの運用でしょう。宿泊者はビールや日本酒、各種ソフトドリンクが11-20時の間いつでも自由に利用できるのですが、120分1,000円(アルコールを含む場合は2,500円)でビジターにも開放しており、宿泊者としては複雑なお気持ちです。
また、朝食はハイアットハウス側のレストランでの提供を取りやめ、ハイアットセントリック側のレストランでの提供に統合されています。
肝腎の朝食ですが、相変わらず簡素化が進んでおり、デビュー当時のオーダー制料理+ビュッフェの時代を知る身としては寂しい限り。というかこのラインナップで4,807円って高くないか?「パークハイアット東京」の7千円の朝食が安く感じてしまうほどです。
また、スタッフもゲストも殆どが外国人であり、純ジャパの私がアウェイまであります。西成の「ちとせ」とまでは言いませんが、完全にインバウンド需要へ振り切った光景にはどこか切なさが漂います。快適さは相変わらずでしたが、快適さの中身が「日本のホテル」から「日本にあるホテル」へと静かに置き換わっていく過程を、2年ごとに定点観測しているような気分。相変わらず快適な滞在ではありましたが、やはりコロナの時代は楽しかったな、尊王攘夷運動の気持ちもわからんでもないな、と感じた滞在でした。

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北陸新幹線開通前は秘境的な小京都として魅力があった金沢。開通後は客層が荒れだし、土日連休は東京のガチャガチャした人ばかりです。それは飲食店においても同様で、金曜日の夜から日曜日にかけての鮨屋など港区のちょづいた店と雰囲気は似てきています。きちんと食事を楽しみたい方は、連休を外して訪れましょう。
「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。

野趣先(Yashusen)/十三間町(金沢市)

2026年春に開業した「野趣先(やしゅせん、Yashusen)」。金沢有数の繁華街・片町エリアの喧騒から一歩離れた十三間町に位置し、古民家をリノベーションした風情ある佇まいが目を引きます。店名は素朴な自然の恵みを表す「野趣」と、研ぎ澄まされた「先(洗練・先鋭)」を組み合わせた造語だそうです。
店内はカウンター5席と個室2部屋という贅沢な空間。風情ある格子や重厚な梁といった建物の歴史を感じさせる意匠を残しつつ、静けさと気品が漂う現代的な和のデザインが融合しています(写真は食べログ公式ページより)。小倉久昭シェフは白山市出身で実家はお米農家。京都の日本料理店で長く腕を磨き、大店の厨房も統べた経験もあるそうです。
飲み物につき、ビールは千円前後に日本酒は1合千円強~といったラインナップ。目玉は日本酒のペアリングであり、5千円ポッキリでお料理ひとつひとつに合わせた日本酒をお出し頂けます。酒飲みであればペアリング一択でしょう。
先附は太刀魚。煎り酒のジュレを添え、濃厚でクリーミーな雲丹を合わせることで初手から重層的な味わいです。プチッとはじけるフィンガーライムの爽やかな酸味もいいですね。グジェール出してアミューズは終わりという雑なフランス料理店は見習ってほしいところです。
お椀は天然のスッポン。コラーゲン質のとろみと滋養豊かな旨味が特長的。焼茄子は皮に香ばしさをまとわせつつ、とろりとした果肉の甘みと出汁の吸い込みが良く、スッポンの重厚感に対して柔らかな受け皿の役割を果たします。
お造りは赤イカの素麺にハモと戻りガツオ。中でも赤イカが素晴らしいですね。素麺づくりのパロディな外観の面白さはもちろんのこと、色んな薬味(?)と共に愉しむスタイルが秀逸。淡麗・上品・濃厚という味わいのグラデーションを楽しむ逸品です。
蓮根まんじゅうを揚げたもの。加賀蓮根を用いており、もっちりとした独特の粘りと甘みが印象的。中には京鴨が組み込まれており旨味が強くジューシー。底に敷かれた金時草の独特のぬめりが食感にアクセントを加えています。
八寸は夏全開なプレゼンテーション。北陸の山と海のの恵みを一口サイズで彩り豊かに盛り付けており、冷やした日本酒と合わせて飲むにピッタリです。白山麓で仕留められた鹿と甘みのある無花果の組み合わせなども洒落てます。
焼物は琵琶湖の鮎。着席時には鉢の中で生きていたものを、串に刺してじっくりじっくりと熱を入れて行きます。頭に自らの脂が回ってカラっと仕上がり丸ごと堪能。身はふっくらと仕上がり、腹わたのほろ苦さが大人の味わいを演出します。みずみずしく弾ける甘みのトウモロコシとネットリとした舌触りの衣かつぎ(里芋)たちが、素朴ながら滋味深い副菜として全体の味わいを支えます。
こちらも白山で獲れた月の輪熊。赤身がしっかりとした濃厚な旨味を持ち、脂身にもコクがあり、力強い個性を放ちます。焼くことで香ばしさが加わり、野趣あふれる味わいが強調されます。伏見唐辛子や赤万願寺唐辛子、大徳寺納豆も取り入れ方にもセンスを感じ、フランス料理的な色気を感じました。
夏が旬の珠洲の岩牡蠣。大ぶりでミルキーな濃厚さとみずみずしい海の香りが最強で、そこに加賀太胡瓜の青っぽい風味を重ねるというアイデア賞。何とも贅沢なお口直しです。
お食事は鰻ごはん。鰻の美味しさは当然として、やはりシェフの実家の米が旨いですね。香ばしいタレの風味と脂の旨みが米に染み込み、あしらわれた木ノ芽の爽やかな風味と爽快な刺激が心地よいアクセントとなり、この時わたしは絶頂に達したのです。
さらに出汁をかけてお茶漬け仕立てにするという二段構え。出汁が鰻の脂をさっぱりと洗い流し、後半は軽やかな喉越しでフィニッシュです。
デザートは右上が巨峰・シャインマスカット・ブルーベリー、左が桃に梅干・赤紫蘇、右下がキウイを用いた水ようかん。やはり味の重ね方がフランス料理的であり、日本料理店でこんなややこしい甘味が出せるお店はそうそうないでしょう。
以上のコース料理が18,500円に、日本酒のペアリングが5,000円で、合計は23,500円。都心3区であれば4-5万円は請求されて当然の質および量であり、信じがたい費用対効果の良さです。

