八丁堀の「ブラッスリー ギョラン (Brasserie Gyoran)」。ジビエが自慢のフランス料理店であり、本場のブラッスリーを思わせる深紅の外観が目印です。店名につき、元々は魚藍坂で営業していたそうで、その響きを「ギョラン」として引き継いでいるようです。食べログでは百名店に選出。
店内もやはり本場のブラッスリーを彷彿とさせる内装。空間を引き締める深い赤色の腰壁と、ダークウッドの家具がクラシックな雰囲気を醸成しています(写真は食べログ公式ページより)。
羽立昌史シェフはフランスとベルギーの各所で約6年間にわたり腕を磨きました。帰国後は「AUX BACCHANALES 」や「オザミグループ」で活躍したのち、2013年に「BISTRO GYORAN」を開業。ジビエが自慢と前述しましたが、シェフ自身も狩猟免許を持っているそうです。
ワインの値付けは良心的で、ボトルのワインは6千円台から、グラスやカラフェでの提供品も幅広く用意されており、濃いめの骨太料理に合わせてガブガブ飲むにピッタリです。
アミューズはインドのスナック「パニプリ」。パリッと軽快に砕ける薄い球状の生地の中には鹿肉の旨味が凝縮されたクリーミーで濃厚なリエットが詰まっています。添えられた野菜のマリネの爽やかな酸味とシャキシャキとした食感と共に軽快な幕開けです。
私は前菜にオマール海老のテリーヌを選択。上質なオマールの身を丁寧にすりつぶし滑らかなパテ状に仕上げており、甲殻類特有の甘みと旨味が口の中に広がります。オマールの身そのものも含まれており、プリプリとした歯応えとの対比が心地よい。添えられたソルベはリンゴであり、そのシャープな酸味が海老の海洋的な深みを引き立てます。
連れはスープドポワソン。キンキとアナゴを磨り潰した濃厚なスープであり、ひとくち味見させて頂きましたが、キンキのコク深い甘みとアナゴの繊細な旨味が融合しており、そのトロリとした口当たりと共に重厚なひと皿です。量もたっぷりだ。
自家製のパンは素朴なものですが、前後の濃厚な料理と合わせるにはこれぐらいシンプルなものがちょうど良い。日本人がゴハンにうるさいように、フランスで長く過ごした料理人はパンにまで抜かりがありません。メインは新潟産のツキノワグマをチョイス。成獣の内臓など激重な料理とは異なり、仔熊のロースなので臭みや脂身は少なく赤身の風味をストレートに楽しむことができます。ゴリゴリとタフな噛み応えであり、濃厚な赤ワインと合わせて食べるにピッタリだ。
デザートはババ。ふんわりしたスポンジがラム酒の風味を纏い、しっとりとした甘さが基調となっています。サクランボのコンポートが山ほど添えられており、野性的な酸味とジューシーな果汁が余白を彩る。加えてイチゴのソルベが添えられることで、冷たいクリーミーさと酸味がコントラストを生み出しており、軽やかながら複雑な味覚です。
締めくくりはマカロンに紅茶。ごちそうさまでした。以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.6万円。質実剛健なフランス料理をたっぷり食べてこの支払金額はリーズナブル。何より空間を埋めるゲストの雰囲気がいいですね。今夜は旨いもんをガッツリ食べるぞという決意めいたものがひしひしと感じられ、港区あたりの写真だけ撮って満足するアッパラパーとは面構えが違う。平日ランチのラインナップはよりカジュアルでお値打ちなようなので、次回はお昼にお邪魔してみたいと思います。
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