てんぷらと和食 山の上 本店/御茶ノ水

神田駿河台の高台に位置する日本屈指のクラシックホテル「山の上ホテル」。名称はGHQ接収時代にアメリカ軍人の間で愛称になっていた「Hilltop」が起源とのこと。
独特のアットホームなサービスが評判を呼び、出版社の密集していた神田に近いことと相俟って、作家のカンヅメ(執筆促進目的で軟禁すること)場所として、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静ら多くの文人に利用されてきました。
当店はこのホテルのメインダイニング。同名の看板で都内に3店舗を展開し、また十番の天ぷらの名店「てんぷら前平」のシェフは当店の料理長でした。
当然に超がつくほどの高級店ですが、ランチは幾分お値段控えめ。天丼は税サ別で3,600円~と、格の割には悪くないディールです。コース料理だと1万円を余裕で行くのでご注意を。
天丼。才巻海老が3本に野菜(インゲン?)が1本、キスが1匹にかきあげという陣容です。タレは辛口か甘口かを選択できるので、私は辛口をチョイス。

エビは小ぶりながらも弾力のある固体であり、程よく水分が抜けて凝縮感あり。他方、野菜は特に記憶に残らず。ライスは中の上。そこらの定食屋よりは格段に美味しいですが、極上の和食店のそれに比べると見劣りする。タレは辛口というだけあって刺すような醤油の塩味が感じられます。
奥に隠れていたキスとかきあげ。キスは良く言えば清澄、悪く言えばプレーンであり、一般的な味わい(キスを食べる度に「天冨良よこ田」の顔が思い浮かんでしまう)。かきあげは抜群に旨い。ぶつ切りされた海老がこれでもかというほど詰め込まれており、体感的には先の海老天5本分ぐらいの食べ応えがあったような気がします。
シジミの赤出汁。シジミも赤出汁も双方文句なしに旨いのですが、いずれも実に濃厚な味覚であり、共に食すと味覚の複雑性が大きすぎて、風味がケンカしてしまっているように感じました。
お漬物のクオリティはさすがの一言であり、トップ・オブ・トップの味わいです。先のかきあげが瞬間最大風速として最もアガりはしましたが、冷静に考えると素材に頼りすぎているきらいがあり、本日一番のお皿という意味ではこのお漬物だったかもしれません。
お会計は税サを含めると4,276円。うーん、ちょっと割高かなあ。もちろん天ぷらとは費用対効果の良くないジャンルではあるので、そのことを加味すれば妥当なのかもしれませんし、天丼としては最高峰に位置づけても良いレベルではあります。でも、ランチでこの金額となると、より満足度の高いお店は他にあるよなあという印象。ある意味ディナーできちんとしたコースを食べたほうが納得感は高いのかもしれません。


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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。

いづる/大門

浜松町界隈で最も並ぶラーメン屋。店主は恵比寿の名店「おおぜき中華そば店」の出身。昼のみの営業で売り切れ仕舞いと難易度の高い店。開店は11:30とされているので11:33に到着したのですが、15人の店外行列。
しかしその数分後には、食事を済ませた客が次々と吐き出されてきたので、実際にはもう少し早めにオープンしているのかもしれません。回転も速く、10分やそこらの待ち時間で入店できました。換気扇を通じて「お次の方~」と呼びかけられるので、耳をすませておきましょう。
着席後数分で提供される中華そば。私は限定40食の「濃密な煮干そば」を注文。これは濃密を通り越して事件性すら感じられる濃度です。その色はグレーを通り越してグリーンですらあり、カニミソのような印象。箸は刺さりレンゲは浮く。この比重はアルキメデス級です(何が)。
兎にも角にも煮干しの濃度ですね。灰色の枢機卿もかくやと思わせる、複数の煮干しを極限にまで煮詰めたソースをノードとし、その他に魚介や動物を感じさせる風味。とにかく濃いので繊細な味覚の分別が全くつきません。

