浪速割烹 昇（なにわかっぽう のぼる）／梅田

梅田スカイビルや再開発が進むうめきたエリアのすぐ隣にありながら、隠れ家のようにひっそりと暖簾を掲げる「浪速割烹 昇（なにわかっぽう のぼる）」。ミシュランでは1ツ星を獲得しています。
一軒家を改装した店内。1階のカウンター席では料理のライブ感を楽しむことができ、2階にはプライベートな時間を約束する個室が用意されています。落合昇シェフは「𠮷兆」の流れを汲む「懐石料理 桝田」や「浪速割烹 喜川」で腕を磨いたのち、当店を開業しました。
飲み物につき、一般的なビールは千円を切り、ボトルのワインも5千円程度～と良心的な価格設定。私は日本酒をお任せで頂き結構な量を楽しんだのですが、思いのほか安く済んだなという印象です。
まずはイチヂクと毛ガニ。旬の甘く熟したイチヂクの柔らかな果肉と、繊細で上品な甘みを持つ毛ガニのほぐし身を合わせており、脂の重さを感じさせず上品に喉を通ります。甘さと旨味のハーモニーが心地よく、コースの幕開けにふさわしい爽やかな余韻を残します。
雑炊（？）にタコ。柔らかく、それでいて弾力のあるタコからはの濃厚な旨味が溶け出しており、そのエキスが米のひと粒ひと粒に染みています。
軽く炙ったマナガツオ。脂の乗った身からは香ばしいかおりが感じられ、刻んだラッキョウのシャキッとした酸味と辛みがアクセントに。計算された味の対比が楽しめるひと皿です。
お造りはコチ、ハモ、マグロ。チの白身は繊細な甘みと弾力、ハモの夏の名残のような透明感ある食感、マグロの赤身の濃厚な旨味が、醤油とわさびのシンプルな引き立てで輝きます。
お椀はカマスにマツタケ、ゆり根。蓋を開けた瞬間に立ち上る秋の味覚の王様の豊潤な香り。カマスの白身から溢れる旨味が出汁に溶け込み、深い味わいを生み出します。そこに、ほっくりとした食感と優しい甘みを持つゆり根が加わり、日本の秋の美しさと豊かさを感じることができる逸品です。
季節の美味を少しずつ盛り込んだ、目にも美しい八寸。とりわけ名残の鮎と新モノのイクラが素晴らしく、季節の変化をまるごと味わうような、日本に生まれ育ったことを感謝する味覚です。
手渡しで北京ダックのような巻物（？）が登場しました。脂の乗った旬のサンマが包まれており、燻製により凝縮された旨味とスモーキーな香りを楽しむことができます。タレは思い切りの良い強さであり、コースのアクセントとなる独創的な料理です。
高級食材の豪華共演。プリプリとした食感で甘みの強い伊勢海老の身の上に、濃厚でクリーミーなウニをたっぷりと乗せて焼き上げました。伊勢海老の旨味とウニの甘みが、熱が加わることでさらに凝縮され、口の中に至福の味わいが広がります。ウニとエビは全てを解決する。
揚げ物。八幡巻き（ゴボウに煮付けたアナゴを巻きつけた料理）を揚げており、全体として土っぽく迫力のある味覚。添えられた銀杏のモチモチがあるブツも滋味あふれる味わいで、秋の深まりを感じさせる多層的な味覚のひと皿です。
こちらも秋の魅力が全開のひと品。発酵キノコの湯葉巻きに蒸しアワビと焼きマツタケをのせて楽しみます。アワビのプリッとした甘味の後から多種多様なキノコの風味が追いかけてきます。迫力あるなあ。
お肉に松茸。上等な和牛は実に清澄で、牛のエキスを用いたソースと共に繊細な味わい。仕上げに、秋の香り高い焼きマツタケが添えられ最強可愛い。これぞ日本の肉料理とも言うべきひと品です。
お食事は白ゴハンに焼き鮭、お椀にお漬物。艶やかでひと粒ひと粒が立った炊き立てのご飯から立ち上る甘い香り。焼鮭の身はふっくらとしており、その絶妙な塩気とじゅわっと溢れる脂の旨味が、ご飯の甘みを最大限に引き立てます。日本の食の原点とも言える究極の調和がここにあります。
デザートはきなこアイスにシャインマスカット。どこか懐かしい風味のきなこをふんだんに用いており、そこに弾けるような食感のシャインマスカットが寄り添います。
カステラとお茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上を食べ、しっかり飲んでお会計は3万円強。季節の豪華な食材を腹いっぱい食べてこの支払金額は実にお値打ち。なお、これは最高値コースでの結果であり、ランチだと7千円、ディナーでも14,000円から楽しめます。上質な料理と酒を肩肘張らずにのんびりと楽しむ。東京の何回転もする給食みたいな和食とはダンチの食後感でした。

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