糸ぐるま(いとぐるま)/泊(那覇)

那覇市泊の住宅街に佇む「糸ぐるま(いとぐるま)」。琉球料理の専門店で、伝統的な沖縄の宮廷料理や郷土料理を提供する隠れ家的なお店です。美栄橋駅・牧志駅それぞれから十数分を要する、あまり観光客が足を向けないエリアに位置します。
店内は古民家風の落ち着いた和の空間。首里織や職人手作りのシーサー、囲炉裏などが飾られ、レトロで沖縄らしい趣があります。カウンター席にテーブル席、囲炉裏に座敷と、様々な用途で利用できるでしょう。
ビールやハイボールは700-800円といったところ。周辺相場よりはやや高めですが、安さを追求するヘンテコな客が来ないようするためには良い施策に思えました。それぐらい静かに落ちついて飲める店なのだ。
まずは「もずく酢」「じーまーみ豆富」「ミミガー和え」。いずれも琉球料理の王道を行く味わいであり心なごみます。とりわけ「ミミガー和え」が素晴らしく、ピーナッツの香ばしさとコクが、淡白なミミガーによく合います。
クーブイリチー。昆布、切り干し大根、豚肉などを炒め煮にした沖縄の家庭料理です。昆布と豚肉の旨味が溶け合った、コクのある味わいが特長です。
ひらやーちー。小麦粉を水で溶き、ニラなどの具材を加えて薄く焼いた沖縄風お好み焼きです。表面はカリッと香ばしく、中はもっちりとした食感が楽しめます。塩味のシンプルな味付けで、どこか懐かしい味わいです。台風で外出できない時などに、家にあるもので手軽に作れる料理としても知られています。
〆のお食事セットは「ラフテー」「イナムドゥチ」「白ごはん」。これ系のお店で「じゅーしー」でなく「白ごはん」というのは珍しい試みです。
「ラフテー」は、皮付きの豚の三枚肉を泡盛や醤油、黒糖でじっくりと煮込んでいます。台北の博物館にある角煮のアレに近い完璧な造形で、箸で切れるほど柔らかく、とろけるような食感がお見事。濃厚でコクのある甘辛い味わいが口の中に広がり、泡盛のほのかな香りが食欲をそそります。
「イナムドゥチ」は豚肉やしいたけ、こんにゃくなど具沢山の白味噌仕立ての汁物。白味噌の優しい甘さと、豚肉やしいたけから出るだしの旨味が合わさった、こってりとした味わいにトロリとした口当たり。なお、「イナムドゥチ」とは「猪もどき」という意味で、昔は猪肉が使われていたと言われています。
以上の「やしらみコース」が4千円。「沖縄そば」や「チャンプル」などの沖縄料理とはまた違った方向性の料理であり、似たような系統のお店としては「民芸酒場 おもろ」「富久屋(ふくや)」などが挙げられますが、その中でも頭ひとつ抜けて美味しい。お座敷を個室使いできるので、内地の方を迎える会食などの利用にも良いでしょう。

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。