歴史ある商業都市、堺において1952年の創業以来、地域住民のライフイベントに深く根ざした象徴的装置として機能している「南海グリル(なんかいグリル)」。堺市民の間では家族の記念日や接待に利用されることの多い定番の鉄板焼きであり、食べログでは百名店に選出されています。
風雲たけし城のような「ポール ボキューズ」を想起させるエクステリアですが、内装もそれを引き継ぎ、異国情緒と日本の伝統を融合させた、とりとめのない状況です(写真は食べログ公式ページより)。ただ、堺市内に複数店舗を有し、そのいずれもが似たような内外装なので、きっと意図してのことでしょう。
酒が安い。ビールやワインなどはグラスで700円かそこらであり、クラフトビールの「宮崎ひでじビール」ですら千円を切ります。ところで当該ビールは「鮨料理 一高(いちたか)」において1,200円→1,320円→さらに別途消費税10%という謎課金をされた苦い記憶を思い出させる。あがりは1杯千円だった。お通しにパストラミ(?)に何かのペーストが載ったクラッカー。味わいはご覧の通りですが、5千円を切る最安値ランチに付随するものと考えれば悪くありません。ひでじビールがよく進む。あがりは1杯千円だった。
野菜とキノコのクリームスープ。野菜の優しい甘みとキノコの芳醇な香りが支配的で、クリームのドッシリ感が全体を下支えします。量がたっぷりで身体が温まる。
4,500円の「鉄板焼おすすめランチ」では肉が120グラム用意され、ステーキタイプの肉とダイスカットされた肉を半々で楽しむことができます。調理において炎を上げるフランベの工程があり、視覚的なハイライトと言えるでしょう。
肉が焼きあがるまではサラダで胃腸を整えます。特筆すべきは鮮やかなオレンジ色の自家製「すりおろし野菜ドレッシング」の存在。野菜の瑞々しさとドレッシングのコクが一体となり、ランチのオマケの域を超えている。
こちらはステーキタイプの肉。断面から溢れ出る肉汁は鉄板に敷かれた食パンが受けとめるという面白い仕組みです。味わいにつき、流石にブランド牛のそれには遠く及びませんが、価格を考えれば充分な美味しさでしょう。
肉汁を活かして炒めた焼き野菜。特にナスが様々なエキスをたっぷりと吸い込み、噛むとトロリと溶けるようなジューシーな仕上がりで美味。モヤシも水分が逃げておらず、シャキシャキとした小気味よい食感が際立ちます。
こちらはダイスカットされたパートですが、これがなかなか、いや、かなりの美味しさです。カリッとした表面と中の柔らかさのコントラストが心地よく、上質な脂の甘みが口いっぱいに広がります。
さて、気になる下に敷かれていた食パンの行方ですが、こちらは〆に鉄板でたっぷりのバターと共に焼き上げます。溢れ出た肉汁と脂を余すことなく吸収しており、美味しくないはずがありません。表面はバターでの揚げ焼きのようにカリッと香ばしく、中は肉の旨味が染み込んでジュワッとした食感。噛み締めるたびにバターのコクと牛の甘みが背徳的なまでのハーモニーを奏でます。単なる食材の再利用を超えた、当店独自のシグネチャーディッシュと言えるでしょう。
〆のお食事は定番のピラフ(鉄板上で炒めるライス)やお茶漬け、茶そばのほか、600円の追加料金でミニローストビーフ丼も選択することができます。丁寧に炊かれた白ゴハンの上にロゼ色に仕上げられたローストビーフが並べられ、ステーキとはまた異なる、しっとりと吸い付くような肉の柔らかさと凝縮された赤身の旨味を楽しむことができます。
デザートはラウンジへと場所を移して楽しみます。鉄板焼き特有の熱気や匂いからゲストを解放し、食後の余韻を静かに楽しませるホスピタリティの表れであると同時に、高単価な鉄板席の回転率を高めるオペレーション戦略でしょう。「うかい亭」もそうですが、様々な鉄板焼屋が採用しているこのスタイルの起源は当店ではないかと私は睨んでいます。なお、根拠は何もない。
ベースとなるコースが5千円を切り、酒やローストビーフ丼の追加を含めてお会計はひとりあたり6-7千円といったところ。ホテルの鉄板焼きの半額近い価格設定であり、「鉄板焼 朝日(あさひ)」に比肩する費用対効果です。模倣困難な独特の空間資産に加え、フランベやトーストなどの儀式化された体験も印象的で、リピートを誘発する強力なフックとなっています。次回は夜に、7-8人のグループでお邪魔してみたいなあ。
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- ピーター・ルーガー(Peter Luger Steak House)/Brooklyn(NY) ←王者の貫禄。
- Peter Luger Steak House Tokyo(ピーター・ルーガー)/恵比寿 ←日本人の丁寧気質が力を発揮。
- CHACOあめみや /千駄ヶ谷 ←東京でも屈指の老舗ステーキハウス。
- トラットリア グランボッカ/飯田橋 ←サイドメニューはイマイチだけど、肉がとにかく旨くて安い
- トラットリア タンタボッカ/北参道 ←A5和牛のシキンボ200g。USリブロース500g。
- CarneSio east(カルネジーオ イースト)/恵比寿 ←なんて素晴らしい費用対効果なのでしょう。
- ルビージャックス/六本木一丁目 ←店員と恋に落ちるステーキ。
- BLT STEAK ROPPONGI/六本木 ←噛み締めるたびにミートの旨味がぽぽぽぽーん。
- ウルフギャング・ステーキハウス/六本木 ←ハンバーガーは都内随一!













