organ (オルガン)/西荻窪

西荻窪駅から歩いて7-8分の住宅街に位置する「organ (オルガン)」。20歳未満の入店はお断り、ワインを嗜むことを前提とする硬派なビストロです。三軒茶屋で人気を誇る「uguisu(ウグイス)」の2号店として開業し、百名店にも選出されています。
店内はヒッピーな雰囲気の先輩の家みたいな雰囲気であり、壁いっぱいの本にスピーカー、アナログプレーヤー、絵画にミシンとメッセージ性が強い。なんでも店名は楽器の「Organ(オルガン)」と「Organic(オーガニック)」という二つの意味を内包しているそうで、スタッフを含め独特の世界観を滲ませています。
ワインリストは無く、スタッフと相談しながら決めていくスタイルです。フランスのナチュール系が充実しており、あたしそういうのよくわかんない、という方は6,600円のペアリングでお願いするのも良いでしょう。
まずはスミイカの炙り。炙りによってスミイカの表面は香ばしく、中心部はねっとりとした甘みを際立たせています。根セロリとマッシュルームを層にしたガトー仕立てが深い滋味と土の香りを加えており、ストラッチャテッラのソースで全体をまとめています。
ホロホロ鶏とフォアグラのバロティーヌ。弾力のあるホロホロ鶏にフォアグラの濃厚な脂が溶け込みクリーミーなコクを加え、鶏の元気さを贅沢に引き立てます。ソースは鶏の出汁を土台としており、ホロホロ鶏の淡白ながらも深い旨味を優しく包み込みます。
パンは搾汁後の葡萄(?)からゲットした酵母を用いているそうで、なるほど素朴ながらもしみじみとした風味が感じられます。
藁でスモークした穴子。食欲をそそる燻香がふっくらと柔らかな穴子の旨さを引き立てます。添えられたゴボウのコンフィは、その土の香りと滋味深い甘みで燻製の強さをしっかりと受け止めます。ソースは発酵させた菊芋を活用しているそうで、程よい酸が料理全体に深みを与えます。何とも当店らしい味覚の集合体だ。
平目のムニエル。バターの香ばしさで白身の繊細な甘みを包み、皮のパリッとした食感が軽やか。火の通りが均等で、魚の純粋な旨味が際立ちます。白眉はエビを包んだイカスミのラビオリであり、プリッとした弾力とイカスミの深みのある塩気が詰まっています。淡白な味わいの平目とサフランのソースに複雑なアクセントを加えています。
メインはエゾジカの炭火焼き。外側が香ばしくカリッと、中はレアに近い柔らかさで実にジューシー。鉄分豊かな赤身らしい野性味が噛むごとに広がります。シェリービネガーを用いたソースは、その鋭い酸味と仄かな甘みで鹿肉の風味を洗練させ、脂の重さを感じさせません。付け合わせは色々あるのですが、とりわけエゾジカの挽肉が詰まったクロメスキ(コロッケ)が心に残りました。
お口直しにヨーグルトのソルベ。爽やかな酸味と冷たさが口どけ良く広がり、乳の優しい甘みが後を引きます。グラニテにはアマレットを用いており、独特の甘く芳しい香りとシャリシャリとした氷の食感がお洒落です。
メインのデザートは洋梨とイチヂク。秋の果実の熟した甘みとねっとりとした食感がたっぷりの生クリームと組み合わせ、スライスしたブドウで酸味とシャキシャキ感を加えます。キャラメルのアイスクリームもごっつい量であり、そのほろ苦く香ばしい味覚が全体をリッチに引き締めます。
焙煎したてのほうじ茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1万円ほどで、酒やら何やらでお会計はひとりあたり1.5万円。料理の質および量を考えれば見事な費用対効果であり、西荻マダムの支持を強く集める理由がよくわかりました。

とことんナチュールでオーガニックな世界観は好みが分かれるところなので、ご一緒するメンバーはよく考えて選抜しましょう。二重埋没目頭切開プロテーシス挿入ヒアルロン注入骨削りみたいなサイボーグは確実に浮くのでご注意を。

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