白金台こばやし

白金台・目黒駅・広尾駅からそれぞれ徒歩15分ほどという陸の孤島に位置する日本料理店「白金台こばやし」。食べログではブロンズメダルを受賞し、百名店にも選ばれています。
店内はカウンター8席のみ(写真は公式ウェブサイトより)。品の良い内装で、適度に明るく健康的な印象を受けました。

小林和道シェフは関西出身で、そのキャリアの大半を関西で過ごし、2013年に当店をオープン。寡黙で真面目一徹。血管が浮き出る上腕がセクシーで、麻布十番「鮓ぱんち」と双璧をなす筋肉っぷりです。
お店の格に比べると酒の値付けは良心的で、たっぷりサイズのビールは900円。日本酒の種類も豊富で一律1合1,400円。気の良い女将さんがどんどん注いでくれるので、気持ちよく酔っぱらうことができます。
まずはサっと揚げた白魚。黒いのも実は白魚で、イカスミを用いて着色するという遊び心。
お雛様の時季だったのでちらし寿司。日本料理は鮨にくらべてこういった洒落たことができるのが良いですね。
お椀のタネもハマグリを起用しひな祭り仕様です。澄んだお出汁に貝のメタリックな味わいが響き、じんわりと身体に沁み込む美味しさです。
お造りに入ります。まずはサワラ。軽く炙って風味を引き出しシットリとした味わいです。写真右下の泡状の醤油が面白く、それだけで食べて美味しい。レンゲでジャブジャブいきたいくらいです。
ねっとりと官能的な舌ざわりのイカに健康的な鉄分を感じるメジマグロ。対極的な味覚の配置ながらいずれもがベリー美味しい。
八寸もお雛様のようなプレゼンテーションであり、店主の美意識の鋭さが窺えます。いずれもひと口サイズながらきちんと美味しく、これだけで1合飲めてしまうかもしれません。
アマダイは味噌焼きで。これまでのお料理はさりげない調味のものが殆どでしたが、ここはらはイケイケな味付けです。味噌の旨味がコッテリとしており、やはり酒の進むひと皿です。
続いてアイナメ。品が良く綺麗な味わいであり、白ワインも合いそうです。
箸休め(?)にひと口のお肉。そういえば、ここに辿り着くまで殆ど肉を食べてないなあ。それでいてこの食べた感。余は満足じゃ。
フグの白子のお鍋。トロンとした口当たりに濃厚なクリーム感。健全なアサツキとのコンビネーションもグッドです。
お食事に入ります。こちらはホタルイカの土鍋ごはんであり、ホタルイカの大人の苦みが食欲を再起させます。
続いておじゃこご飯。お腹に余裕があれば他にも数種類用意しているとのことであざまる水産。。
続いて牛丼。何と高貴な味わいの牛丼でしょう。そのへんの牛丼屋のそれとは別格の味わいであり、この品質を達成してこそ生娘シャブ漬け戦略と言えるでしょう。
大トリは先の白子のお鍋の雑炊。やっぱ炭水化物って旨い。日本人とは畢竟、米なのだ。
食後の甘味はタンカン(だっけ?)のゼリーにアイス、おもち。日本料理店におけるスイーツは素っ気ないことが多いですが、当店のそれはきちんと愛情込めて作っていることがよくわかるフィニッシュでした。

以上、お食事のコースが19.800円に気前よく酒を飲んでお会計はひとりあたり2.8万円といったところ。暴騰に暴騰を重ねる東京の和食事情を鑑みると、大変良心的な価格設定であり、日本料理に対する愛情、ゲストをもてなそうとする料理人魂を感じました。

とても良い店でした。会食とかグルメ会とかじゃなくて、2-3人の親密な関係でお邪魔したい日本料理店です。

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