ビストロ バー ア ヴァン コダマ(Bistrot Bar a vin Kodama)/渋谷

骨太で本格的なフランス料理と豊富なワインリストでコアなファンを維持する「ビストロ バー ア ヴァン コダマ(Bistrot Bar a vin Kodama)」に、2年ぶりにお邪魔しました。渋谷から宮益坂を登り切ったあたりに位置します。
店内はカウンター席とテーブル席があり、1〜2名でも利用しやすい雰囲気。ワインを飲むことが前提の店であるため、良く飲み良く食べるゲストにフィルタリングされており、みんな仲間な雰囲気に満ちています。
予約の電話口で「ワインは飲まれますか?」との確認が必ず入り、ノンアルコールはおろかビールすら認められません。これは決して排他的な選別ではなく、店のコンセプトや世界観を最大限に共有できる顧客を招くための誠実なフィルタリングであると解釈しましょう。ワインの殆ど(全部?)はフランス産で、8千円台~青天井と幅が広いリストです。
サバのエスカベッシュ。脂の乗ったサバを揚げ、酢と香味野菜の漬け汁に浸した地中海沿岸の料理。日本でいう「南蛮漬け」に近い調理法であり、脂の乗ったサバの強烈な旨味を、ビネガーのキリッとした酸味が引き締めています。
マグロのコンフィのサラダ。南仏の定番「ニース風サラダ」の構成要素をベースにしつつ、マグロを前面に押し出したひと皿。オイルで低温調理(コンフィ)されたマグロはシットリとしていて旨味が逃げておらず、ホロホロと崩れる絶妙な食感。そこに塩気の効いたアンチョビ、ブラックオリーブ、トマト、ゆで卵が加わることで、酸味・塩味・甘味のバランスが整います。
ナスのキャビア仕立て。ナスをじっくりと焼き、ペースト状にしてハーブやオリーブオイルで調味した南仏プロヴァンス地方の伝統料理です。キャビアのような見た目と濃厚な食感からこう呼ばれるそうです。ナスの凝縮された甘みと香ばしさにブッラータを大胆に合わせており、ナスのトロッとした舌触りとブッラータから溢れ出るミルキーなクリームが口の中で調和する。
パテドカンパーニュ。粗目に仕上げられており、レバー特有の濃厚なコクと脂の甘みがスパイスの香りと一体化。臭みを感じさせず、むしろワインを呼ぶ力強い味わいになっています。素朴で質実剛健なひと品です。
アンディーブとハムのグラタン。冬の家庭料理の定番であり、独特のほろ苦さを持つアンディーブをたっぷりのベシャメルソースとチーズで楽しみます。熱で苦味は和らぎ甘みに変わり、ハムの塩気と合わさることで複雑で奥深い味わいに。リッチな白ワインによく合う。
牛のバベットステーキ。ハラミに近い部位で繊維質で噛みごたえがあり、噛めば噛むほど赤身肉の強い旨味が溢れ出します。鉄の風味がエシャロットの酸味と絡み合い華やかな味わい。ビストロの真骨頂とも言える肉料理です。
〆にカスレ。フランス南西部の郷土料理であり、白インゲン豆とお肉を鍋で煮込んだボリューム満点のひと品。お肉は豚肉のソーセージと鴨肉で、肉のエキスが白インゲン豆のひと粒ひと粒にまで染み渡っており重厚オブ重厚。冬のフランス料理の醍醐味だ。
デザートにクレームブリュレ。スプーンでカツカツと叩いてカラメルを割ると、中からはバニラの香りが漂う濃厚なカスタードクリームが登場。焦がした砂糖のほろ苦さとジャリッとした食感、そして卵と生クリームのコクが凝縮されており、当店らしい濃厚な締めくくりでした。
以上を皆でシェアしながら食べ、ひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり2万円弱。ただしこれは高めのワインを楽しんだ結果であり、手頃なボトルもしくはペアリングプランなどを選択していれば1.5万円程度に落ち着くでしょう。全体的に茶色なビストロ料理が続くので、インスタ映え命なアッパラパーが居ないのがいいですね。美食家でなく食いしん坊。良く飲み良く食べる仲間たちと一緒にどうぞ。

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