麺は中太。そこそこ美味しい気がするのですが、スープの味覚が強烈すぎて印象に残りづらい。肉は豚と鶏の2種。いずれも低温調理の大変に手の込んだ逸品のはずですが、やはりある種の毒気のようなものにさらされており、肉そのものの味わいは忘却の彼方へと消えていく。
店内のゲスト(全員が男だ)が無言でカウンターに200円を置いており、何事かと思い私も真似をしてみると、「中太と細麺、どちらにしましょうか?」と店員より声を掛けられる。太麺原理主義者の私としては条件反射的に「中太」と答えたのですが、なるほどこれは「和え玉」という、替え玉にトッピングと味付けがなされたおかわりの制度だったのですね。
肉骨粉ならぬ煮干し粉(?)を先頭にチャーシューやタマネギ、タレを混ぜ込んでいくと、日本橋は「sisi煮干啖」ような煮干し風味のパスタができあがりました。これが、旨い。これでも充分に味は濃いのですが、先の暴力的なスープに比べると赤子も同然の爽やかさです。

200円の追加料金としては大変にお得なシステムですが、麺はトータルで300グラム近く摂取することとなり、血糖値スパイク必至。午後はプールの後の国語ぐらい眠くなるのでご注意を。
勇気を出して残ったスープに「和え玉」を投入。ぎゃあああ!味が濃い!私はひとりで黙々と食べているのですが、その脳内は脳汁が出っぱなしの万年躁状態であり、「すごい煮干ラーメン凪」なんて全然すごくないんだからね、と思わず独り言ちるレベルです。

是非はともかく、ここ数年で最も記憶に残ったラーメンでした。ルールに沿って動くのではなく、ルールそのものを作るラーメンであり、努力の積み重ねで出来上がった1杯というよりは、欲しい結果から考えて作られた作品です。当然に好みが分かれる味わいであり、新しい試みにはまず拒否反応を示すタイプは敬遠したほうが良さそう。私は大好き。また行きたい。


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ぽん多本家(ぽんたほんけ)/御徒町

創業は明治38年。東京を代表する老舗洋食店「ぽん多」。トンカツの名店として取り沙汰されることが多いですが、あくまで当店は洋食店。メニューに記載されるのは「カツレツ」であり、それにロースやヒレなどの種類はございません。
「カツレツ」単品で2,700円と目を剥く価格設定であり、「カキフライ3,240円」「きすフライ3,740円」と、レストラン吾妻と並んで都内トップクラスの値付けでしょう。
注文を受けてから肉を叩き調味し粉を振り揚げ始めるので10分ほどの調理時間を要します。スタッフの方は空きスペースに適当に皿を置いていくだけであり、きちんとセッティングはしてくれませんでした。高級店にしては雑な対応と言えるでしょう。
高田馬場の成蔵に似た外観であり、衣は粒が大きく淡い色合いであり、低温でじっくり調理されたことが伺えます。表記にはありませんが肉はロース。ただし脂などはキレイに掃除されており、いわゆる脂の塊はありません。断面の色合いは均一であり、しっかりと火が通されているようです。
味は、うーん、普通です。脂を除去しすぎているきらいがありジューシーさに欠け、パサついた食感が気になります。豚肉独特の臭みも感じられ、これなら清澄なヒレ肉を用いれば良いじゃないかという気分になる。それなりには美味しいですが、単品で2,700円のメインディッシュとしては高すぎます。
また、卓上の調味料にもこだわりが感じらません。ソースこそスパイシーかつフルーティーで悪くないものの、塩やカラシは一般的なものであり、ケチャップはさすがに食欲を削ぐプレゼンテーションでしょう。
お椀は豚汁ではなく赤出汁。これは美味しいですね。濃厚でありながらクドくなく、雑味も無い。トンカツ定食業界においては最高品質レベルと言っても過言ではありません。
お漬物も素晴らしく、日本料理の名店で出されても充分耐えうるクオリティです。さすがにお椀・漬物・ライスのセットで540円を請求するだけのことはあります。
ライスは一般的な定食屋のものを中とし、いわゆる高級和食店のものを上とすれば、当店のそれは中の上。トンカツ屋としては美味しい部類に入りますが、540円という別料金を設定するのであればもう少し高みを目指せるような気がします。
お会計はカツレツとゴハンのセットで3,240円。うーん、割高。東京の洋食ならびにトンカツ文化を支えてきたという敬意から得点は高めに設定されているのかもしれませんが、フラットな気持ちで臨めば1,800円ぐらいに落ち着いて欲しいところ。行列は無くゲストはアラカン(アラウンド還暦)の方が殆どだったので、価格表など意に介さないオトナ向けのお店なのかもしれません。


