手羽先 おおむら/静岡市

1960年創業、静岡きっての老舗居酒屋「手羽先 おおむら」。静岡のソウルフードのひとつとして知られる「手羽先」が名物で、テイクアウトやイベント時のキッチンカーでの販売も好評のお店。食べログでは百名店に選出されています。場所は静岡駅から車で10分ほどで、歩いても30分ぐらいでしょう。
店内は思いのほか広く、L字のカウンター席にお座敷に数十席に2階席もある模様。子連れOKでありながら喫煙可という面白いコンセプトです。
アルコールは目を瞠る値付けの安さ。ビールは大瓶で700円ほどで、全国各地の銘酒が1合千円かそこらで楽しむことができます。静岡県の地酒も多く、旅行者にとっても嬉しいラインナップです。
サランラップがかけられた作り置きのツマミ類は階段下のショーケースから秒で配膳されます。とは言え刺身類は鮮度の良さが一目でわかる艶やかな輝きを放っており、特にマグロは静岡という土地柄もあって、赤身の濃厚な旨味とほのかな酸味のバランスがお見事。タコは吸盤のコリコリとした食感と、噛めば噛むほど染み出る滋味深い味わいが素晴らしい。
おしんこは恐らく自家製でしょう。の優しい塩加減と、素材の持ち味を活かした漬かり具合が心地よい。キュウリのパリッとした瑞々しい歯切れの良さが口内をリセットする重要な役割を果たします。
蒸し鶏サラダ。主役の蒸し鶏は、パサつきがちな胸肉を驚くほどしっとりと仕上げており、低温で丁寧に火を通したような柔らかさがあります。ゴマを土台としたドレッシングはアジコイメであり、酒の進むサラダです。
真打登場、手羽先です。黄金色に焼き上げられた手羽先は、皮目のパリパリとした香ばしさと、中の肉のジューシーさの対比が最大の魅力であり、提供された瞬間に立ち上る脂の焼けた匂いが食欲を刺激します。表面の皮はカリッとしたクリスピーな食感でビールとの相性が抜群。
「ねぎま」は鶏肉ではなく豚バラを用いているのが面白い。肉からは甘みのある脂が滴り、それがネギに染み込んで日本酒が進むのなんのって。鶏肉のネギマよりもパンチが効いた味覚です。
鶏皮はじっくりと焼かれており、表面はカリカリ、中はモチモチという二重の食感が楽しむことができます。噛みしめるたびにジュワッとにじみ出るコラーゲン質の濃厚な味わいは日本酒のアテとして最強の相棒だ。
もつ煮。モツそのものは串に刺さって提供され、その他の具材との主従がハッキリして楽しみ易い。味噌ベースのスープはモツから溶け出した脂と野菜の甘みが溶け合い、角の取れたまろやかでコク深い味わい。白ゴハンが欲しくなります。
「おでん」は「静岡おでん」の特徴である真っ黒なスープではなく、程よく甘い関西風のニュアンスを感じました。焼き物が出来上がるまでの繋ぎとして丁度良い味覚であり、とりわけ魚介の練り物系のレベルが高い。
「せいにく」は鶏肉を期待して注文したのですが、豚バラ肉がやって来ました。美味しいですが先の「ねぎま」と丸被りである。
〆に「もつカレー」を注文したのですが、ライスの付かない所謂「もつカレー煮込み」でした。ただし単なるカレー味ではなくモツの脂や和風出汁、味噌の隠し味なども感じられ、蕎麦屋のカレーに近い独特の深みを感じました。「ねぎま」「せいにく」に続いてローカル呼称に慣れませんが、何度も通って学びたくなる魅力があります。
今度こそ〆の食事として「おにぎり」。ニイチャンの大きな手でしっかりと握られるタイプであり、海苔のパリッとした食感と香りが全体を包み込みます。飲んだ後の胃袋に優しく染み渡る、日本人のDNAに響く究極のコンフォートフードです。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり5千円を切りました。居酒屋界隈のスパダリとも言える費用対効果であり何もかも最高かよ。予約客が掃けた後にも次々とウォークインのゲストが入って来、まさに春夏冬二升五合。近所にあったら人生が豊かになる飲み屋です。オススメ!

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。