酒場 ひまり堂 恵比寿店

2024年、恵比寿駅から渋谷方面に5分ほど歩いた場所に開業した「酒場 ひまり堂 恵比寿店」。コンセプトは「ワンランク上の大衆酒場」だそうで、このような居酒屋は恵比寿エリアに雨後の筍の如く乱立しているのですが、当店は成功を収めつつあり評判が良い。
店内はテーブル席が主力にちょっとした扉を隔てた個室風のエリア、カウンター席もいくつかあります。公称では70席としていますがギチギチに詰め込んだ結果であり、席間にゆとりはなく賑やかな雰囲気です。良い悪いではなく、そういうお店だと認識して訪れましょう。
飲み物は高くなく、赤星が中瓶で600-700円ぐらいだったかな。その他のアルコールも似たような価格設定であり、このあたりの居酒屋としては悪くない価格設定です。飲み放題付きの宴会コースもあります。
アラカルトのゲストはお通し代として数百円が徴収されます。この日のお通しは「カボチャとお米のすり流し」とのことですが、うーん、これは全然美味しくないですね。ビジホの朝食のビュッフェのスープのような味であり、これで何百円かのお通し代を取られるのは辛い。辛すぎる。
気を取り直して鮭キムチ。鮭のほぐし身をキムチと和えた、ありそうで無いひと品。鮭の旨味とコクがキムチの酸味・辛味と絡み合い後を引く美味しさ。キムチのシャキシャキ感も食欲を掻き立て、中毒性のある味覚です。
よだれ鶏。一般的にはパサつきがちな料理ですが、当店のそれは低温調理しているのかしっとりと柔らかく仕上げられています。薬味たっぷりで海苔の風味もアクセントとして見事であり、「よだれ鶏」という料理の未開の地を発見した気分です。
2日以上煮込んだ牛タン。箸で簡単に切れてしまうほど柔らかく煮込まれており、タン特有の臭みもなく、旨味だけが凝縮されています。口に含むとまさに「ホロホロ」ととろけるような口当たり。洋食屋の牛タン煮込みが何千円もすることを考えると、600円かそこらという価格設定は恵比寿の奇跡と言えるでしょう。
チキン南蛮。衣はサクッと香ばしく、中の鶏肉はジューシー。そこに、めんつゆを思わせる甘じょっぱい下味がじっくりと染み込んでおり、味が濃く、ビールがガンガンに進みます。タルタルソースは一般的なそれと異なり、フランス料理のウフ・ミモザに近いスタイル。ソースというよりも玉子の黄身の粒感をたっぷり楽しむことができます。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は5千円弱。恵比寿のエキチカでこれだけ食べてこの支払金額は悪くないディールです。また、飲み放題付きのプランは4,400円~と圧倒的にお値打ちであり、よく飲む方であれば酒代だけでモトが取れてしまう勢いでしょう。冒頭記した通り賑やかな居酒屋なので、仲良しグループでワイワイ楽しむのが良いでしょう。酒は酔ったもの勝ちだ。

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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。

35年ぶりに恵比寿の地で醸造を再開した「YEBISU BREWERY TOKYO」の特集に始まり、工場のあった明治から昭和、そして都内屈指のグルメタウンとなった現代まで、恵比寿のまちの歴史を振り返ります。これで貴方も事情通。

レストラン ラルモワーズ (Restaurant L'armoise)/長岡市

地元新潟の食材を99%使用した「ローカル・ガストロノミー」をコンセプトとし、ミシュラン1ツ星を獲得した「レストラン ラルモワーズ (Restaurant L'armoise)」。長岡駅から歩いて10分ほどの住宅街に位置し、マンションの1階店舗という控えめな立地。看板は店舗の内側にひっそりと掲げられており、知らなければ通り過ぎてしまうかもしれません。
店内は伝統工芸の温もりが感じられる落ち着いた空間で、センスの良い友人の家に遊びに来たような雰囲気。1日2組限定の完全予約制であり、シェフが調理からサーブまで全てを担当します。

