レストラン ウオゼン(Restaurant UOZEN)/燕三条(新潟)

縦に長い新潟県のど真ん中、三条市。新幹線の燕三条駅から車で20分ほどの場所にミシュラン2ツ星「レストランウオゼン(Restaurant UOZEN)」があります。「本当この道であっているのか?」と不安になるほど田園風景に溶け込んでいます。駐車場は4~5台ほどなので、みんなで乗り合って訪れましょう。
シェフの奥様の日本料理店「魚善」の建屋と看板を引き継ぎつつ、地産地消を軸に置いたコンテンポラリーフレンチを提供するレストランとして大改装。

井上和洋シェフは香川県出身で、大学卒業後に「KIHACHI」で経験を積み、池尻大橋に「HOKU」をオープン。連日満席の大人気店となりましたが2013年に閉業し三条に転戦。現在は自家菜園で野菜を作りつつ、魚を釣ったり猟に出たりと田舎に来たのに大忙しの毎日です。
私は運転があったのでノンアルコールビール。新潟のノンアルコールビールって初めて見たな。ちなみに連れは遠慮という単語から程遠い場所で自由にワインを楽しんでおり、それでも1杯千円かそこらという値付けだったので、アルコールに対して懐の深いお店なのでしょう。
ずらりと並ぶアミューズ。イノシシの頭蓋骨に乗るのはイノシシのリエット(だっけ?)。玉ねぎのマカロンやチョリソを詰め込んだ甘長唐辛子、ジビエを多用したアメリカンドッグなど、この店はちょっと普通じゃないぞと初っ端から感じさせてくれます。
スペシャリテの「佐渡産ボタン海老のブイヤベース仕立て」。どこがブイヤベースやねん、と思わず立ち上がりたくなるほどの外観。パピコのようなサイズ感のボタンエビに、固めたコンソメを巻きつけ、ソースやハーブで彩りを添えます。これがもう、バカみたいに旨くって、しかもしっかりブイヤベース的な味わいも楽しむことができ、世紀の傑作として大英博物館に展示したいほどです。ソースはルイユ(ブイヤベースに用いるニンニク風味のやつ)になっているのも心憎い。
これは肉か?と訝しげに説明を求めると、なんとシェフが釣ってきたクロマグロとのこと。え?マグロって人間が釣れるの?わけわかんない。その大トロの部分をマリネして、ああ、どうしたことでしょう、これが信じられないくらい美味しいのです。ちなみに当該マグロはイワシを捕食している最中であり、せっかくなのでソースはイワシを用いたものとのこと。どんなせっかくやねん。
こちらは先のマグロの胃袋。ゴリゴリむしゃむしゃと力強い食感であり口の中が楽しい。ブラインドで食べれば牛肉か何かと間違う程の食べ応えでした。
佐渡のバターを新潟の形にくり抜いて。きちんと佐渡も用意されているのが洒落ている。自家製のパンは素朴ながら力強い味わいであり、パンとバターと塩、それだけで全然いけちゃう品質です。
ヤマメはたっぷりとハーブを散らしガレット(蕎麦粉のクレープ)で包み込んで北京ダックのようにかぶり着く。うーん、デリシャス。「オトワ レストラン(Otowa restaurant)」のヤマメのタルタルにも度肝を抜かれましたし、塩焼き一辺倒の日本料理勢は今一度、ヤマメという食材のポテンシャルについて再考すべきだと感じました。余計なお世話ですかそうですか。
ツキノワグマ。森の美食家たるクマの風味はどこまでも澄んでおり、その脂はフルーティーにすら感じます。肉も美味しいですが、そのコンソメも絶品。
お魚はキジハタ。いわゆる高級魚ですが、かなり気前の良いサイズ感。キジハタをこんなにムシャムシャ食べることなど無かろう。ソースも凝っていて、トマトを発酵させた(?)ソースにフキノトウなど、山海の珍味を凝縮した逸品です。
地元の黒アワビをシヴェで。シヴェとは赤ワインと動物の地で煮込む調理法なのですが、当店はブルターニュもかくやという魚介類で攻めてきます。アワビ特有のムッチリした食感に、肝が溶け込んだソースが乙な味。ワインと共に楽しめなかったのが悔やまれる。
メインはイノシシのロース肉。もちろんシェフが仕留めて来た個体であり、香りが良く力強い味わいの赤身肉を、その肉汁のソースと共にパワフルに楽しみます。まさに山に抱かれたような豊かな味わい。
デザート1皿目はキウイ。キウイのアイスにそのソース。アクセントに自家菜園のキュウリの花を添えているのが面白い。
メインのデザートはリオレ。米を牛乳で炊く素朴な甘味なのですが、その米はコシヒカリ、丁寧に炊かれたルバーブ、地元のイチゴをたっぷり用いたソースなど垢ぬけています。
ミニャルディーズも凝っていて、濃厚なプリンやホワイトチョコを纏ったわらび餅など、これらをそのまま大きくすれば主役を張れるクオリティです。
フレッシュなハーブティーで〆。ごちそうさまでした。お会計はひとりあたり1.7万円。運転があって私は飲まなかったことを差し引いても実に尊い費用対効果です。

コスパはさておき食事だけをとってみても、地元の食材を多用し前衛的にしてクリエイティブな作品の数々は、グルメを自称するならば必食のコースと言えるでしょう。キャビアやウニ、トリュフなんかでお茶を濁さないのがすごくいい。いくつか値幅がありますが、位置的にそうそうお邪魔できるレストランではないので、是非とも最高値のコースを注文しましょうね。

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