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私は「とんかつ」という料理をそれほど好みません。だって、豚肉を脂で揚げるだけじゃないですか。それなのに、行列するは調理に時間がかかるわ結構効高価だわで、積極的に取り組もうとしないのです。したがって、私は物凄く「とんかつ」ならびに「とんかつ屋」について、検察官のようにシビアに評価しています。思い入れが無い分、信憑性は高いかもしれません。
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とんかつを「超一流の大衆料理」として、グルメ業界の重鎮たちがひたすら議論を重ねる本。よくもまあとんかつでこれだけ語れるなあと呆れます。ここに記された「殿堂入り」のお店はさすがに外しません。

ジュウバー(jiubar)/神楽坂

ここのところ神楽坂界隈で大変評判の良いお店。まさに神楽坂の中腹、松屋や銀だこあたりの向かいの雑居ビルの3Fにあります。サインなどは特に無いので、この「SHOT BAR」という看板を目印にしましょう。
3階まで階段で上がります。店の前まで来てもまだ看板は無く、その佇まいは中村玄KOJI MORITA中目黒いぐちを彷彿とさせる。大変な人気店であるため、必ず予約してから訪れましょう。
入店するとオープンキッチンとカウンターが出迎えてくれます。その他、テーブル席が数卓。個室ではないですが、カウンター席とテーブル席の目線が交錯することはないので、ある意味個室のように利用できそうです。
スペシャリテの肉団子。魚香(ユイシャン)という、四川省で魚料理に用いられる酸辛甘の調理法を導入。まさにその3つの味覚が迫り来る。カリっとした外皮の歯ごたえが良く、山椒の風味も食欲をそそる。なんて旨い肉団子なのでしょうか。
焼き野菜のサラダ。色の濃い野菜がたっぷりと盛り付けられ見るからに美味しそうです。火を通してあるためかそれぞれの野菜に凝縮感があり、山椒風味のソースと合わせて実に旨い。
今月のクラフトビールはコチラ。この1缶は1,000円近くし、食事に比べると全体的に酒類の値付けは高いです。ただしトータルで見れば完全に割安なのでさほど気になることはありません。
酢豚は色が薄い。その料理名の通り酸味が強く清々しい味わいであり、昨今の脂たっぷり黒酢主体の濃厚な酢豚業界に一石を投じる味覚です。
レバニラ。このレバニラも変わってますねえ。マッチ箱ほどの大振りなカットのレバーを奥行きのある調味料で炒めていきます。別添えのニラも味が濃く存在感抜群。これまでの人生で食べてきたレバニラはチマチマしたレバーをニラと共にぐちゃんぐちゃんに混ぜてしまうことが多かったですが、当店のそれは、レバーとニラがそれぞれハッキリと主張しており見事でした。
モツの麻辣。覚悟していたほどパンチの強い味わいではなく、むしろマイルド。モツの質も中くらいであり、他の料理に比べるとピンと来ない1皿でした。
こちらは常設のクラフトビール。そういえば、中華料理屋に3種のビールが用意されているのは珍しいですね。一方で、紹興酒の数は少ない。調味の芸風から考えるに、何事にもスカッと爽やかSuperdry 極度乾燥(しなさい)というタイプなのでしょう。
たっぷり胡麻のゆでワンタン。これはめちゃんこ美味しいですねえ。分厚く大振りなワンタンが生地から美味しく、タネのジューシーな味わいに悶絶する。胡麻たっぷりのソースも実に濃厚であり、上質な担々麺を凝縮させたような風味が感じられました。
素晴らしいお店でした。同じ神楽坂の中華と言えばエンジンが有名ですが、当店はエンジンの半額近い価格設定で、味は私好み。神楽坂チャイニーズとしては決定的であり、都内を見渡してもトップクラスに好きなお店です。

