お店は2階建てで、1階にはカウンター席とテーブル席、2階にはグループ向けの空間が広がります(写真は食べログ公式ページより)。1階だけで30席はありそうだったので、ビストロとしてはかなりの大箱と言えるでしょう。
前菜盛り合わせ。シャルキュトリが中心で、この1皿が1,200円というのは良心的な価格設定でしょう。面白いのは葉物野菜がパクチーで、その他の料理にもパクチーを用いたものが多く、店主はパクチー原理主義者なのかもしれません。
テーブルチャージとしてパンが付くのですが、ほんの僅かひとかけらであり、添えられたオリーブオイルの量も底が透けるほど薄い。何だか惨めな気持ちになるので、チャージは取ったままパンは出さないほうが良い気がしました。夏野菜がたっぷり入ったキッシュ。サクッとしたパイ生地の歯ざわりが心地よく、夏の太陽を一身に浴びた色鮮やかな野菜たちそれぞれの個性を、卵と生クリームの優しい風味がふんわりと包み込みます。
心臓のタルタル。ギョっとする呼称ですが、いわゆるハツを用いた洋風ユッケです。肉は富山県産池多牛を用いており、コリコリ、シャキッとした鮮烈な食感。丁寧に下処理され、臭みは一切感じられません。その味わいはクリアで、鉄分由来の豊かな滋味がじんわりと広がります。濃厚な卵黄をよく混ぜ、全体の味覚を取りまとめるのがポイントです。
モツのミートソースグラタン。オーブンから出したてのグツグツと音を立てるチーズの香ばしさが食欲を猛烈に刺激します。スプーンを入れると、熱々のミートソースの中から丁寧に煮込まれたモツ。クニクニとした心地よい弾力を残し、トロリととろけるチーズとの食感の対比がたまりません。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は1万円程。それほどお腹が空いておらずガッツリとしたメイン料理をパスしたため、思いのほか安くつきました。ガチ真剣に飲み食いしても1.3万円ほどに落ち着くはずであり、なるほどビブグルマンが規定するポジショニングそのものの満足度です。
王道のフランス料理であることに加え、地元の食材を多用しているのが良いですね。県外客は勢い魚介類を中心とした和食店に向かいがちですが、なかなかどうしてフランス料理も良いものです。

関連記事
富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌な方は是非とも富山に。
- 鮨 大門 ←銀座の半額で味と居心地の良さはそれ以上。
- 海老亭別館(えびていべっかん) ←多皿なのにモブキャラがひとつもない。
- ふじ居(ふじい) ←非の打ち所がない日本料理店。
- 美乃鮨(みのずし) ←最も幸せパワーが発揮される価格帯。
- 吟魚のはなれ 吟チロリ(ぎんちろり) ←海鮮居酒屋の最高峰。
- ピアット スズキ チンクエ(Piatto Suzuki Cinque) ←青は藍より出でて藍より青し。
- ランソレイエ(Lensoleiller) ←フランスの田舎のレストランをそのまま持ってきたような感性。
- カーヴ ユノキ(Cave Yunoki) ←料理のほとんどを富山の食材で勝負しているのが素晴らしい。
- 日本料理 山崎 ←ミシュラン3ツ星和食がこの価格で楽しめるのは富山の奇跡。
- 天ぷら小泉 たかの ←富山駅から近く昼も夜も空いているのが旅行者にとっても便利。
- KAWAZ(カワズ) ←「レヴォ(L'evo)」でスーシェフだったムッシュ川崎淳が富山市内で開業。
- レヴォ(L'evo) ←クマがぶらさがっている。
- パティスリー ジラフ(PATISSERIE LA GIRAFE) ←サロショを席巻する予感。
待機児童ゼロ、結婚した女性の離職率の低さ、貧困の少なさ、公教育の水準の高さなど、日本型の「北欧社会」が富山県にはあると分析する1冊。10年間にわたって富山県でのフィールドワークを続けてきた財政学者の視点が興味深い。