やきとり 嶋家/麻布十番

麻布十番からは10分ほど歩いた南麻布は古川橋近くの焼鳥屋です。南麻布あら喜のもう少し先。2017年3月にオープンしたばかりの新店なのですが、店内には朽ちかけた赤ちょうちんがディスプレイされており、トータル(?)では創業40年とのこと。
琥珀ヱビスで乾杯。深いコクとまろやかな味わい。750円と少々お高いですが、いわゆる普通の生ビールとは一線を画する味わいです。「琥珀ヱビスを置いてあるってだけでポイント高いよね。よし!今夜は食べるぞっ!」彼女は握力が50近くあるアスリートであり、彼女が食べると言ったら本当に食べるので、明朝の胃もたれを覚悟せずにはいられない。
お通しはもずく。「もずくの語源って、海の藻屑からなのかな?」それは食材に対してあまりに愛が感じられない語源であろう。すぐに検索してみると(ミレニアル世代の特徴的な行動だ)、藻が付くから『もづく』、転じて『もずく』とのこと。
レバテキ。生と言って良いほどのロゼ色の断面を湛えた白レバー。洗いたてのシーツのように清澄な肝臓であり、一方でコッテリとした脂も感じられるという矛盾した味覚。琥珀ヱビスにぴったりだ。
ささみ。サイコロキャラメルのように大きい1口1口を頬張ると、焼鳥と名乗る資格が無いほどの生感覚。カツオのたたきほどしか火が通されておらず、生肉原理主義にはたまらない逸品です。
とり刺の盛り合わせ。メニューに「提供後20分以内に食べ切れる方のみ。場合によっては下げさせて頂きます」と挑戦的な一文。

左から、たたきはもちろん美味しいのですが、先のささみの串の前では存在が霞んでしまう。隣の鴨は野趣溢れる味覚で旨い(鴨って刺身で食べれるの?)。上の蒸し鶏の味は悪くないのですが、これを刺身と呼ぶのは頂けない。右端の内蔵ファミリーはハツ・スナギモ・レバー。たっぷりとしたゴマ油で食し、牛レバの禁止など屁でもないと納得できる味覚です。

ただし全体を通して『刺し身』とは言い難く、量もそれほど多くは無いので(20分どころか10分もかからなかった)、これで1,850円は高く感じました。
日本酒は『作』『麒麟山』『うっかり八兵衛』を1合づつ頂きました。いずれも1合1,200円前後。このあたりの和食屋という意味ではこんなものかもしれませんが、いわゆる焼鳥屋としては全般的に酒は高いです。
むねとろ。胸肉と手羽の繋ぎ目の部分。一般的にムネ肉はパサついた食感であることが多いですが、コチラはたっぷりと脂がのっており、歯ごたえもしっかりあって面白い。
そうそう、我々は「やきとろ5本セット(1,500円)」を注文したのですが、その3本目にあたるものがチキン南蛮。まずはムネ肉。シンプルな肉質に気前よく塗りたくられたタルタルステーキ。まさに私の大好物です。
こちらはモモ肉のチキン南蛮。いいですねえ、この食べ比べを楽しませようという姿勢。贅沢にも一口で頬張ると、バリっとした皮目の裏から肉汁が洪水のように押し寄せ、ムッチムッチとした歯ざわりの肉がマッチョに歯と舌を押し返します。唸るほど旨い。これは我がこころのベストチキン南蛮と言って良いかもしれません。

仙台坂ひむかの鶏南蛮なんて、コレに比べたらおままごとね」と連れもご満悦。しかしながら彼女はチキン南蛮のことを鶏南蛮という種族であり、そのような呼称は一般的ではない、と何度注意しても直らないのでもう諦めました。
はらみ。鶏にハラミってあったんだ。いやもちろんあるんだろうけれど、食材として目にするのは初めてかもしれません。牛ハラミは筋肉質な食感ですが、鶏ハラミはコリコリとナンコツのような歯ざわりで面白かった。
つくね。見た目こそは想定の範囲なのでが、口に含むとびっくり仰天。いわゆるフワフワとしたミンチ肉ではなく、まるでモモ肉のような迫力のある歯ざわりです。粗挽きにしているのかなあ、フランスで食べるタルタルステーキのように勢いのある1本です。

付け合せの卵黄(?)は、箸でつまんで崩すことなく一口で。口腔内で肉と混ぜ合わせ新たなソースを生成する。本日一番のお皿でした。
ぬか漬け盛り合わせ。これはまあ中くらいのお漬物ですね。目立った特長などはなく、やはり当店は焼鳥屋です。
カウンターの両サイドが注文していたので「アレは何だ?」と注文せずにはいられません。『嶋家の煮込み』という料理で、鶏肉の様々な部位と野菜のごった煮のようなもの。鶏肉の旨味成分を味噌仕立てのスープがしっかりと受け止め、1滴も余すところなく飲み干しました。
〆に唐揚げを注文したのですが、思い描いていたものとは異なる料理が到着し吃驚仰天。鶏を丸々素揚げにしたような大迫力の一皿であり、ケンタッキーが化けて出たような迫力があります。骨が多く可食部は少ないものの、その味わいに間違いはなく、特にジュワリとした皮目の部分に手づかみでかぶりつく瞬間が心に残りました。
いやはや、久しぶりに素晴らしい焼鳥を食べました(写真は公式ウェブサイトより)。その美味しさは鳥かどのような超人気店などに迫る勢いです。お会計も、しっかり飲み食いしてひとり6,500円とリーズナブル。最近の焼き鳥は人気も価格も暴騰気味ですが、当店はそのいずれもが常識的な範囲におさまっており何度でも通いたくなるお店。十番で一番な焼鳥屋であるのはもちろんのこと、日本全体を見渡したとしてもトップクラスに好きなお店です。


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麻布十番には日本料理店も結構多いのですが、割高であることが多いです。外すと懐が大ダメージを受けるので、信頼のおける口コミと、味覚が似た友人の感想に頼って訪れましょう。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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