ハコが小さく予約には苦労しますが、22時を過ぎれば空席が見え始めるため、フリーでの入店も問題なく、最高の2次会を約束してくれることでしょう。オススメです。


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麻布十番と同様、小さな街ながら魅力的なレストランが数多ある神楽坂。この街で生活を送れば充実した食生活になること間違いなし。一度住んでみたいです。
神楽坂に特化したグルメ本は以外と少ない。本書はモテたい人向けの飲食店情報が中心。高級店やバーなどの紹介が多く、神楽坂らしさが凝縮されています。グラビアの田中みな実の雰囲気が妙にマッチしてる。

2019年バレンタイン総括

頂いたバレンタインチョコレートを並び立て、インターネットを通じて全世界に公告するという上品とは言い難い趣味を有する僕ですコンニチワ。ちなみにツイッターなどでは頂いたチョコレートをリアルタイムで積極的に公開しているのですが、これは決して自慢ではなく、頂くチョコが重複してしまうのを防ぐため。プレゼントする側もされる側も快適に過ごすための配慮です。これは決して自慢ではない。


さて、サロン・デュ・ショコラ2019食べ歩き速報!でも報じた通り、今年はビーン・トゥ・バーがブームから前提へと移り変わり、その代わりに「ルビー」という、ダーク、ミルク、ホワイトに続く第4のチョコレートがピックアップされました。こちらも有能なパティシエ・ショコラティエの手にかかることにより、数年の後にはトレンドがら選択肢のひとつに変化していくのでしょう。


ピエール・エルメ・パリ(PIERRE HERMÉ PARIS)
コルマールのブーランジュリー(パン屋)の4代目として生まれたピエール・エルメ。“パティスリー界のピカソ”(ヴォーグ誌)、“パティスリー界の挑発者”(フード&ワイン誌)、“前衛的パティシエにしてフレーバーの魔術師”(パリマッチ誌)、“キッチン・エンペラー”(ニューヨーク・タイムズ紙)、“現代パティスリーの王”(ザ・ガーディアン紙)など、彼への称賛は枚挙に暇がありません。

ベースはパティスリーなのですが、ショコラは彼の得意とする素材のひとつ。スペシャリテであるイスパハンをボンボンに閉じ込める技術には舌を巻く。


フランソワ・ジメネーズ(François Gimenez
毎年プライベートで日本を訪れる親日家のフランソワ・ジメネーズ。ブドウの実をマール(ブドウの搾りカスから造られる蒸留酒。このマールはボージョレ)に漬け込みショコラでコーティングするという、ブドウに寄せたショコラです。ショコラ好きはもちろん、酒好きにも愛される味わい。


ル・ショコラ・アラン・デュカス(Le Chocolat Alain Ducasse)
フランス料理の巨匠が手掛けるショコラ。クーベルチュール(土台となるチョコ)はパリの工房から直送され、日本橋の工房でショコラティエたちがひとつひとつ手作りしています。当店のショコラはカカオの風味が際立っている点ですね。チョコレート、それはカカオ、とも言うべき素材の味覚がはっきりとしたショコラです。

何ならクーベルチュールから東京で作ってくれ、と言いたいところですが、それはまあ贅沢な願いというところでしょう。


パスカル・ル・ガック(PASCAL LE GAC TOKYO)
1月19日にオープンしたばかりの当店。海外初出店どころかパリ本店に次ぐ2店舗目が東京だなんて嬉しいなあ。彼の作品も様々なフレーバーに寄るというよりは、ショコラそのものの味わいで勝負しているという印象。カカオが濃く、フルーティ。世界初となるイートインスペースも設けられ、目玉としてチョコレートフォンデュが用意されているそうなので、近々お邪魔してみようかしらん。


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男、かつ、左党の割にスイーツも大好きです。特にチョコレートが好きですね。JPHが基準なので、スイーツの評価は厳し目かもしれません。

難解な理論をユルいトーンで柔らかく読み解く専門書。チョコレートに係る基本的な素養から、文学や映画など芸能との関係まで解かり易く解説。ぜひチョコレートを食べながらのんびりと読んでみましょう。

