アコルドゥ(akordu)/奈良公園

東大寺の旧境内跡地に居を構える「アコルドゥ(akordu)」。350坪もの広大な敷地が自慢であり、確か奈良県による10社コンペか何かでその座を射止めたとかそんなだった気がします(詳細失念)。店名はスペイン・バスク地方の言葉で「記憶」の意味。
川島宙シェフは東京都出身。フランス料理人として活躍したのちスペインはサン・セバスティアン郊外の「ムガリッツ(Mugaritz)」の戸を叩き独自の路線へ。帰国後に当店をオープンし、2016年にこの地に移転してきました。なるほどインテリアや家具などあの辺のレストランを彷彿とさせるニュートラルな雰囲気。キッチンも丸見えで居るだけで楽しくなれるお店です。
ウェルカムドリンクとして地元のやんごとないお茶が供されたのですが、これは渋いというかウッドというか、表現が難しい味覚で微妙でした。
飲み物は殆どのゲストがペアリングで注文していましたが、私はタブレットのワインリストからチョイス。ランチで1本で通すにちょうど良いボリューム感でした。
お魚はシマアジ。海無し県なのでぜんぜん期待していなかったのですが、これが滅法旨い。しっとりと上質な舌触りにところどころ感じる肉っぽさ。豆のソースもありそうでない風味であり、のっけから抜群のセンスを提示してくれます。
ニンニクの風味をきかせた豆乳のスープ。エビの官能的な味覚に豆乳とシャラっとしたタッチが合い、ニンニクのアクセントもよく響く。うーん、オシャレな味わいやなあ。
夕食もあるのでそれほどバカスカとパンは食べなかったのですが、それでも思わず2つに手が出る旨さ。ピュアッピュアなオリーブオイルとセットで美味しかった。
地元の豚肉と鴨のパテ。コース料理の中のちょっとした1皿というケチ臭いポーションでは決してなく、しっかりと肉を食べたと思わせる発言力。旬の栗で食感に強弱を持たせたり、ソースはハチミツで素朴にと緩急が自在な1皿でした。
パスタは桜井名物の手延べそうめんをスタイリッシュにしたパスタ。ソースはバジルに海苔、そして柑橘と素朴な組み合わせなのですがきちんと美味しい。これが、料理だ。何も考えずトリュフを削りまくるレストランはアホである。
お魚料理はマダイのロースト。むっちりがっちりムガリッツな歯ざわりであり、その内部は驚くほどジューシー。食べ応えのあるポーションであり記憶に残る食感です。ソースはセロリを起用しており粋な計らい。
メインは大和牛。モダンスパニッシュにありがちな、妙に芝居がかった調理や調味は無く、チャン・ウォニョンの脚のように真っすぐな味わいです。Fランの料理人ほどややこしい取り組みでドヤリングしがちですが、一流の職人は素材を見極めて何もしないものである。
デザートはノスタルジックなメロンの器にメロンの果肉やジュレ、アイスクリームなどなど。これはまあ、料理に比べるとちょっとアレでした。
小菓子とハーブティで〆てごちそうさまでした。

1万円ほどのコース料理にワインを2人で1本飲んで、お会計はひとりあたり1.5万円ほど。おおー、これは見事な費用対効果ですねえ。ロケーションは抜群で内装はオシャレ、サービスは無印良品のように素朴なタッチであるものの料理は疾風のようなペースでテンポ良く提供されます。何より料理がしっかり美味しい。はっきり言って「ムガリッツ(Mugaritz)」なんかより全然美味しい。青は藍より出でて藍よりアコルドゥ。
このあたりは東京のアンポンタンなモダンスパニッシュ族も見習ってほしいところですね。どうも最近うわべだけのモダンスパニッシュ料理人が多く、ドライアイスたいてタレと泡を食わせてりゃいいんだろ的な風潮がとても気になり私はスペイン料理とは少し距離を置いていたところ。対して当店は何料理とのジャンル分けなどどうでも良く、純粋に美味しい。それに尽きます。
もちろんここに至るまでのシェフの苦労は並大抵のものではなく、何の後ろ盾もなくスペインの僻地に飛び込む不安は計り知れないものがあったでしょう。だがしかし空は見上げるためではなく飛ぶためにあり、悔しい思いをしたのならばそのぶん自分を磨けば良いだけのこと。今度は夜にお邪魔したいと思います。

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