モノリス(MONOLITH)/渋谷

渋谷二丁目の裏路地。映画『2001年宇宙の旅』で進化の象徴として描かれた一枚岩の石板が店名。印象的なエクステリアに入ってすぐは厨房、廊下を抜けるとダイニングという面白い設計です。
席数は20ほどですが、ややテーブルが小さく間隔も狭い。互いに会話は丸聞こえなので、お行儀よくしましょう。

石井剛シェフは辻調フランス校卒業後、青山『アテスエ』でそのキャリアをスタートさせ、フランス『ジョルジュ・ブラン』『ジャンバルデ』『ベルナール・ロバン』などの星付きレストランで腕を磨き、帰国後は丸の内『モナリザ』のシェフを務めミシュラン1ツ星を獲得。青山『アテスエ』の跡地にて独立。
まずはシャンパーニュでアルコール消毒。ワインリストはどうでしょう。店の格に比して貧弱であり、欠品も多い。値付けも割高なものと割安なものが混在しており、ゲストの選球眼が問われます。
アミューズが凝っている。左からケークサレにニンジン(?)のムースのマカロン、ゴボウのタルトです。ゴボウのタルトの旨味が望外に強く、良い意味での土臭さがビンビンに伝わり私好み。
スペシャリテの「モノリスエッグ」。フォトジェニだな。中にはクリーム状(?)のスクランブルエッグにベーコンなどが含まれており、卵の優しい味わいにシェリービネガーが響きます。シンプルな味覚ながら、プレゼンテーション含め印象的な1皿でした。
カリフラワーのムースに大量のズワイガニ、イクラをトッピング。旨味の強いカニの身にカリフラワーの円やかな甘味が滑り込み最高かよ。イクラの使用量も適切で、クランチーなクルトン(?)も食べるリズムを与えてくれます。
卵をたっぷり用いたブリオッシュ。バターもしっかりときいており、脇役として取り扱うには勿体ないほどのクオリティです。ただしコチラは最初の1発のみであり、後続のパンは普通の丸パンになってしまったのが悔やまれる。
パテ・アン・クルート。お肉のテリーヌを生地(パートブリゼ)で包んだクラシックなフランス料理。サクサクとした生地に瑞々しい肉塊。滑らかな脂に品の良い旨味。メリーゴーランドのような外観もステキ。本日一番のお皿でした。
魚料理はサワラ。これがサワラかと驚くほどフワフワとした食感であり、内側に進むにつれて滑らかな舌ざわりに。初モノのホワイトアスパラガス(まだ1月だ)も景気が良く、キンカンの程よい甘さと爽快感が全ての味覚を整えます。やんごとない1皿である。
私のメインはスペシャリテの『新三種の神器パイ包み焼き』。仔牛フィレ肉、ウサギ、フォアグラの三種の神器が折り重なり、サクっとしたパイで整理される。思っていたよりもクリアで清澄な味わいである種の抑制がきいており、無毒化された味覚です。美しい旨さである一方、パンチという意味では後述のエゾジカに負けるかもしれません。
連れのメインはエゾジカ。半分づつ交換こしたのですが、個人的にはこちらの皿のほうが好き。迫力のある味覚に凝縮感のあるクランベリーのソース。王道中の王道の味わいであり、どストレートに美味しい料理でした。
選んだボトルが悉く欠品中なのでグラスワインに進みます。このお店のワインに係る逸失利益は結構なものでしょう。
みかんのソルベでお口直しをした後は、、、
苺とフロマージュブランのパルフェです。こんなに立派な、絵にかいたようなパフェを食べるのは久しぶりだなあ。砂糖のように甘いイチゴと酸味のきいたイチゴを使い分けており、ベタな生クリームでなくフロマージュブランでリッチ感を演出。こんなに美味しいイチゴパフェは中々ないぞ。
お茶菓子はワゴンサービス。当然に「全部ください」としたのですが、ビンに入ったホワイトチョコレートのムース(?)が美味。これ単体でデザートの主役を張れるクオリティです。
ハーブティーで胃腸を整えご馳走様でした。お会計はひとりあたり2万円ほど。これだけ上質なフランス料理をしっかりしたポーションで食べ、そこそこ飲んで2万円は実にリーズナブル。料理は本格派。加えて、クラシックを体現した方向性ながらシェフの個性も輝いており、まさに換骨奪胎とも言うべき芸風です。時を経るごとに進化する可能性にも溢れており、何度も通いたいと思わせてくれる料理。細いながらもレールは敷かれた。


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