Maison de Fujii(メゾン ド フジイ)/松山(那覇)

私が沖縄において最も好きなレストランのひとつ「Maison de Fujii(メゾン ド フジイ)」。なんやかんやで2年ぶりにお邪魔します。19時一斉スタートのお店であり、その15分前にドアオープンします。
相変わらずカッコイイ店内。黒を基調としたスタイリッシュな内装であり、外苑前「フロリレージュ」をコンパクトにしたような誂えです。食事は「おまかせ料理コース」1本勝負であり、価格は5,500円と、この手のレストランとしては破格とも言える値付けでしょう。 
ワインペアリングは6杯前後登場するのですが、こちらも4,400円とビックリ価格。もちろんシャンパーニュなど高価なワインは出て来ませんが、料理ひとつひとつにピタリと合わせたワインを提案してくれます。ちなみにノンアルコールのペアリングは3,300円でした。
まずは旬のひと皿ということでトウモロコシ。ベースはトウモロコシのスープなのですが、その上にトウモロコシのアイスなども置かれており、1素材で2度美味しい。貝のタルタルもあしらわれておりお洒落な味わい。生ハムの旨味と塩気でしっかりとした食べ応え。
スペシャリテの野菜のテリーヌ。見目麗しいプレゼンテーションであり断面萌えとはまさにこのこと。旬の野菜のみを用いており野菜そのものの味が濃く、ソースも爽やかな味わいで、パンで拭って余すところなく楽しみます。
自家製・手打ちのラビオリ。中にはマスカルポーネが詰め込まれており、乳製品のコクが舌先に響きます。トッピングの夏野菜もヘルシーな味覚を演じており、パスタ料理だというのに食べる罪悪感というものを微塵も感じさせません。
お魚料理はマダイ。じっくり丁寧に火が入れられており、しっとりとした口当たりに思わず目を閉じてしまいます。ソースは2種で、ひとつは貝、もうひとつは何とマー油を用いています。言わずと知れた熊本ラーメンのアレであり、ニンニクのパンチのある香りが食欲を刺激します。
メインは鶏肉。丸々数羽焼き上げたものを本日のゲスト全員で分かち合います。こちらも時間をかけてじっくりと火を入れているそうで、レアっぽい舌ざわりでありつつもキッチリとジューシーという不思議な焼き加減です。付け合わせはミンチにしたマッシュルームにエビのソースと鶏肉には珍しい組み合わせでした。
チーズかデザートかを選択できたので、私はデザートをチョイス。まずはココナッツのムース。独特の南っぽい味わいにエスプレッソの苦みが映える。ピスタチオのオイルの風味も洒落ています。
続いてその場で作るアイスクリームに焼いたパイナップル。乳脂肪の濃密なコクにこんがりとしたパイナップルの甘酸っぱさが良く合います。仄かに香る生姜の風味も実に爽やか。
お茶菓子が凝っていて、ご夫婦ふたりだけで運営されているレストランとは思えない種類の多さです。銀座の某店などパティシエだけで6人も居り、人件費を練って焼いているようなものかもしれません。
こちらは貝殻に隠れたフィナンシェと小さなシュークリーム。併せてお茶が出され「どうぞゆっくりしていってください」という懐の広さ。お言葉に甘えて連れと談笑するのですが、その間、目の前の厨房ではシェフが翌日(?)のパスタを打ち始めるので見ていて飽きません。2回転の営業など無粋なことはしないのだ。
以上を食べ、ワインペアリングを付けてお会計はひとりあたり1万円でお釣りが来ます。ナニコレちょっと信じられない。この時の私の心境を感じ2文字で表現すると「賛美」であり、こういう洒落ていて、きちんと美味しくて、1万円を切るというお店は日本全国いや世界中を探してもかなり珍しいはずです。加えて料理の内容はしょっちゅう変わるそうで、近所にお住まいの方は毎月訪れても飽きさせない懐の広さがあります。ああ、近所に住みたい。ああ。

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