Minet.(ミネ)/白金高輪

2019年12月、白金高輪は四の橋商店街にオープンしたフランス料理店。以前は「オルディヴェール(ordi-verre)」というフレンチレストランだったのですが、かのレストランのオーナーソムリエは六本木「Reglisse (レグリス)」へと移り、そちらもまた大変素晴らしいお店だということを申し添えておきましょう。
さて新装開店した「Minet.(ミネ)」。以前のお店からの居抜きであり、内装などは殆ど変わっていません。大きく掲げられた「峯」の字がカッコイイ。

峯岸昌昭シェフは「レストランFEU(フウ)」などで腕を磨いたのち渡仏。彼の地の名だたるレストランで経験を積み、帰国後は自然豊かな白馬村のホテルで料理長を務めました。
ワインリストは無く口頭での説明。シャンパーニュは1.1万円~で、後から頂いたグラスワインは1,600円と、都心のフランス料理店としては妥当な価格設定でしょう。
アミューズは仄かに温かく優しい味わい。ウニの濃密な旨味が気分を上げてくれます。
オマールは華やかな盛り付け。ほおずきを用いたサッパリとした味覚であり、シャンパーニュが捗ります。
パンは水分が飛んでいてあんまり好きなタイプじゃありません。なんかモソモソしてる。
サツマイモのスープ。濃密な秋の味覚にこれまた濃密なフォアグラの風味が良く合う。
お魚はカレイ。この料理は美味しいですねえ。カレイって私の中であまり存在感のある魚じゃなくて、飲み屋で煮付けとして出てきてフーンという位置づけなのですが、当店のそれは実に肉厚なカットであり、しっとりとした舌ざわりが心地よい。こんな華麗なカレイってあるんだと心に残ったひと皿でした。
温かいスープで方向転換。玉ねぎだけを用いて調理したスープであり、それなのに驚くべき糖度の高さです。
メインは短角牛。このお肉も美味しいですねえ。ソースなしの部分ですら肉の味が濃く、噛みしめるために肉を咀嚼する愉しみに浸ることができます。この肉だけ300グラムの一直線コースみたいなのがあっても良いかもしれません。
デザートが華やか。先のオマールにせよ、シェフはこういった絵のようなお皿も得意なのかもしれません。
ミニャルディーズとお茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

1万円弱のコースにワインをいくらか楽しんで、お会計はひとりあたり1.7万円。アルコールの価格と同じく都心のフランス料理店としては妥当な価格設定でしょう。肉が旨かった。ランチは3千円台から始まるそうなので、今度はお昼にお邪魔してみようかしらん。

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白金高輪は粒揃いの佳店が多いです。ちょっと不便な立地も良いんでしょうね、若い子たちを寄せ付けることが無くて。

石垣島きたうち牧場/真栄里(沖縄)

黒毛和牛・雌牛専門の卸売業が経営する焼肉屋「石垣島きたうち牧場」。ここ石垣島においては生産事業も手掛けており、牧場直営の牛肉を楽しむことができます。石垣島に3店舗、大阪に2店舗、銀座にも出店と手広い。
コロナ真っ盛りに訪れたので、観光客は皆無。地元の方が仕事帰りに皆でメシ食って帰るか的な雰囲気であり牧歌的。テーブル間隔は広く、風圧を感じるほどの換気がなされているので感染症対策もバッチリです。
私は運転があるのでオールフリー。連れはデカい香るエールと格差社会。前者は400円、後者は650円と沖縄価格で目尻が下がる。
まずはキムチの盛り合わせ。なのですが、妙に甘ったるくカツオ出汁のような風味も感じられ、あまり好きなタイプではありません。やっぱキムチはビリっとして欲しい。
タン塩は冷気が目で見えるほどカチンコチンに凍っており、肉質の良し悪しを論じる前にテンサゲでした。これは新手のルイベなのか?そうなのか?
変化球で豚肉。こちらも石垣島産の豚肉であり、脂の一滴まで美味しかった。これは是非一度厚切りのトンカツとしても食べてみたい。
サービス盛り。牛はロースにカルビ?豚のバラ肉に鶏肉という混ぜこぜな盛り合わせ。味は牛肉がイマイチで豚肉と鶏肉に軍配があがるという大波乱。牧場直営の牛肉とはこれ如何に。
正肉がイマイチなのかもしれないと、ハツ(写真撮り忘れ)とミノを注文してみたのですが、これらはきちんと美味しかった。それでも東京のどこにでもある焼肉屋のそれらと同等の味わいです。
〆は石垣島のクロレラ入りの冷麺。見た目はインパクトがありますが一発芸的でもあり、わざわざ追加注文する必要はなかったかなあという印象。

