青島食堂(あおしましょくどう)/牧志(那覇市)

1997年にひとりの台湾好きな店主によって開かれた「青島食堂(あおしましょくどう)」。まるで東南アジアの混沌としたムードをそのまま持ち込んだかのような、周囲の観光地化された風景とは完全に断絶された外観であり、テレビ番組の「きたなシュラン」にも取り上げられています。
店内はエクステリアに勝るとも劣らないクリンネスであり、店主の哲学が25年以上の歳月をかけて空間に蓄積した結果と捉えましょう。ネット上の口コミには「唐突に激怒する」「頻繁にオーダーを忘れる」「常にイライラしている」などのコメントが散見され、年齢を重ねるとはそういうことなのかもしれません。近くの「山羊料理さかえ」に似たニュアンスを感じました。
ビールは700円、泡盛は800円と、店構えの割に結構高いなあという印象。とは言え長居するような雰囲気の店ではなく、どのゲストも1杯だけ飲んで食事をして帰る、みたいな使い方をしていたので、席料込みでこの代金と捉えたほうが良いかもしれません。
野菜炒め。何の野菜かは明示されてはいませんが、おそらく空心菜が主力でしょう。鮮やかな緑色の野菜が強火で素早く炒められており、茎の部分のシャキシャキとした小気味良い食感が心地よい。調味はニンニクの風味が支配的で、そこへ豚肉とキノコから溶け出した旨味が加わります。
水餃子。厚みのあるモチモチとした食感が特長的で、耳たぶのような弾力が感じられます。餡は肉の比率が高く、噛むと強い肉の旨味と肉汁が溢れ出します。10個入りと食べ応えがあり、このひと皿が700円とは悪くないディールです。
他方、「台南担仔面(タンツーメン)」はパっとしません。具材は少なく麺とスープを楽しむひと品なのですが、肝心の麺がダメ。歯ごたえは一切なく、ふやけてブヨブヨした食感が広がり、輪郭がぼやけきった締まりのない残念な味わいでした。おとなしく「魯肉飯(ルーローハン)」でも頼んでおけばよかった。
以上を食べ、ビールを1本だけ飲んでお会計は3千円弱。ネット上の口コミでは絶賛する向きも強いですが、いわゆる「きたなシュラン」的な意外性を過度に重視し、味そのものへの客観的な評価が二の次になっている気がします。やはり「山羊料理さかえ」に似た食体験なので、自身のバイアスや心理的メカニズムを理解した上で訪れましょう。

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