上質な黒毛和牛をカジュアルに楽しむことを根拠に市場を席巻した「ビーフキッチン(Beef Kitchen)」。以前、恵比寿店のランチにお邪魔したことがありますが、今回は百名店に選出されている中目黒の本店にお邪魔しました。
内装はモダンでスタイリッシュ。2024年秋に大規模な改装工事を実施したそうで、地下空間にも関わらず物理的な制約を感じさせない巧みな空間設計が施されており、開放感があります。換気性能も非常に高く、煙たく雑然としがちな伝統的な焼肉店のイメージから意図的な脱却を図っています。
酒類はいずれも1杯600円前後と立地を考えれば良心的。コースを注文すれば2千円で飲み放題を付けることができるので、3杯以上を飲むのであれば飲み放題プランとするのが良いでしょう。ちなみに食事につき、我々は6,600円の「ビーフキッチンコース」をオーダーしました。
まずはナムルの盛り合わせ白菜キムチ。韓国料理店で出るそれらに比べると穏やかな味わいで、和の趣きすら感じさせます。シャキシャキとした歯触りやジュワっと広がる野菜の旨味が焼肉の箸休めにピッタリです。和牛握り。黒毛和牛をサラっと炙っており、人肌に温められたシャリの上で牛の脂がふわりと溶け出します。寿司と呼ぶにはあまりに邪道でるものの、悔しいが旨い。
合法ユッケ。肉の美味しさはもちろんのこと、醤油ベースにゴマ油とニンニクが香るソースが良いですね。卵黄のまろやかさが心地よく、ネギやゴマのアクセントも食欲をそそります。いきなりゴハンが欲しくなる。
タンとハラミ。いずれも厚切りで弾力のある食感とジューシーな旨味が特長的。細かく包丁が入っており、サクッとした心地よい歯切れを楽しむことができます。
和牛フィレ。脂は控えめで赤身の濃厚な旨味が際立つ部位であり、食感は驚くほど柔らかい。まさに「肉の女王」と呼ぶに相応しいきめ細やかな肉質です。
卵スープ。ベースは牛骨でしょうか、あっさりとしていながらも深いコクがあり、心と体にじんわりと染み渡ります。ふわっとした卵のタッチに心和みます。
サラダはチョレギ風でゴマ油ベースの味覚。シャキシャキの食感が焼肉の脂をさっぱりリセットします。韓国海苔の風味がアクセントとなり、食欲を増進させます。
シンシン。モモ肉の中心部にあたり、口当たりは柔らかく、程よくサシが入っています。肉の旨みが凝縮された上品な味わいです。
こちらはランプ。赤身の旨味が濃厚でサシは控えめ。肉本来の味わいが濃く、噛むほどに上品な旨味が滲み出ます。大判サーロインのすき焼きセット。美しいサシが入った大判のサーロインをスタッフが目の前で焼き上げてくれます。濃厚な卵黄と特製の割り下、そしてひと口ライスと共に頂きます。当然に美味しく、コースのクライマックスにふさわしいひと品です。
コースとは別にミノを注文。牛の第一胃で、サクサクとした軽い歯応えが特長的。実に神泉で臭みは一切なく、上品な脂の甘みと旨味が口の中に広がります。
カルビも追加。焼肉の王道であり、口に入れると甘く上質な脂がとろけ出しますが、決してしつこくありません。白米との相性は言わずもがな。肉々しい食感とジューシーな味わいは、焼肉の醍醐味を改めて感じさせてくれます。
〆のお食事に冷麺。〆の定番であり、コシのある細麺と牛骨ベースのスッキリしたスープが印象的。酢の酸味とキムチの辛味がアクセントとなり、サッパリとした後味です。
和牛すじカレー。和牛のスジをじっくりと煮込んでおり、スプーンでほぐれるほどトロトロに柔らかく、その旨味がルーに溶け込んでいます。スパイスの香りと野菜の甘み、そして和牛の深いコクが織りなす味わいは、専門店にも引けを取りません。客単価3万円の謎料理屋の〆のカレーと同等かそれ以上のクオリティです。
デザートにアイス最中と卵プリン。アイスは焦がしキャラメル風味であり、ところどころホワイトチョコ(?)の塊があってリズム感のある味覚。プリンは濃厚な卵のコクと滑らかな舌触りが特長で、シンプルながら奥深い味わいです。
美味しかった。旨い和牛をしっかり食べて、飲み放題を付けて1万円を切るのだから堪らない。人気が出て当然とも言える、完成された焼肉レストランでした。ちなみにビーフキッチン創業者のムッシュ大矢貴博が手掛けるハンバーガーショップ「TEDDY BROWN(テディブラウン)」も素晴らしく、そちらも併せてオススメです。
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寺門ジモン監督の焼肉映画。焼肉文化についてここまでシリアスに描けているのは監督の焼肉に対する並々ならぬ拘りに因るのでしょう。焼肉業界の有名店や有名人も沢山登場するので、焼肉通を標榜するのであれば必修科目の1本です。


