田中良太郎シェフは東京のホテルやレストランで経験を積んだのち、27歳で当店を開業。ほんわかと朗らかなお人柄なのですが、ワンオペとは思えないほどの料理・サーブのタイミングを実現する、デキる漢です。
ワインの値付けは良心的。グラスワインは千円台が中心で、しかもタップリ注いでくれます。新潟の日本酒を活用したペアリングの提案も可能とのこと。
アミューズにコンソメとエクレア。前者は和牛と豚足から時間をかけて抽出された凝縮された旨味の結晶であり、キノコの豊潤で奥深い香りも感じられます。塩味はミニマルに抑えられており、素材本来の旨味が際立つ。後者は佐渡産ゴーダチーズを用いており、竹炭を練り込んだシュー生地からはほんのりとした香ばしさ。酒の進む最高のツマミです。
クロメスキ。コロッケ状のツマミであり、カリッとした衣の中からは新潟県産和牛がたっぷり。そのジューシーな味わいを胡桃のソースがまろやかなコクで引き立て、梅の風味で後味に爽やかさを残していきます。ワンオペでこのアミューズが出て来るってすごくない?
秋サバの燻製。脂の乗ったサバが燻製によってその旨味を凝縮させ、芳しい香りをまとっています。風味豊かな舞茸を添えつつ、カリフラワーのクーリで全体を上手くまとめているのが良いですね。アクセントに長岡産の山葵を用いているのもお洒落です。
パンも自家製で、よもぎパン・アオサ海苔パン・塩バターパンの3種を楽しみました。ちなみに店名はフランス語で「よもぎ」を意味しシェフ自らの手摘み。オイルの風味付けに用いるローズマリーももちろん自家栽培です。
ベニズワイガニとズッキーニのフラン。カニの繊細な甘味とズッキーニの瑞々しさが溶け込みつつ、口当たりは実に滑らか。甲殻類の旨味が凝縮された濃厚なビスクソースが食欲を一層引き上げます。添えられたポテトチップスのクリスピーな食感や九条ネギのオイルが爽やかな香りのアクセントも見事です。
サクサクと軽やかなパイ生地の器「ヴォル・オ・ヴァン」に西バイ貝とヒラタケがたっぷり。サクサクコリコリとした食感の対比が心地よく、磯の香りとキノコの風味が調和しています。泡泡はトビウオの出汁を用いているそうで、魚介の優しい旨味がふわりと広がります。
黒アワビのリゾット。贅沢に使用された黒鮑は、その弾力ある食感と、噛むほどに増す深い旨味で圧倒的な存在感を放ちます。お米には新潟が誇るブランド米「しんのすけ」を用いており、アワビの肝から作られた濃厚なソースと複雑に絡み合って最強美味しい。何なら丼にレンゲで食べたいくらいである。
ホウボウのロースト。皮目はパリッと香ばしく、身はしっとりとジューシーに焼き上げられており、その淡白ながらも上品な旨味を上手に引き出しています。周囲を固めるのは個性豊かな長岡野菜たち。新潟の豊かな大地の恵みを存分に感じられる、生命力に満ちたひと皿です。
メインは新潟の和牛のヒレ肉。香り良く穏やかな味わいに加え、お出汁っぽいソースと相俟って、和食の肉料理を食べているかのよう。肉のメインディッシュ特有のどぎつさは無く、しみじみと身体に溶け込んでいく美味しさです。
お口直しにメロンシャーベット。長岡産の糖度の高いメロンを贅沢に使用しており、その芳醇な香りとジューシーな甘みが、そのままシャーベットに凝縮されています。
メインのデザートはアンニンゴ(ウワミズザクラの実)のアイスとイチヂクのタルト。杏仁を思わせる独特で甘い香りが印象的なアイスクリームと旬のイチヂクを合わせて楽しみます。タルトにはポン菓子が潜んでおり、そのサクサクとした食感が意外な驚きと楽しさをプラス。軽やかなメレンゲが全体を優しくまとめ上げます。
お茶菓子は「ポポー」のマカロン。マンゴーとビワのあいの子のような味覚であり、トロピカルで芳醇な甘みが特長的。長岡の紅茶と共に楽しんでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコース料理が16,500円と信じがたい費用対効果。東京のイマドキ系フレンチでは如何に家賃と人件費を食べているかを痛感するギャップです。

お金の話はさておき、料理だけを見ても本当に素晴らしい。旬を逃さず最高の状態で地元食材を提供するというハイパーシーズナルな調達モデルを構築しており、その価値を最大限に引き出す無駄のない運営構造は、地方におけるファインダイニングの新たな可能性を示しています。

大都市でなくともその土地の環境と深く結びつくことで、世界に通用する食文化が花開くことを、田中良太郎シェフは力強く証明した。

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山もあれば海もあり、食材の豊富さでは他県の追随を許さない新潟県。おまけに日本一いや世界一の米どころでもあり、つまりは日本酒どころでもあります。冷静に考えれば日本でもトップクラスの美食県にあるはずなのに、いまいち目が向けられていないのはどうしてだろう。マーケティング下手なんかな。

雑誌『自遊人』編集長・岩佐十良による新潟の美食ガイド。本社を新潟に移しご自身も新潟で生活されており、実体験に基づく感想が豊富に記載されています。新潟のグルメを語る上での必読書と言えるでしょう。