香港エクスプレス復路10円キャンペーンの旅 vol.4

■唐閣(T'ang Court)/尖沙咀
https://www.takemachelin.com/2019/02/tang-court.html
ランガムホテルズインターナショナルグループの香港における旗艦ホテル「ランガムホテル香港」。ホテル内にTギャラリア香港(DFS)が入居し、香港の中でも屈指の高級ショッピングエリアに位置します。

当館のメインダイニングは「唐閣(T'ang Court)」。ミシュラン3ツ星の広東料理であり、コース料理は1.5万円前後〜と軽く引くのですが、ランチの飲茶コースであれば5千円台で済みます。詳細は別記事にて


■重慶大厦/尖沙咀
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E6%85%B6%E5%A4%A7%E5%8E%A6
香港イチの魔窟と言えばココ重慶大厦(チョンキンマンション)。常に怪しげな外人が軒先にたむろっており、中に入るともっと怪しげな外人がもっとたむろってます。前回お邪魔した際は両替を試みましたが、今回は旅行中に紛失してしまったイヤホンを所望しに。
1Fに入居するインド人経営の電化製品屋をぶらつく。有象無象の商品が投げ売りされており、それぞれの商品の説明を尋ね相場感をつかみます。交渉を重ねるとどの店も結局は似たような金額に落ち着くので、最終的には感じの良いニイチャンの店で買いました。人柄って大事だな。


■赤柱(Stanley
https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g294217-d320715-Reviews-Stanley_Market-Hong_Kong.html
バスに乗って香港島の南東へ。香港島最南端に位置する美しいリゾート地、赤柱(スタンレー)にお邪魔しました。イギリス植民地時代は香港最大の漁村でしたが、現在は欧米人が中心となって暮らす高級住宅街です。
ほら、車はテスラにベントレーだよ。聞こえているのはほぼ英語。瞬間、自分が香港にいるのかどうなのかわからなくなる。
欧米風のショッピングモールの他、土産物屋が集積する「スタンレーマーケット」もあります。ただし見るべきものは特に無く、香港初心者の方はわざわざ来る必要はない街でしょう。香港5回目でもう見るもの無いや、という方むけですねスタンレーは。


■淺水灣(Repulsebay 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%91%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%99%E3%82%A4
香港島の南、スタンレーの西。ハリウッド映画「慕情」の舞台となった小さな街。スタンレーに負けず劣らずの超高級住宅街であり、香港でも屈指の地価を誇ります。
遠浅のビーチが自慢。海水浴場として人気があり、地元の方はもちろんのこと観光客も多数訪れます。この日は中国人観光客がバス数台で乗り付けており、真冬だというのに賑やかなビーチでした。
香港マダム御用達、ペニンシュラ経営「The Verandah Restaurant」のアフタヌーンティーが有名なのですが、なんとこの日は定休日。ベランダの無いレパルスベイなど、パティのないハンバーガーのようなものである。拗ねて香港中心地へと戻ります。


■金鳳茶餐廳(Kam Fung Restaurant)/湾仔
https://www.takemachelin.com/2019/02/kam-fung-restaurant.html
香港のソウルフードと言えば菠蘿包(ポーローパーウ)。パイナップルパンとも呼ばれるパンの一種です。しかしながらパイナップルが入っていたりパイナップル風味がするというわけではなく、パン生地の上にクッキー生地を被せて焼くことにより表面がパイナップルのように見えるとのことで、そう呼ばれるようになったそうな。詳細は別記事にて


■Mott 32(卅二公館)/中環
https://www.takemachelin.com/2019/02/mott32.html
香港のメガバンク、渣打銀行(Standard Chartered Bank)の地下にあるミシュラン星付き中華。いやあ、香港まで来た甲斐がありました。この中華料理はちょっと東京には無いですね。先鋭的で、味覚が多様で、しっかりと美味しい。ここ数年における我が心のチャイニーズランキング1位かもしれません。今度はもうひとつのスペシャリテ、事前予約必須の北京ダックにチャレンジしてみようかしらん。詳細は別記事にて