お会計はひとりあたり5千円強。まあ、こんなもんでしょうか。牧場直送の本気プレミアム牛などは一皿数千円のものもあり、それらを注文していたらひとりあたり1万円近くを要することを考えると、ちょっとどうかなあという印象です。家族で石垣を訪れ、子供OKな石垣牛を食べたいなどのシーンでどうぞ。

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それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。お気に入りのお店をご紹介。
そうそう、肉と言えばこの本に焼肉担当として私のコメントが載っています。私はコンテンポラリーフレンチやイノベーティブあたりが得意分野のつもりだったのですが、まあ、自分の評価よりも他人の評価が全てです。お時間のある方はご覧になってみて下さい。

かわ屋/薬院(博多)

人口ひとりあたりの焼鳥屋の数が最も多い国、博多。その中でも特に人気を誇るのが「かわ屋」。「博多のかわ焼きを明太子のように広めたい」と、博多の鳥皮文化を広めた功績店であり、食べログでは百名店にも選出されています。
カウンター席が7~8席にテーブルと座敷がいくつかと、20席かそこらの店なのですが、座席数以上の活気を感じさせる賑やかさ。我々は数週間前に予約をしてから訪れましたが、当日にもひっきりなしに電話が鳴り続け、そのたびに店員さんが困り顔で対応を続けます。物凄まじい人気っぷり。
飲み物はいずれも500円かそこらです。飲み物と同時に「皮は何本でぃ?」と、いきなり鳥皮の注文本数を尋ねられます。しっかりと予習をしてきた私は涼しい顔で「10本で」と回答。そう、当店は「かわ屋」であり、10本や20本単位での注文などはザラなのです。
お通しという位置づけなのでしょうか、ひとり1皿の大皿が配膳され、その上にたっぷりのキャベツが盛られます。そのまま食べても良し、卓上のタレをかけても良し。
さっそく「かわ焼き」がやってきました。1本120円。こちらの鳥皮は首の周りの皮を用いており、余分な脂や血合いなどを取り除いたのち、焼き・タレ漬け・寝かしの工程を6日間も繰り返すそうです。表面はカリっと、噛みしだくほどにモチっとした食感を楽しむことができ、なるほどこれは唯一無二の鳥皮でしょう。
酢モツ。中々の山盛りサイズですが、これで1杯300円。東京のふざけた博多風料理店は半分の量で倍の金額を請求することを考えると大変良心的と言えるでしょう。
注文した串焼きがジャンジャン届きます。砂ずりにバラ。博多では豚バラの串焼きを出すお店が多いですが、当店は鶏のバラ肉。豊かな脂を感じつつもどこかサッパリとした余韻。いずれも1本120円であり、気兼ねなくパクつくことができます。
きも。いわゆるレバーの部分であり、流行のレアレアのものとは異なりバリっと火を入れザラっとした舌ざわりが特徴的。
とり身。これはモモの部分なのかなあ。オーソドックスな味わいであり、郷愁を呼ぶ味覚です。
豚足。他の串に比べるとかなり時間をかけて焼かれたひと品。表面はガリガリと食感であり、その先はまさにコラーゲンといった歯ざわりであり、ある意味でお餅のような噛み応え。
お会計はひとりあたり1,500円。ホテルのラウンジで軽く飲んできたことを差し引いたとしても安い。フードファイターが本気で飲み食いしたとしても5千円を超えることはないでしょう。店員さんの雰囲気も良く、人気店だからといってちょづくことなく、とても感じが良い。
旅行者にとって博多名物と言えばラーメン・もつ鍋・水炊きあたりが中心になるでしょうが、二度目の博多であれば是非とも「かわ焼き」を組み込んでみましょう。楽しいよん。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

美喜鮨 本店(みきずし)/富山駅

富山駅から徒歩5分ほどの場所にある「美喜鮨 本店(みきずし)」。天然の生け簀である富山湾の地魚を重視する老舗の鮨屋です。
なのですが、どことなく寂れた雰囲気であり、従業員からも覇気が感じられません。店内は何となく雑然としており、鮨屋特有の背筋が伸びるニュアンスは感じられませんでした。
生ビールは千円を切り、日本酒は1合千円前後と悪くない価格設定です。
お通し(?)にイカのマリネ。店内のムードと同様にやる気が感じられない味覚であり、デカフェのように味気ない。
イカにスズキ。お、タネはきちんと美味しいじゃないか。イカのネットリとした甘味にスズキの迫力のある歯ごたえ。シャリも米の粒を感じる硬めスタイルであり、私のタイプです。
紅ズワイガニ、フクラギ、アマエビ。そういえば、我々はカウンター席に陣取り他に客は居ないというのに、どうしてバッチ処理での提供なんだろう。やっぱりひとつひとつ丁寧に握ってもらわないと雰囲気でないなあ。
マダイにアジ。まさに「きときと」といった食感で、爽やかな味わいです。
白エビにバイガイ、ソイ。いずれも王道の富山のタネであり、旅行者にとっては魅力的なセレクションでしょう。
アラ汁でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

