沖縄の「みそ汁」と内地のそれは、もはや同じ名前を持った別の料理と言っても過言ではありません。最大の違いは食卓における立ち位置にあります。内地ではご飯の横に添えられる脇役の汁物ですが、沖縄では大きなどんぶりで供される主役のオカズです。定食屋で「みそ汁」を注文すると、それだけでお腹がいっぱいになる立派なメインディッシュとして登場します。
中身のボリュームも圧倒的です。島豆腐を中心に、三枚肉やポーク(ランチョンミート)、かまぼこ、青菜などの具材がこれでもかと詰め込まれ、仕上げに生卵が落とされるのが沖縄の定番。出汁もかつお節だけでなく豚肉の茹で汁をベースにした力強いコクが特徴で、具材から溶け出した旨味と相まって濃厚な味わいを楽しめます。
内地のみそ汁が香りと出汁を啜るものなら、沖縄のみそ汁は栄養満点の具をガッツリ食べるスープ料理。まさに、沖縄のチャンプルー文化を汁物に凝縮したような、エネルギーあふれる郷土の味といえます。
この日は西原町にある有名な豆腐店「玉城豆腐」との共同開発により爆誕した「玉城豆腐のみそ汁屋(たましろどうふ)」にお邪魔しました。朝から昼にかけては定食メニューが中心で、夜は「玉城豆腐のしゃぶしゃぶ屋」として豆乳出汁のしゃぶしゃぶを提供する二毛作スタイルです。
店内はカウンター席が中心で、2人掛けのテーブル席が少し。沖縄の伝統的な定食屋のイメージを覆す、オシャレなラーメン店のようなインテリア。女性おひとりさまでも入り易い雰囲気です。私は「ゆし豆腐」と「みそ汁」のコラボ商品である「みそゆし」を注文。大サイズで1,050円です。 小鉢として「クーブイリチー(刻み昆布を豚肉などと炒め煮にした郷土料理)」や「ニンジンしりしり(人参の卵炒め)」も添えられます。
主題の「みそゆし」。味噌は琉球王朝末期の安政年間(1855年~1860年頃)に創業した「玉那覇味噌醤油」謹製。かつて琉球王家御用達でもあった格調高いものであり、カツオ出汁の風味を消さず、大豆のコクを豊かに引き立てます。具材はゆし豆腐にポーク、タマネギ、小松菜、温泉卵などでしょうか。まさにオカズとしての味噌汁です。
ちなみに「ゆし豆腐」とは豆乳にニガリを加え、型に入れて固める前のふわふわとしたおぼろ状の豆腐のこと。型押しをしないため水分を多く含み、口の中でとろけるような柔らかな食感と、大豆本来の豊かな甘みを楽しむことができます。これが野菜の甘味が溶け出した味噌スープに良く合う。
白ゴハンは中々の盛り込みであり、味噌汁と合わせて食べるもよし、温泉卵を移して卵かけごはん風に楽しむもよし。卓上には辛味噌やキムチだれ、出汁醤油の用意もあります。ちなみに「ゆし豆腐」にキムチだれを加えると、オーナーの出身校である沖縄水産野球部寮の味になるそうです。
朝からすっかり大満腹の大優勝です。おもろまちの「SOUP SOUP(スープスープ)」でも感じましたが、沖縄は汁物に対する情熱が強いのか、内地の「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」の3倍ぐらいの食べ応えがありました。沖縄スタイルの味噌汁を試してみたいものの、地元色の強い定食屋に入るのはちょっと、といった繊細な観光客のゲートウェイに最適です。
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