■ON Dining Kitchen & Lounge/蘭桂坊
https://www.takemachelin.com/2019/01/on-dining-kitchen-lounge.html
最後の夜は香港きっての繁華街、「蘭桂坊(Lan Kwai Fong)」で夜遊びです。中環駅から少し山側へ歩くと、ひたすらに飲み屋が連なり酔客が道に溢れる一画が。

我々が訪れたのはミシュラン1ツ星レストランに併設されたバー。デザートや食後酒を楽しむためにダイニングフロアから上がって来る客も多く、雰囲気ならびに客層が非常に良いです。詳細は別記事にて


■Lung King Heen(龍景軒)/中環
https://www.takemachelin.com/2019/02/lung-king-heen.html
フォーシーズンズホテルのメインダイニング「Lung King Heen(龍景軒)」へ。中華料理で世界初めて3ツ星を獲得した店として名高く飲茶では最高峰に位置付けられています。カジュアル飲茶ならが1ツ星を獲得した添好運(Tim Ho Wan)のシェフは当店出身です。

サービスが素晴らしいですね。リッツ、シャングリラ、ランガムそしてフォーシーズンズと立て続けにラグジュアリーホテルの中華を食べ比べて来ましたが、当店がダントツでレベルが高い。オープン前のミーティングはしっかりやってたし、私に関わった全スタッフが皆私の名前を覚えていました。これは中々できそうでできないことあるよ。詳細は別記事にて


■潮楼 (Chao Inn)/香港国際空港
https://www.takemachelin.com/2019/02/chao-inn.html
LCC専用に近く派手さに欠ける香港2タミですが、レストランは意外に充実しています。テーブルサービスの店からフードコートまで百花繚乱であり、無料wifiのスピードも速い。無理にラウンジに居座らなくても、気持ちよく時間をつぶすことができます。
機内で食事を摂るのは落ち着かないので、16:30という時間ではありましたが早めの夕食を摂ることに。潮楼 (Chao Inn)という中華料理のファミレスチェーン店であり、飲茶のみのアラカルト注文にも対応してくれます。詳細は別記事にて


■総括
さてさて毎年お邪魔している香港。今回も楽しませて頂きました。今回いちばん印象に残ったのは、香港人は道路を渡るのがヘタということです。普段あれだけガサツでグイグイ来るくせに、横断すべき道路を前にした途端、急におっかなびっくり自信を無くすように見えるのが何だか可笑しかったです。ちなみに信号無視をさせたらニューヨーカーの右に出る民族はなく、何もない道路を渡らせたらベトナム人が最強だと思います。

ガサツ、と言い切ってしまいましたが、それは日本文化圏から来るとそう感じるだけであり、この社会に溶け込んでしまえばお互い遠慮なく(物理的にも精神的にも)ぶつかり合うので、それはそれで悪くない世界だなと思いました。皮肉でなく。

そうそう、これは日本在住の上海人の友人が語っていたこと。「私たち中国人が世界中から眉をひそめられ、迷惑に思われていることは知っている。そしてそれをコンプレックスに感じる中国人も増えてきた。なので今後、中国で伸びていくビジネスは教育だろう。科挙的学力に係る教育ではなく、教養やマナーという意味での教育」だそうです。今後、中国で一山あてたいと感じている方は是非どうぞ。

ところで香港に限らずどのアジアの国々に立ち寄っても等しく感じることですが、昔に比べると割安感に乏しくなってきましたね。経済学的なややこしい説明は専門家に譲るとして、これはひとえに日本の国力が相対的に弱くなってきていることが理由でしょう。

しかしながら悲観する必要は全く無く、日本に留まり日本の中だけで小商いを続けるならば、普通に暮らす分には何も困らないと思います。学生時代は海外に対する憧れがそれなりにあったのですが、最近はどんどん思考が内向きになってきました。ヘタな英語を話すよりも美しい日本語を操れるほうが格好良く思える今日この頃。

明日ありと思う心の仇桜とは言うものの、経済や文化については粘性があり、少なくとも我々が生きている間にこのトレンドが大きく変わることは恐らく無いでしょう。妙に悲観する必要は全くありません。気楽に日本を楽しんでいきましょう!


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。