ただ、冒頭に記した通りの活気の無さは気になるところ。怠慢とまでは言いませんが、やるぞという心意気は感じられず、結果として食べ手である我々のテンションも下がってしまいました。駅からは近いので、時間の限られた旅行者が新幹線の前後に駆け込むには便利かもしれません。

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富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌な方は是非とも富山に。
観光地としてあまりパっとしない富山県につき、「幸福県」すなわち「恵まれた自然環境の下、住居・労働・教育などの都市機能が整備されている県」であることに目を付けた富山本。富山の魅力を様々な観点から紐解いています。

鮨処あいじ/片町(金沢)

飲食店が密集する片町伝馬商店街にある人気の鮨屋「鮨処あいじ」。食べログでは百名店に選出。近くには私のお気に入りの日本料理店「銭屋(ぜにや)」もあります。
店内はL字型のカウンターが8席ほど。かなりゆとりのある造りであり居心地が良いです。奥には個室もあるそうです。今回はマンボウ中だったのでお酒はナシで、にぎりのみ(?)のコースです。
まずはガスエビ。芯のある食感に大人の甘味が心地よい。
アカイカは細かく包丁が入れられており、触手のように舌に絡みつきます。おっとりと心地よい甘さでした。
メゴチ。天ぷらではよく食べるのですが、生、それもにぎりで食べるのは初めてかもしれません。複雑で奥行きのある味わい。お魚中心の生活っていいですね、バリエーションがあって。肉なんて片手で数えるほどの選択肢しかないもんなあ。
白エビ。程よく透き通った清澄な外観に品の良い甘さ。これこれ、北陸とはこうですよ。
バイガイはコリコロとした食感が心地よい。日本酒が無いことが悔やまれます。
ヅケは正統的な味わい。仄かな酸味と鉄分を感じる旨味に身を委ねます。
そうそう、当店はガリの代わりにお野菜の漬物?浅漬け?ピクルス?が供されます。ガリに比べると食べ応えがあって、インターバルの口元が寂しい時にちょうど良い。
こちらはクエだったかしら?コリっとした食感に清らかな旨味。
ガンド。ブリ一歩手前の少年です。私、こういうお魚好きなんですよね。歯ごたえがあって、味が強い。大人になるのが楽しみな味わいでした。
キンメダイを蒸し寿司で。そうそう、大将のムッシュ下谷愛治は野々市「太平寿し(たへいずし」の出身で、その代名詞とも言うべき蒸し寿司が出てくるのが嬉しいですね。
カジキは軽く炙って。淡白な風味のタネにはアクセントを付け、香ばしいかおりに食欲を刺激されます。
トロはやはり王道の美味しさ。日本全国どの鮨屋にお邪魔しても必ずマグロが出るって、冷静に考えると物凄いことですね。
シメサバ。優しい〆で素材そのものn味わいもしっかり活きています。
ウニは奇をてらわず直線的にウニであり、やっぱりウニは美味しいなあと全面降伏。
アジ。厚みがあって、筋肉質。スポーティな美味しさです。
ノドグロは軽く炙って。焼き目の香りに鼻がひくつき、口に含むと高貴な甘味と旨味が押し寄せます。北陸の鮨屋に来ると、またノドグロかよという気持ちもありつつ、やっぱり旨い。それがノドグロ。
芽ネギ。鮮やかなグリーンにシャキシャキとした歯ごたえ、独特の辛みと香り。鮨屋でしtか楽しめない珍味です。
饗宴もフィナーレへと近づいてきました。お椀で内臓を落ち着けつつ、、、
出汁巻き玉子で余韻に浸ります。
フィニッシュは穴子。こちらもオーソドックスな味わいであり、良い鮨を食ったな、という記憶が記録として刻まれます。
メロンのコンポートで〆。ごちそうさまでした。

以上を食べ、お会計は、お会計はひとりあたり6千円。ガタッ!と、思わず立ち上がりたくなるような価格設定です。いや、これはもう、ほんとありがとうございましたこの御恩は一生忘れません。

これってコロナ抜きの平常時にどれだけ飲み食いしても1万円かそこらでおさまるってことだよなあ。六本木生まれ銀座育ちの私としてはちょっと信じられない価格設定です。嫁入りしたい。1万円以内の鮨であれば金沢、いや世界で一番好きかもしれません。オススメです。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。