鮨舳/瓦町

鮨舳。「すしとも」と読みます。
 清潔感溢れる店構えと若い店主。そう、お店の雰囲気がいいんですよね。大将もおかみさんも気さくでコミュ力に溢れていてリラックスできる。東京の高級店の謎の緊張感、あれは何なんでしょう。

ところで、このあたりの鮨屋はネタの質のみで勝負してくるお店が多く、江戸前は珍しい。その評判が評判を呼び、予約困難店に成長し、ついには2回転営業に。
 香川の地酒、凱陣。芳醇な旨味でクラクラする。外人好きそう。
 オコゼの刺身。歯ごたえが強いのは良いですが、肝心の魚の味が薄く、ピンと来ません。
 アイナメ。上品な脂がほどよく乗ってE感じ。
 ガリはペラペラオのものではなく、ショウガを丸ごと漬け込んで目の前でスライスしてくれる。これだけで立派な一品として成立し得る。
 イサキ。旬の短い魚をピタリと出してくれるのが嬉しいですね。
ナゴヤフグ。初めて食べました。猛烈な歯ごたえかつ溢れ出る旨味。参りました。こんなに素晴らしい食材があるだなんて。
 アオリイカ。細く長く切り通したイカたちを優しく握る。ただ、先ほどのナゴヤフグの食べ応えが衝撃的すぎて、アオリイカの味も歯ざわりも記憶に留まりませんでした。
 蒸しアワビ。むっはー!なんじゃこのワガママボディ!何もつけずにひと口あたり50回咀嚼。永遠に続く旨味!ウマーミー!!!!
 キモも上品に濃く、日本酒にピタンコです。
 トリガイ。こちらは別に普通でした。トリガイって常に周縁的な存在。
 サクラマス。川魚のマスが川でいじめられて海に追いやられて、美味しくなって帰ってきたらしい。いいぞもっとやれ。いじめろ。どっしりとした脂のシャケとは異なり、繊維の一本一本にまで脂が溶け込んでいるような錯覚。
 煮ハマグリ。トリガイとは一転、素晴らしい仕上がり。肉厚でジューシイ。ヒモの歯ごたえ。
 マナガツオを酒粕につけたもの。マナガツオってあまり好きな食材じゃないのですが、ここでは絶妙な魅力を感じました。
 マナガツオの皮の部分を炙って握る。シャリも赤酢に。憎らしいほど旨いのです。
 ガリもどんどん切ってくれますよ。
 シャコ。手前がメス。奥がオス。違いは良くわかりませんがいずれにせよ美味。歯にシコシコって貼りつく感じが面白い。
 広島の地酒、亀齢。先ほどの日本酒をよりフルーティにしたもの。女の子好きそうこのお酒。
 赤身のヅケ。説明不要。ヅケは正義。漬正義。
 本マグロの「はがし」。スジをはがしたものですな。見てくれは良くないものの味は確か。
 同じく「はがし」の大トロの部分。甘えたくなる妙味。
 コハダは特筆すべき点はなし。普通でした。
 ノドグロを炙ったものを芽ねぎと共に。ノドグロって高級魚と言われる割には実はそんな高くなくて美味しくもないよなあ、と、常々考えていたのですが、当店のそれは跳ね上がるほど美味しかった。今まで食べてきたノドグロとは何だったのか。
 今シーズン最後のカキ。程よく水気を抜いて凝縮させており素晴らしい。
 近海物の紫ウニ。ちょこんとゴハンを盛ったかと思うとウニの山。幸せを具現化したもの。
 こちらは函館の紫ウニ。エサが異なるので味わいも変わる。申し訳ないですが函館のほうが美味しかったりして。
 アナゴ。ビジュアルは良いのですが、やや期待ハズレ。まあクールダウンと考えることとしましょう。
一方で、タマゴは上品な甘さがきいており素晴らしい出来でした。

以上、非常にレベルの高い江戸前鮨をおなかいっぱい食べて、銀座の半額。感激しました。近海物と旬の物で攻めてくるあたりが憎いですな。

ただ、なんとも困った店である。いかんせん東京からは遠すぎる。香川に用事なんてそうそうない。そういう意味で、大のお気に入りではあるものの、人生であと数回も来れないんでしょうね。つくづく困った店である。

1クールのレギュラーより1回の伝説。常連にはなれないものの、今回の味わいを記憶に留めておきたいと思います。ごちそうさまでした!



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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。


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