里山十帖(さとやまじゅうじょう・宿泊)/越後湯沢

雑誌「自遊人」が2014年に開業した温泉宿。株式会社自遊人は日本橋から南魚沼に拠点を移し新潟にコミットしたそうで、廃業する温泉旅館をM&Aする縁談を秒でまとめあげました。
旅館を買ったと言ってもそのほとんどがリノベーションであり、おそらく新築するよりもコストが嵩みそうなほどの変貌ぶりです。頼り甲斐のある極太の柱の隅々にいきわたる断熱材とオシャレな家具。ここまで徹底的に哲学をはっきりさせた宿はそうありません。
我々は2階のコンパクトなお部屋にチェックイン。小さめとは言ってもその辺のビジネスホテルよりは格段に広く使い勝手も抜群。
タオルやシーツ、ルームウェアなどの肌に接する系のものに対するこだわりにも並々ならぬものを感じました。
デスク周りは無印良品的な簡素さですが取り回しは非常に良いです。アーバンな出版社がプロデュースするだけのことはあって、南魚沼という田舎ながらネット環境も最高。ただし古民家のリノベ案件であるため足音などの生活音が強く、気になる人は結構辛いかもしれません。ちなみに私は気になる人なので、滞在中のほとんどをラウンジなどの共有スペースで過ごしました。3階(最上階)の角部屋とかだったら多少はマシなのかな。
各部屋にテラスも用意されており、自然豊かな、というか自然しかない眺望が目に優しい。
おやつには地元の米を用いたおかき。冷蔵庫の飲み物は自由に手を付けてOKであり、ラウンジに置かれているお茶やコーヒーなどもタンブラーに入れて部屋までお持ち帰りOKです。
バスルームは東横インと変わらない仕様ですが、自慢の温泉を利用することが前提なのでこれで充分。何ならバスタブすら不要かもしれません。
抜群の眺望を誇る温泉(写真は公式ウェブサイトより)。その筋の人にとっては温泉そのものとしても有名であるらしく、美容液のようにツルツルとした触感がクセになる泉質です。コロナ的に人数制限はされていますが、コロナ関係なしに風呂は空いているべき存在なので、いつまでもこの仕組みを採用し続けて欲しいところ。
館内散策。コチラは当館で使用している家具や食器、リネン類などを販売するショップ。温泉旅館の土産物売り場としては世界最強のセンスの良さを誇ります。
宿泊客が自由に利用できるラウンジ兼ライブラリー。このラウンジを含め館内にはかなり値の張るデザイナーズ家具が点在しているのですが、聞けばそのそれぞれについて従業員が由来を説明してくれるのがすごく良い。思わずイスをひとつ衝動買いしてしまいました。
ラウンジはもうひとつあって、ロビーの中二階ともいうべき空中にセンスの良い空間が。従業員が愛着をもって手拭きで丁寧に掃除している姿が心に残りました。
夕方からは屋外で簡単なアルコールが無料でふるまわれます。私の乾いた心がアルコールの魔力が潤していく。
メインダイニングの「早苗饗(SANABURI)」へ。宿のコンセプトをそのまま引き継ぎ、Yeah! めっちゃヘルシィな食事を提供します。事前に連絡すれば宿泊者でなくても利用できるそうです。詳細は別記事にて
朝食も「早苗饗(SANABURI)」で。ディナーと同じくYeah! めっちゃヘルシィなのですが、朝ごはんにおけるボリューム感という意味で夕食よりも相対的に満足度は高かった。
大満足の滞在でした。とにかく「自遊人」らしいというか、確固とした信念を感じる宿づくりであり、素人には真似できないセンスに溢れた宿泊施設です。「エースホテル京都(ACE HOTEL KYOTO)」を凌駕するイマドキ感。それが築150年の古民家で成り立っているというのは痛快。それでいて押しつけがましくなくサラっとした官能に浸ることができるのがすごくいい。ただここに泊まりにくるだけの価値がある宿でした。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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