麻布 チャーシュー軒/西麻布

西麻布交差点すぐ近くで午前11:00から翌朝7:00までという大手チェーン店ですら躊躇するような稼働体制を敷くことで耳目を集めた「麻布 チャーシュー軒」。無添加・無化調を徹底し、肉はホルモン剤不使用、米・野菜は遺伝子組み換え不使用・自然栽培中心で深夜メシに臨むという、健康なんだか不健康なんだかよく分からないコンセプトが面白い。
全面ガラス張りの外観は開放感を与える一方で、店内に足を踏み入れると鮮やかな赤いテーブルが目に飛び込んできます。いわゆる昭和レトロな内装ですが、段ボールが山積みとなり色々と散らかっているので清潔感がありません。テーブルもベタベタで、接客についても、少なくとも私が受けた印象ではホスピタリティという概念とはやや遠い世界線にありました。
赤星の大瓶が900円と、この界隈の飲食店としては悪くない価格設定です。一方でラーメン屋のビールの値付けとしては、まあ、こんなもんでしょうか。少なくとも私の目にはグラスが汚れており、取り皿には先客のものと思われるネギの切れ端がくっついているように見えました。衛生観念というのは人それぞれだと改めて思い知らされました。
ビールのお供に「つまみセット」。看板のチャーシューを軸に、メンマ、味玉と隙のない三種の神器が揃います。目玉のチャーシューは柔らかく脂も溶け出していますが香ばしさに欠け、正直なところチャーシューというより煮豚に近い仕上がりです。付け合わせのメンマや味玉に至っては特筆すべき点がなく、この店ならではのこだわりは感じられませんでした。
 チャーシューマイ。やはり店名に掲げる「チャーシュー」らしさは微塵も感じられませんでした。サイズも小ぶりで物足りない。薄い皮も肉の重みに負けてしまっており、単にまとまりのない脂っぽい肉団子を食べているような感覚でした。
トマトと卵の炒め物。家庭的な風貌の、標準的な中華の炒め物です。加熱されたトマトの酸味に基づき後味は比較的さっぱり。こってりした料理の合間に食べるサイドメニューとして機能しています。
青椒肉絲。ピーマンが嘘みたいに鮮やかな緑色で、シャキシャキとした食感が印象的。合わせる肉は、一般的な細切りよりも厚みがあり、しっとりとした柔らかさと確かな食べ応えを感じさせます。これはゴハンが欲しくなる。
チャーシューワンタンメン。第一印象では煮干しの香りがガツンと広がりますが、後味には動物系由来の甘みとコクが残り、無化調特有の物足りなさを一切感じさせない重層的な味わいを実現しています。麺は「三河屋製麺」謹製の中細ストレートでパツンとした歯応えでグッド。他方、ワンタンは具が入っておらずただの小麦粉の皮で全然美味しくない。チャーシューがチャーシューで無い点については既に述べた。
以上の注文の合計が6千円弱。総じて味そのものは決して悪くありません。しかし、西麻布という立地ゆえか、一般的な町中華と比較するとどうしても費用対効果の悪さが目についてしまいます。ラーメン屋としては割高であり、かといって町中華としての情緒や満足感を求めるにはどこか中途半端な立ち位置。少なくとも私は素面でリピートしようとは思いませんでした。深夜の西麻布という文脈がこの店の最大の調味料なのかもしれません。

健康志向の食材選びを謳いながらも店内の清掃状態や接客の質がそれに伴っていない点にも強い違和感を覚えました。清潔で美しく健やかな毎日を目指す私の価値観とは最後まで相容れない一軒でした。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。