比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀)

京より奥へ、更に奥へ。延暦寺の向こう側、びわ湖バレイの裏っかわ辺りにある「比良山荘(ひらさんそう)」。食べログ4.52でゴールドメダル獲得(2020年10月)と、色々と神格化されがちですが、私は普通に電話してサクっと予約できました。

ネット上の情報では「京都市内からタクシーで40~45分」と紹介されることが多いですが、京都市内と言っても広いのでご注意を。私は京都駅裏手にあるレンタカー屋から安全運転で75分も要しました。
バリっとした日本建築であり、窓から望む庭園ならびに山の景色が素晴らしい。伊藤剛治シェフは三代目。生まれも育ちも比良山荘であり、彼の代で鮎から熊へと食材の幅を大いに広げました。
ウェルカムどくだみ茶でお食事が始まります。私は運転があるので終始温かいお茶で通します。
生の柿の白和え(?)でしょうか、シンプルな料理ながらしみじみ旨い。ギンナンやキノコも質の高さを伺わせる風味であり、最初の第一歩からおおっと思わせる味覚です。
子持ち鮎のなれずし。「徳山鮓(とくやまずし)」もそうですが、このあたりは発酵食品文化圏。当店の得意とする食材のひとつ、鮎もなれずしに。ああ、日本酒が飲みたい。
鯉の子、ハルコ(アマゴの稚魚)、マツタケ、ミブナ、ムカゴ、岩魚の押し寿司。東京ではあまり見かけることのない食材のオンパレードであり、ずいぶん遠くまで来たなあとしみじみします。ベタですが松茸を煮たやつが旨味たっぷりであり、ああ、日本酒が飲みたい。
マツタケの土瓶蒸し。超高級食材であるはずのマツタケがシメジの勢いで放り込まれています。香りで美味しく、味も良し。ギンナンのホックリとした味覚もグッド。
手前はウナギの焼霜、奥は鯉のお刺身です。ウナギの旨さがやばたんまる。ムッキムキのマッチョな個体であり、バリっと炙った香ばしい風味に強い脂の味覚が堪りません。同じ滋賀の「う晴(うはる)」の鰻料理も奇蹟の逸品ですが、それとはまた違ったベクトルの素晴らしさがありました。鯉のお刺身も同じくマッチョな仕様であり、どちらかというと臭味が強めな食材ですがそれを一切感じさせないクリアな味わいです。
鮎の塩焼き。京都の旦那衆や芸子衆がわざわざ訪れ名を馳せた当店のスペシャリテです。なるほど旨い鮎である。シンプルな塩味。ちょうどこの日は浜崎あゆみが第2子を身ごもったとの報道があった日なので感動もひとしおです。
続いて鮎の香味焼き。鮎と言えば塩焼きベースなことが多いですが、こちらは醤油でサラっと炙っており、おおー、素朴ではありますが斬新な味覚です。
スペシャリテ、続く。服部幸應に「最後の晩餐で食べるなら比良山荘の熊鍋を食べて死にたい」と言わしめた熊鍋。うがー、確かにめっちゃんこ旨い。そのほとんどが脂身ながら不思議とあっさりとしており、肉の旨味は全てスープへと移行した印象。やはりマツタケはシメジのようにワサワサと放り込まれており、都心の「マツタケです(ドヤ」と虚勢を張る二流店はこちらに勉強に来るように。
口直し(?)にイチヂク。しっとりと甘いイチヂクを丸ごと用いており、とろりとかかるクルミ味噌もクセになる味わい。なんとも壮大な口直しであった。
〆のお食事は鮎の炊き込みごはん。なのですが、こちらにも松茸が雑に放り込まれており、店側もいちいち「これはマツタケです(ドヤ」なんて無粋な説明は一切なし。まるで媚びていない。物凄まじい世界観です。
ごはんは鮎やマツタケの美味しさはさておき、鮎の卵が米の一粒一粒にまでハラハラとまとわりついており独特の食感を奏でているのがすごくいい。お椀は鯉こく。濃密にして濃厚。庭の池からバシャリと鯉が飛び跳ねる。すまない、仲間は頂いた。
デザートはトンブリのアイスクリーム。これが結構面白く、まるで上質なチョコチップアイスを食べているかのような錯覚。そして面白いだけでなくきちんと美味しいのが素晴らしい。
2万円のコース料理に税やらサービス料やらで、お会計はひとりあたり3万円弱といったところ。鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。それぞれの料理も期待を全て超えており、要するに大変満足したランチでした。次回は是非とも泊まりで訪れ、しっかりとお酒も楽しみたいと思います。

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