そして何よりシェフのバックグラウンドが魅力的。実家は農家で狩猟や山菜採りがご近所・親戚含めて当たり前という環境で育ち、その豊かな農的感性が京都で磨き抜かれた調理技術と合流。だからこそ石川のテロワールを深く掘り下げた、新しい日本料理のジャンルが鮮やかに切り拓かれているのだと感じます。

技術だけでも感性だけでも辿り着けない領域にこの店は確かに足を踏み入れています。費用対効果、料理の質、そしてシェフのストーリー性まで含めて、金沢旅行における目玉ディナーとして文句なしの一軒。次の金沢旅行の予定がある方は、真っ先に予約を入れておきましょう。

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廻る寿し ぽん太/金沢中央卸売市場

金沢中央卸売市場の目の前にある「廻る寿し ぽん太」。創業当初は市場で働く人々や近隣住民に向けた大衆食堂としての機能を担っていましたが、1999年に回転寿司へと業態転換したようです。私は週末の正午頃にお邪魔し、店内の待ち席を飛び出て店外にも行列が生じていましたが、回転は良く15分ほどの待ちで着席できました。
店内はカウンター席が10席ほどにボックス席が3つに小上がりが3卓。レーンは設置されていますが廻っているのは食器やお茶っ葉であり、注文を紙に書いてお願いするスタイルです。なのですが、客が書いた紙をそのまま手で受け取り、特に手を洗わないまま調理を続けるストロングスタイルなので、潔癖症の私は鳥肌が立ちました。
鮨の用意ができるまではアラ汁とガリで胃腸を整えます。寸胴から自分で注ぐセルフサービスなのですが、具沢山で大変美味しい。日々市場から入荷する数十種類の新鮮な魚のアラをグツグツに煮込んでおり、魚介の濃厚な旨味と出汁が汁全体に染み渡っています。もうこれとゴハンだけで立派な食事なんだけど。
私は最高値の「プレミアランチ」を注文。「すっしーくん(7貫)」は770円のところ、「プレミアランチ(15貫)」は3,410円と中々の価格設定です。
このあたりはマグロにイカに赤エビ、数の子、ノドグロ、アワビ、ウナギあたりでしょうか。アラ汁そのものは大変美味しかったのですが、寿司そのものは大して美味しくありません。
このあたりはブリに赤貝、ホタテに何だろう。そう、「プレでーす」といって皿をホイっと渡されるだけなので、内容物が何なのかわかんないんですよね。なんだかんだ言って情報を食べるのも食事を楽しむ上で重要な要素なのだ。
コチラは贅沢エリアで、スゴクスゴイエビにカニ、ウニ、イクラ。いずれも不味くはないのですが回転寿司レベルであり、というか「廻る寿し 」と店名に冠しているので妥当なクオリティかもしれません。
というわけで、セルフサービスの「あら汁」はバリ旨いですが寿司そのものは微妙なので、そのあたりは割り切って安いランチセットを楽しむと良いでしょう。個人的にはすぐ近くにある「魚がし食堂 中央市場店」のほうが断然推し。とは言え近江町市場(金沢駅東側)と比べるとかなり庶民的な値段設定で、観光客にはあまり知られていない穴場であり、使い方次第かもしれません。

