ウラノ(Restaurant Urano)/市ヶ谷

虎ノ門から市ヶ谷へ移転リニューアルオープンを果たした「ウラノ(Restaurant Urano)」。この辺りは「シェ オリビエ (Chez Olivier)」などフランス料理の佳店が集っているエリアです。
店内はテーブル席のみで、10人入るか入らないかのサイズ感です。店側はシェフとマダムのツーマンセルであり、やはりレストランはこれぐらい規模が一番旨いものである。

浦野健次郎シェフは都内のレストランをへたのち渡仏。アルザスで腕を磨いたのち、銀座「ペリニィヨン」の料理長として長年厨房を預かりました。2003年に虎ノ門で独立を果たし、2018年に市ヶ谷へと移転。
アミューズから抜群に美味しいですねえ。ミズダコをイカスミの生地でベニエ(揚げる)しており、シンプルな調理なのですが奥行きのある味覚です。ハーブ(?)のアクセントもセンスが良い。この時点で当店は本物だと確信しました。
立体的な盛り付けで私のカメラの腕前では伝わりにくい写真となってしまいましたが、ビーツとトマトのジュレがグラスに敷き詰められ、アカザエビが彩り良くトッピングされています。ビーツ特有の土っぽさ、トマトの酸味、エビの旨味と典雅な味覚の組み合わせです。
エゾアワビは肝のソースでコッテリと頂きます。ご想像の通り文句なしの美味しさでありアルコールにも良く合う。白眉は万願寺唐辛子を用いた葛豆腐であり、この組み合わせを展開するフランス料理店は世界でもただひとつでしょう。
パンは素朴な味わいですが、穀物の凝縮感も感じられ、質実剛健な味わいです。やはりフランス帰りの料理人の店で出るパンは美味しいことが殆どです。
アマダイと夏野菜のスープ仕立て。ややもすると前衛的な日本料理の椀物のようであり、スープの1滴1滴まで染み入る旨さです。量もたっぷり。
メインの前に小さな肉料理を挟みます。シャラン鴨のスモークとブーダンノワールというクセつよつよなカップルなのですが、不思議と綺麗な味覚にまとまっており、何ならシャンパーニュでも心地よく楽しめたくらいです。バランス感覚とセンスを感じさせるひと皿でした。
メインはこれまでのモダンな料理から一転、どクラシックなひと皿です。ラムのミルキーな風味がストレートに伝わるローストであり、この料理を美味しくないという人はこの世に存在しないことでしょう。ポーションもしっかりしており食べ応え抜群です。
デザートはフルーツパフェ。旬の果物が百花繚乱で、どっしりとした味覚のアイスにエスプーマと、ハイカラに見せてスイーツの本質も見逃せないひと品です。やはり量は多くその辺のチャラいスイーツ屋が尻尾を巻いて逃げ出すレベルです。
ミニャルディーズも凝っていて、冒頭記した通りアミューズからお茶菓子まで全てにシェフが関与するというコンセプトはレストランの基本であり結論のように感じました。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上の料理が1万円という奇跡の価格設定。こんなに完成度の高い1万円があるか?そこそこワインを飲みましたが、それでもお会計はひとりあたり2万円強に落ち着きました。

お金の話はさておき、料理のクオリティが実に高く、モダンからクラシックまでフランス料理の今昔物語集とも言える構成です。どうしてこのお店はそれほど知られていないのだろう。箱は小さいので、一度見つかってしまうと瞬時にメルトアップし予約困難に。そんな予感を覚悟させるレストランでした。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。