カセント/県庁前

関西版のミシュランで三ツ星。シェフはスペインのムガリッツやカセントで修業された方。修業先のレストランのお名前で、そのまま神戸に出店。本家は二ツ星なのですが、神戸のほうが三ツ星を取っちゃって、青は藍より出でて藍よりも青し系。

元町から15分ほど歩いたところにある小さなお店。ごくごくシンプルな内装で、気負うことなく食事を楽しむことができます。サービスがきちんとしているから、居心地が良いんでしょう。味は厨房の手柄であり、居心地はサービスの手柄。
最初はイカの手づかみスタイル。塩だけのシンプルな味付け。ねっとりとセクシーな舌触りで和食のよう。甘みがある。
鹿のスープにゴボウのぶくぶく。鹿の味が強烈。驚きました。
牡蠣の味を全面に押し出した牡蠣料理。この白い粉や味付けは何だったかは忘れてしまいましたが、牡蠣の旨味がストレートに伝わってくる料理。マシッソヨ。
フォアグラの冷たいやつ。ハーゲンダッツのクリスピーサンドを複雑にしたような口当たり。素晴らしい。質の良いフォアグラじゃないと、あそこまで上品な深みは表現できないはず。
ビーツのガスパチョ。ガスパチョってトマトとニンニクとキュウリとオリーブオイルの冷製スープだと思ってたのですが、そうとは限らないのですね。ただ、私はビーツという食材がそれほど好きではないためそれほど楽しめませんでした。ビーツ好きにはたまらんとおもいますたぶん。
マグロ。スペインの伝統的なナントカソースで和えてある。美味しかった。
ニンニクのおせんべい。想像以上にニンニクの味が強烈。これも美味しかった。
アンチョビ。それほど塩気が強いわけではなく、魚の旨味が主体。これも美味しかった。さっきから美味しかったしか言ってないですね。語彙が貧弱ですみません。
モルシージャ。鴨の血をたっぷり使ったブラッドソーセージ。脂質と血の独特の臭みが混然一体となって口の中をコクで満たしてくれます。
ホタテ。唐突にシンプルな皿。炭火で焼いただけ?しかしながら炭の香りとホタテの歯ごたえ、味わいを同時に楽しむことができる出色の一皿。
サラダ。葉物の内側には温野菜がたっぷり入っており、ホエーソースをたっぷりかけて頂きます。野菜を食べきった後にはスープとしても楽しむことができる。ブラスのガルグイユハジメのミネラルほど派手さはありませんが、実直な味わいを供してくれます。
パンは全く印象に残りませんでした。他の皿がどれも印象的で、皿数も多いため、パンはこれぐらいで良いのかもしれません。
サワラ。妙妙たる火入れ。パーフェクト。サワラって別に美味しくなくて、一生主役になることができない魚としか捉えてなかったのですが、これまでの人生を反省したくなる調理でした。
メインの鴨肉も素晴らしい。ソースも血や肉汁を主体としたシンプルなものなのですが、唯一無二の出来栄え。
〆は魚介類のおじや。こういうのを最後に食べると安心するあたり、私は日本人なんだなあ。鍋にある限りおかわり自由で、5杯も食べてしまいました。



デザートもどれも美味しいのですが、これまでの皿ほどのインパクトは無い。
エスプレッソにとても深みがあり、これまでの料理をしみじみと回顧することができました。

素晴らしいお店です。ゴージャスさやアバンギャルド感には欠けるかもしれませんが、そんなことは二の次と思えるほど間違いなく美味しい。素材の味を強烈に引き出してくれる。それでいて、どことなくウィットに富んでいて、食べたことがありそうで、決してない皿ばかり。

お店を出る際にシェフがご挨拶に来て下さいましたが、とても若く、未来を感じさせてくれました。日本において、フレンチやイタリアンに比べてスパニッシュはまだまだ少ないので、彼の天下がしばらくは続くでしょう。

間違いなく日本で最高レベルのスペイン料理。オススメ。


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これは名著!なぜスペイン料理が料理界を席巻したのかが手に取るようにわかります。日本が観光立国となる手がかりも随所に散りばめられており、高城剛って懐が深いなとシミジミ。