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鱗町 白(うろこまち しろ)/金沢

2024年夏にオープンしたばかりの「鱗町 白(うろこまち しろ)」。金沢駅からは少し遠く、犀川大通り沿いにあり、以前は「小松」があった風水の良い立地です。
店内はスッキリとしたインテリアでカウンター8席のみ。シェフは「東山 和今(ひがしやま わこん)」などで経験を積み、「おすしと和食 はた中」で厨房を預かった後、当店を開業したそうです。
ビールは中瓶が千円を切り、ロココが1,600円というのは今や良心的に感じます。日本酒は1合千円強~といった値付けで、半合からご用意頂けます。
菊芋のすり流しではじまりはじまり。土の香りがほのかに感じられ、素朴ながらも滋味深い味わいを堪能できます。白子の表面はカリッと香ばしく、中はとろりとクリーミーな舌ざわり。
あん肝に辛子味噌、白ネギを添えて。濃厚なあん肝に、ピリッと辛い辛子味噌とシャキシャキの白ネギが加わることで、食感と味わいのコントラストが楽しむことができます。
七尾産イシダイの造りとセリ。新鮮なイシダイの造りは、身が引き締まって歯ごたえが抜群で、上品な甘みが口の中に広がります。透き通るような白身は、見た目も実に美しい。
迷いガツオの塩たたき、黄ニラを添えて。肉のような迫力のある個体であり、皮目は香ばしく、口に含むととろける食感。黄ニラのほのかな苦味と香りが加わることで、味わいに奥行きが生まれます。
お椀には香箱ガニのしんじょう。カニの身と内子、外子を混ぜて作られたしんじょうは、まさに海の宝石箱。カツオと昆布から丁寧に引かれたお出汁が、椀に深みを与えています。水が綺麗で風味はひとしお。
海老芋を揚げて、更に炭火で炙ったもの。海老芋はネットリとした舌ざわりが特長的ですが、揚げることで外はカリッと、さらに炙って香ばしく新食感。海老芋界隈のテラ・インコグニタを見ました。
4番サード香箱ガニ。カニの美味しさは当然として、カニの身から丁寧に取ったお出汁のジュレの繊細な味わいが泣かせます。食用の菊の花びらも仄かな苦味と香りを与え、全体の味を引き締めます。
聖護院かぶを使ったかぶらむし。すりおろした聖護院かぶの中に、上品な甘みを持つアマダイと、ホクホクとした食感の百合根が隠されています。お出汁にもカブを用いており、カブよりもカブの味がしました。
ヤナギサワラの炙り。上品な白身魚なので、ちょっとこのタイミングではパンチが弱く感じました。他方、添えられた加賀レンコンのコロッケ(?)は粘り気が強くモッチリとした食感がとても美味しい。
宮崎牛のサーロイン。こちらも美味しいのですが、香箱ガニという旬のスターが控えているため、無理に肉出さんでも良かったかなという気持ちもあります。個人的には下に敷かれた原木シイタケのほうに心を惹かれました。
〆のお食事は香箱ガニのお雑炊。やはりカニの赤い甲羅は映えますなあ。食事に彩りを添え、場が華やぐ。味覚も贅沢な冬の味わいであり、カニ味噌・内子・外子の濃厚な旨味が雑炊の出汁に溶け出しています。またそこに春菊のほろ苦さと香りが加わることで、味わいに奥行きが生まれ上品な仕上がりに。
香の物はキュウリのぬか漬けにサワラゴボウ。まさに和の味覚といったところであり、少し残しておいた日本酒と共にキュっとイキました。
デザートはシナモンのアイスにリンゴのコンポート、リンゴのゼリー。ありそうでないアイスであり、ひやひやのアップルパイを食べているかのようです。アイスクリーム専門店で商品化いけるかもしれない。

以上のコース料理が2万円に、酒を含めてお会計はひとりあたり2.5万円。香箱蟹を心ゆくまで堪能してこの支払金額は実にお値打ち。思いのほかお会計が伸びなかったのは酒量が控えめだったからかな。場面でテンポが悪くなり、酒だけで繋ぐには厳しい局面があったからかもしれません。

とは言え店主はまだまだ若く伸びしろは無限大。数年おきに定点観測したい気持ちにさせてくれる食後感でした。

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