プリズマ(PRISMA)/表参道

青山の秘密の袋小路、ブルーノートの裏手、都心ではありますが普通の人はまず辿り着けない場所にある「プリズマ(PRISMA)」。食べログは3.94でブロンズメダル獲得(2020年8月)でミシュラン2つ星です。
ゆとりのある店内。コロナで席を絞っているのか普段からそうなのかは存じ上げませんが、席間がたっぷり取られ、思わず寝そべってしまいそうな特大の椅子(?)なども配されており、非日常感をたっぷりと楽しむことができます。

齋藤智史シェフは20歳で渡伊、本場の空気をたっぷり感じ取り、帰国後にいくつかのレストランの厨房を預かったのちに広尾「ペルゴラ」をオープン。2011年に場所を青山に移し「プリズマ(PRISMA)」として開業しました。
ワインはイタリア産が中心で幅広いラインナップ。数万円のワインがゴロゴロとオンリストされている一方で、一番安い泡などは6千円~用意されています。
フルーツトマトにブッラータ(モツァレラに似たチーズ)。泡状に細工されており滑らかな食感で暑い夏にさっぱりと滑り込んできました。
アンチョビクリームのトルティーナ。ひとくちサイズではありますが存在感のある味覚であり、アンチョビの深みのあるコクが酒を飲ませます。
江戸前のキスのフリット。揚げたてのアツアツのホクホクであり、淡白な味わいながら奥行きがあり、品のある1皿でした。はっきり言ってそのへんの天ぷら屋よりも全然美味しい。
パンもお見事。雑なフォカッチャでお茶を濁すようなことは決してなく、この少ない席数ながらバラエティに富んだ味覚を取り揃え、それぞれがいちいち旨い。ロブション級の美味しさであり、今夜は人生で最もパンを食べた日ベスト10に入るかもしれません。
真っ黒パリパリな生地の中にはイカ。野菜(ハーブ?)を滑らかに仕立てたクリームも詰め込まれており、流れるような食感ながら味覚は複雑にして濃厚。プレゼンテーションも含めてセンス抜群の1皿です。
こちらは江戸前のアナゴ。アグロドルチェという、やや甘酸っぱい仕様です。香ばしい焼き目とフカフカの身のコントラストに、しみじみ美味しい穴子そのものの味わい。「和の食材も使っとるで!どや!」のように押しつけがましい空気は一切なく、必要だからそうしていると言わんばかりの、良い意味で淡々とした1皿でした。
スペシャリテの「キャビアと赤ワインのタリオリーニ」。外観はとてもシンプルなのですが、その味覚は複雑にして極上。なんでこんなに旨いんや、とシェフを小一時間問い詰めたくなるほどの完成度です。特にキャビアの使い方がいいですねえ。最近はキャビアやトリュフにつき手段が目的化している店が多いですが、当店はやはり淡々と、ソースの一員として上手にキャビアが組み込まれているといった印象です。
ラビオリにはポルチーニが詰められ、アクセントとしてトリュフがトッピング。やはりこちらのトリュフの使い方も論理的であり、すりおろしまくりの一発芸は避けています。好きだなあ、こういう料理。
青みかんとクラフトコーラのグラニータを用いてメインに向けて舌を整える。クラフトコーラってのが面白い。
メインはシャラン鴨。シンプルな調理であり、鴨とお野菜の上質な美味しさが率直に伝わってきます。が、前半のあげぽよな料理たちに比べると印象は薄い鴨しれません。
デザートの前哨戦としてブドウだったっけな。サッパリと爽やかな味わいでこれまでの料理との境界線がハッキリしました。
メインのデザートはチョコレートのトルタをチョイス。外皮はガラス細工のように薄く脆くギリギリ形状を保っており、ナイフを入れるとコッテリとしたトロトロチョコレートがジンワリ流れ出てきます。これは旨い。チョコレート好きおじさんも納得の美味しさである。
お茶菓子が大迫力。多種多様な焼き菓子が盛りだくさんであり、そのひとつひとつがやはりいちいち美味しい。パンにせよ小菓子にせよ、この席数に対してこれほどの仕事量には頭が下がるばかりです。しかも全部ひとりでやってるんだもんなあ、すげえなあ。
フレッシュハーブティーで〆てごちそうさまでした。

手頃なワインを結構飲んで、お会計はひとりあたり2.5万円。イタリアンとしては高めの価格設定ですが、世界屈指の美味しさです。高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。マダムの接客も付かず離れずで心地よく、全体として華美な雰囲気ではありませんがセンスに満ちたお店です。めちゃんこオススメ。とっておきのデートでどうぞ。

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