歓迎 本店 (ホアンヨン)/蒲田

「蒲田餃子御三家」のひとつである「歓迎 本店 (ホアンヨン)」。立地が非常にユニークで、大田区立消費者生活センターという公共施設の1階に入居しており、JR蒲田駅からは歩いて5分ほどです。ちなみに「蒲田餃子御三家」とは「你好(ニイハオ)」「歓迎(ホアンヨン)」「金春」であり、「你好」の創業者であるムッシュ八木の兄弟や親戚によってそれぞれ創業されたという関係性があるようで、当店は食べログの百名店に選出されています。
日曜日の13時頃でも満員御礼の人気店。記帳台に名前を書きしばし待つのですが、回転が速いためすぐに着席できました。店内に足を踏み入れると、そこには昭和の趣が色濃く残る空間が広がっており、大人数で囲める円卓と、少人数向けのテーブル席が並び、壁一面にはこの店を訪れた数多くの著名人の写真が飾られています。同じ建物には図書館も併設されており、この公的な建物の中に庶民的な中華の名店が同居しているというギャップが、店の気取らないキャラクターを一層際立たせています。
飲み物はいずれも1杯500-600円といった程度であり、気持ち良く酔っ払うことができます。とは言えトイレは店内に専用のものはなく、ビル内の共用トイレを使用する形式であるので飲みすぎ注意です。  
注文後1分も経たないうちにエビ入り炒飯がやって来ました。流石に作り置きなのか、中華料理店ならではのダイナミックな味わいはなく、冷凍食品のピラフのような味わいです。
こちらはナンコツの唐揚げと野菜を炒めたもの。こちらも注文から90秒程度で出てきたので、少なくとも唐揚げ部分は作り置きだと思料します。それでもコリコリとしたナンコツの歯ごたえと野菜のシャキシャキとした食感に甘辛いタレがよく絡み、ビールを呼ぶ味覚です。
真打登場、羽根つき焼き餃子。当店の代名詞とも言えるひと品であり、パリパリとした薄い羽根と、もちもちとした厚めの皮のコントラストが堪りません。餡は生姜が効いていて爽やかな風味があり、ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がります。これで1皿350円は東京の奇跡と言えるでしょう。
チンゲン菜のオイスターソース炒め。シャキシャキとした食感のチンゲン菜をコクのあるオイスターソースで炒めたシンプルなひと品。ニンニクも効いており、食欲をそそる香りが堪りません。味付けはやや濃い目であり、前述のパっとしない炒飯と合わせて食べるに最適です。
エビ入り水餃子。こちらもモチモチとした厚めの皮が自慢であり、茹でる調理法に最適化されています。餡はエビのプリプリとした食感がアクセントになっており、肉汁がじゅわっと溢れ出す様はまるで小籠包のよう。    
春巻きはパリパリに揚げられた皮の中に、プリプリのエビ、コクのあるチーズ、そして爽やかな風味のしそが入り創作的な味覚です。ビールとの相性が抜群でツマミとして延々にパクついてしまいます。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり3-4千円といったところ。我々は羽田空港に向かうついでに立ち寄りましたが、空港のレストランに比べると大いに割安。味も良く、個人的には「金春 本館(こんぱる)」よりも好き。平日の昼時にはお得な定食メニューも用意されており、使い勝手の良いお店です。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。

そば処 こどら/壺川(那覇)

観光の喧騒から少し離れた壺川という静かな一角にある「そば処 こどら」。国際通りにある老舗「宮古そばの名所 どらえもん」との深いつながりがあるお店のようであり、当店も20年近い歴史を誇ります。
店内は沖縄そば屋らしいシンプルな内装で、L字型のカウンター席と座敷があり、仕事仲間でのランチから家族での食事まで幅広い客層に対応しています。ゲストは地元の方々が中心で、私がお邪魔した際には観光客はひとりも見当たりませんでした。
私は1,380円の「ジャンボソーキそば」に、単品で250円の「じゅうしい」を注文しました。その名のとおりジャンボなソーキであり、ファーストミットのようなサイズ感です。手を使ってかぶりついてしゃぶりつくスタイルとなるので、ギャルが好きピと一緒の際は注文が難しいかもしれません。
難攻不落のソーキそばは、見た目のインパクトだけでなく味も素晴らしいですね。ソーキは甘辛い味付けでしっかりと煮込まれており、骨から簡単にお肉がほぐれる柔らかさ。可食部も200グラム近くはありそうで、後述する「じゅうしい」と合わせて別の丼をセルフでクリエイトできる勢いです。
スープは沖縄そばでは珍しくかなり濃いめであり、先のソーキの存在感と互角に渡り合っています。類まれな深みがあり記憶に残る味覚。麺は平打ちのストレートでモチモチとした口あたりであり、「どらえもん」に関係してか宮古そばっぽいニュアンスが感じられます。
「じゅうしい」は、そばの力強いスープとは対照的に、ごく薄味で上品な味わい。細かくゴボウやニンジンが入っていて優しい味付けで、甘いソーキとの相性が抜群です。ジャンボソーキそばと一緒に味わうことで、お互いの味を引き立てあう、計算された組み合わせと言えるでしょう。
以上を食べて1,630円。沖縄そばのランチとしては、これはあくまで「ジャンボ」としたからであって、一番人気の「こどらセット(三枚肉とソーキの両方にじゅうしぃ)」は千円ポッキリ。キムチや納豆などの変わり種もあり、何度も通いたくなる魅力的なラインナップ。「ジャンボソーキそば」は連日売り切れの人気商品なので、注文したい方は開店と同時に訪れると良いでしょう。

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。