ルアンパバーンの中心街から川を隔てた対岸、隠れ家のような立地で愛される「Dyen Sabai Restaurant(ディエン サバイ レストラン)」。目の前を流れるナムカーン川は、季節によって水位が数メートルも変動するため、通年使える低い橋を架けることができません。そのため雨季が明け、水が引くのを待って現れるのが、地元住民の手による「竹の橋」です。釘やコンクリートの基礎を一切使わない伝統工法で、毎年この時期だけ架け直される儚くも美しい橋。その橋を渡るアプローチから、この店での特別な時間は始まります。
ちなみに私は当店から歩いて5分の「THE APSARA RIVE DROITE(ジ アプサラ リヴ ドロワト)」に滞在していたので、橋そのものは渡っていません。知ったような口を聞いてすみません。私の悪いところです。本当にごめんなさい。
通されたのはナムカーン川を見下ろすテラスの特等席。眼下では10名ほどの女子会が繰り広げられており、その光景が実に興味深い。お国柄(?)なのか、これだけの人数が集まっているにも関わらず驚くほど静か。黄色い歓声が飛び交うわけでもなく、皆、黙々とセルフ調理と飲食に没頭しています。彼女たちが真剣な表情で向き合っているのは「シンダート」。ラオス全土で愛される、焼肉と鍋が一体となったハイブリッドな国民食です。
酒は安く1本2百円かそこらです。19時まではハッピーアワーが開催されており、何かお得な出来事があるようですが、(為替の都合上)そもそもが高く感じないので、気にせずジャンジャン飲みましょう。私のお気に入りは「ビアラオ IPA」で、欧米のIPAほど苦味は強烈ではなく、シトラスやトロピカルフルーツの華やかな香りが広がります。
ツマミにカイペーン。メコン川の恵みである川海苔を揚げたものであり、パリパリと思いきやシットリとした口当たりが印象的。後述するカオニャオと併せて食べれば海苔弁を延々と食べているような気分を味わえます。
青パパイヤのサラダ。ラオス料理の醍醐味である甘味・酸味・塩味・辛味の全てが複雑に絡み合った、刺激的かつ奥深い味わいのひと皿。魚礁で調味しているのか、魚介由来の独特の濃厚なコクと塩気が感じられます。辛さ控えめなのは外国人観光客が多いお店だからでしょうか。
ナスの豚肉炒め。ナスは炒めることでトロトロの食感になり、豚肉から溶け出した脂の甘みと濃厚な旨味をスポンジのように吸い込んでいます。日本の食堂で出してもすんなり受け入れられそうな味わいです。
脂肪分が少なく高タンパクな水牛の赤身肉を、たっぷりの生姜とオイスターソースで炒めたひと品。一般的な牛肉よりも筋肉質で弾力があり、噛みしめるほどに赤身特有の濃厚な旨味が溢れ出します。そこに生姜の爽やかな辛味と香りが効くことで、肉の野性味が和らぎ、後味はさっぱりと仕上がっています。これはあれだ、生姜焼きだ。やはり日本の食堂で出してもすんなり受け入れられそうな美味しさです。
なお、これまでの料理は全て「カオニャオ」と合わせて頂きます。日本の餅とは異なり、米粒の形と食感がしっかり残すスタイルであり、モチモチとした噛み応えが特長的。噛むほどに素朴で力強い甘みが広がり、料理の旨味と一体化して美味しさを引き上げます。
以上を2人でシェアし、軽く飲んでお会計はひとりあたり2千円ほど。何か計算が間違っているんじゃないかと確認するほどの費用対効果の良さであり、胃袋が無限であれば全種類の料理を試していたことでしょう。観光客向けに洗練されつつも、ラオスの食文化の芯を食った味わい。街の喧騒を離れ落ち着いたディナーを楽しみたい際は是非どうぞ。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。








