ラ メゾン フィニステール(La maison finistère)/恵比寿

恵比寿駅東口から徒歩7~8分の交差点そばにある「ラ メゾン フィニステール(La maison finistère)」。1階の飲食店がどうしても目立ってしまいますが、脇の階段から2階に上がります。
木の温かみがある落ち着いた雰囲気の店内。テーブルが2つ(?)にカウンターのみと席数は少なく、ソムリエでもある店主がワンオペで気炎を吐きます。

沖知充シェフはブルターニュ地方を中心にフランスで長く経験を積み、帰国後は六本木「マクシヴァン」で料理長を務めた後、2017年に当店をオープン。店名はブルターニュの地名なので、ブルターニュに係る思い入れが最も強いのでしょう。
アルコールは高くなくビールなどは千円を切り、最も安いシャンパーニュは7千円台、グラスワインも千円台です。後述しますが、このクオリティの料理を出すお店でこの酒代は良心的。飲みましょう。
アミューズは馬刺しのタルタルに細かく削った秋トリュフ。なんて豪華な。パルメザンのチュイル(パリパリ)を砕きながら力強い味覚を愉しむ。この時点で今夜の勝利を確信しました。
カリフラワーのブルーテ(どろどろソース)に甲殻類の風味を詰めたジュレ。トップにはキャビアをあしらいます。カリフラワーの土臭い甘さに甲殻類の強烈な旨味が鳴り響く。もうこれだけでも悶絶するほど美味しいのに、中には甘海老のマリネがたっぷりと。この旨さはほっぺたがいくつあっても足りません。
フォアグラのテリーヌにはパースニップ(白いニンジンみたいな根菜)を忍ばしているのが面白い。フォアグラの味覚も決していやらしくなく必要十分といったコクであり、トリュフの香り、ジュレの旨味と共に完成された一品です。ブリオッシュもすごくいい。
天然酵母の自家製パンも真っ向勝負の美味しさ。AOCイズニーの発酵バターにも良く合う。先のブリオッシュにせよ後述の焼き菓子にせよ、こういった焼き物まできちんと手が回るのはすごいなあ。
つぶ貝とホタテの組み合わせ。つぶ貝のコリコリとした触感と帆立のスっとした歯触りの対比が面白く、たっぷりのお野菜と共に生活に潤いを与える味覚です。
お魚はアンコウ。淡白ながら力強いマッチョな味わいであり、お隣に添えられた焼き牡蠣で旨味を補強します。底には白菜がたっぷりと敷かれており、優しい冬の味わい。
メインはエゾジカのロース肉のローストと煮込み。まずはローストでムキっとした味覚を楽しんだ後、煮込みの凝縮感あふれる旨味を堪能します。トリュフが練り込まれたジャガイモのピュレが良く合い、また、付け合わせのお野菜も手抜き無しに美味しい。
オマケでスジ?脂身?の部分にたっぷりとトリュフを削って頂けました。私はツマミであると主張する深い味わいであり赤のワインがビタりとハマる。
デザートはヴァローナ社の濃いめチョコを用いたガトーショコラに栗の渋皮煮ならびにマロンアイスクリーム。サラっと出していますがデザートとしてこれはちょっと類のない美味しさであり、シェフは料理人だけでなくパティシエやショコラティエとしても大成したのではあるまいか。
小菓子についても一切の手抜き無し。ごちそうさまでした。
一通りを食べ、ふたりでシャンパーニュ1本飲んでグラスはそれぞれ1杯飲んで、お会計はひとりあたり2万円と少し。ワオ!これはお値打ち!

ホニャララの再構築です的な瞬間芸には甘えず、まずは素材。続いてバターやクリーム、しっかりしたソースを主力においた正真正銘のフランス料理であり、まさに王道と呼べる美味しさです。最近のチャラチャラした自称フランス料理とは一線を画す硬派な味わい。量もたっぷり。オススメです。

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