食鳥 伍ノ捌(しょくちょう ごのはち)/牛込柳町

丸鶏のライブ解体で耳目を集めた「食鳥 伍ノ捌(しょくちょう ごのはち)」。場所は牛込柳町駅すぐの雑居ビル2階であり、通りがかりの酔客ではなく目的を持って来店するゲストをターゲットとした、面白いコンセプトの鶏料理専門店です。
店内は15席ほどのコの字型カウンターのみ。中央は料理人のステージであり、こちらで丸鶏の解体ショーを観ることができます。視線が自然と中央の手元に集まることで会話の沈黙が気にならないのが良いですね。他方、焼き上げた鶏肉をまな板で切って端から順々に提供していくので、後の方に提供されるターンは肉が冷めてしまうのが難点です。
生ビールは千円を切り、グラスワインは1杯千円と明朗会計。この手のレストランとしては悪くない価格設定です。
アミューズは小さなおせち料理のように彩り豊かで美しい盛り付けが目を引きます。とりわけ里芋の揚げ物が旨く、歯を入れるとサクッとした食感の後に、里芋特有のねっとりとした甘みが口いっぱいに広がります。
モモ肉の炭火網焼き。地鶏の王道とも言える「比内地鶏」と、奈良の銘柄「大和地鶏」の食べ比べです。前者は押し返してくるような強い弾力が特長的で、後者は上品で甘みのある脂が舌の上で優しく溶けていきます。
お椀には石川県特産の「加賀丸いも」を用いています。ふわっとしていながらも、もっちりと吸い付くような独特の食感。鶏肉のエキスも効いており、柚子の皮由来の香気がさらに食欲をそそります。
比内地鶏のササミ。中心部をレアに保つ火入れにより、しっとりとした滑らかな舌触りと、モチモチとした肉質の良さが際立ちます。淡泊な中にも密度の高い旨味が凝縮されています。
大和地鶏の胸肉と脇腹。前者はしっとりと水分を保ったまま焼き上げられ、パサつきとは無縁のシルキーな口当たり。後者はジューシーな脂が秀逸で、筋肉質な赤身とのバランス感覚がすごくいい。
レバーパテ。特有の臭みや鉄っぽさは一切なく、純粋なレバーの濃厚なコクとクリーミーな甘みだけが抽出されています。赤ワインを注文だ。
箸休めセット。とりわけ鶏皮ポン酢が素晴らしく人生で一番の鶏皮かもしれません。表面はカリッと香ばしく、噛めばクニュッとした心地よい弾力があり、そこから上質な脂の甘みが溢れ出します。合わせるポン酢も酸味が尖りすぎず、鶏皮の脂と混ざり合うことでまろやかなソースへと昇華しています。
比内地鶏の手羽先は揚げて楽しみます。高温でカラリと揚げられた皮はパリパリと小気味よい音を立て、その内側にあるコラーゲン質が熱でトロトロに溶け出しています。旨味も強く揚げ油の香ばしさと相まってパンチのある味わいです。
こちらは軍鶏。低温の油でじっくりと煮込まれた砂肝のコンフィは、軍鶏特有の強靭な筋肉質を残しつつも、歯切れの良いしっとりとした柔らかさに仕上がっています。対するレバーは、ねっとりと濃厚で、コンフィとは異なるベクトルで舌に絡みつきます。こちらも赤ワインが良いですな。
膝。この部位の醍醐味は何と言っても複雑な食感にあり、コリコリとした軟骨の歯ごたえ、その周囲を取り巻くゼラチン質のねっとり感、そして運動量の多い筋肉の旨味に舌鼓。表面の脂が焦げて燻製のような芳香を放っているのも良いですね。
せり鍋。シャキシャキとした茎の食感と、土の香りを纏った根のほろ苦さが濃厚な鶏スープの良いアクセント。鶏肉も程よい弾力を保っており、せりの清涼感と共に滋味深い味わいに。
ラスト一品はお品書きの中から好きなものを選ぶことができ、私はソリレスを注文。皮目はパリッと焼かれ、肉質はモモ肉以上に筋肉質でありながら実にジューシー。コースの最後を飾るにふさわしい、比内地鶏のポテンシャルを一点に凝縮したような味わいです。ちなみにここからアラカルトでの追加注文もOKとのことでした。
以上を食べ、ジャンジャン飲んでお会計はひとりあたり1.3万円。料理の美味しさや量を考えれば良心的な価格設定でしょう。

ところで、目の前で捌くという演出は確かに興味深いですが、冷静に考えれば仕込みのプロセスを公開しているだけとも言えるので、過度な神格化は避けたいところです。 鮨屋文化を持つ我々日本人にとって、このライブ感もいずれは当たり前のものとなるおそれがある。物珍しさが一周した時に当店がどう評価されるのか。真の勝負所はそこにある気がしました。

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素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。