サイゼリヤ(Saizeriya)/海浜幕張

幕張の現場があって、終演後から夕食だと遅くなっちゃうから、近くのショッピングモール「プレナ幕張」にある「サイゼリヤ」で手早く済ましておくことにしました。ピークタイムに備えて準備している行列テープの長さに戦慄しますが、我々は16時台というヘンテコな時間にお邪魔したためすぐに着席できました。
すぐに着席、と言っても店内はほぼ満席であり、人気のほどが伺えます。採光が良く明るく健康的な雰囲気で、中高生のグループがスイーツとおしゃべりを楽しんでいたり、中高年のグループが酒盛りしていたりと使い道は多種多様。すっかり国民的レストランとしての地位を確立しています。
QRコードから注文するのですが、料理写真と説明は大判のメニューブックに任せ、スマホからは商品コードを入力させるのみという見事な割り切り。ユーザにとってのUI/UXが素晴らしいことはもちろんのこと、ソフトウェア品質や保守・運用工数にも寄与する合理的な設計方針です。
メニューブックを開く際のドキドキ感と一覧性はスマホやタブレットでは表現できません。何でもデジタルに振り切れば良いというものでは無いのだ。

小皿料理は200-300円、パスタや肉料理であっても500-600円。圧倒的な低価格に目を瞠ります。一方で、思いのほかメニュー数は少なく絞られており、恐らく料理の種類の少なさによって食材を共通化し在庫ロスを最小限に抑え、効率的な発注と生産を可能としているのでしょう。
連れは200円の「セットドリンクバー」、私は400円の「生ビールキリン一番搾り」を注文。ビールをコンビニで買うのと変わらない価格で楽しめるのは嬉しい限り。容器はガラス製でなく合成樹脂(?)を採用しており、ガンガン洗えるよう耐久性を重視しているのでしょう。
「エスカルゴのオーブン焼き」は400円。ガーリックバターとオリーブオイルをたっぷり使い、エスカルゴと刻んだ野菜を熱々の状態で提供します。変な表現ですが普通に美味しく、このクオリティのエスカルゴがこの価格で楽しむことができるのは世界的に見ても珍しいかもしれません。フランス人に食べさせて、「コレで2ユーロちょっとだぜ」と伝えると腰を抜かすこと間違いなし。
「たまねぎのズッパ」は300円。飴色になるまでじっくり炒めた玉ねぎを用いており、野菜本来の自然な甘みと深いコクが溶け込んでいます。オニオングラタン風にパンが浮かんでおりスープを吸ってとろりとした食感に。ロイヤルホストの「オニオングラタンスープ」も相当旨いですが、費用対効果という意味ではサイゼリヤに軍配が上がるでしょう。
「小エビのサラダ」は350円。サイゼリヤの定番で、プリプリの小エビ、レタス、トマト、キュウリなどが彩りよく盛り付けられ、専用ドレッシングがたっぷりと注がれます。エビの量がとてつもなく多く、こんなんで利益は出るのかと、こちらが心配になるほどです。
「若鶏のディアボラ風」は500円。ぜんぜん辛くは無く所謂「ディアボラ風」からは遠い調味ではありますが、それでもこれだけの量と質の鶏肉を用意してこの価格設定は驚異的。手際の良さとその品質は、機内食のそれを想起させます。
グラスワインの白を追加で注文。250ミリリットル入って200円とわけわかめ。すっきりとした口当たりで、フレッシュでフルーティーな味わいが特長的。万人受けする味覚であり、どの料理にも合うでしょう。ちなみに1,500ミリリットルのマグナムボトルで注文すれば1,100円です。大きいことはいいことだ。
「ほうれん草のソテー」は200円。鮮やかな緑のほうれん草をガーリックとオリーブオイルで軽くソテーし、塩で味付けしています。アクセントにベーコン(パンチェッタ?)を組み込んでおり、酒のツマミとしても楽しむことができます。これが200円なんだから、一般人がスーパーで食材を調達して自炊よりも断然安い。
待ってました大統領、「半熟卵のミラノ風ドリア」です。学生時代は「ドリンクバーにミラノ風ドリア2つ」のような注文の仕方をしたものですが、私も立派な大人なので半熟卵付きにしました。気になる価格は「ミラノ風ドリア」が300円で、半熟卵を付けると350円です。
ターメリックライス(?)にホワイトソースとミートソースを重ね合わせ、チーズと共に焼き上げる。ミラノにこのような料理が存在するとは寡聞にして知りませんが、直線的に旨い。DNAに訴えかける何かがある。
〆のパスタとして「イカの墨入りセピアソース」は500円。ソースはイカ墨をベースとしており、磯の香りと濃厚な旨味が印象的。イカの身も入っており、ムチムチとした食感が心地良いアクセントとなっています。クセのある味わいなので、ファミレスで提供するにはかなり攻めたメニューと言えるでしょう。
以上の注文の総額が3,500円と信じがたい費用対効果。港区あたりの家賃と人件費と食材だけが高いだけのマーケティング料理よりも、よほど満足度は高いです。

お会計はセルフレジで、ゲストにとって本質的ではないサービスを大胆に絞り込み、提供する機能を単純化することで生産性を向上させる姿勢が徹底されています。

もちろん私が今回の訪問で感じた美点だけでなく、プロキュアメント方針やSPA的な動きなど、見えない工夫も多々あるのでしょう。日本のお家芸である製造業としての技術を飲食業に展開した好例であり、また、人事的な評価方針も好感が持てます。
私の第二の生活の拠点である沖縄にはサイゼリヤが無く、「最寄りのサイゼリヤは台北」が定番の自虐ネタですが、一刻も早く出店して欲しいところ。サイゼのバラバラなメニュー構成は沖縄のチャンプルー文化に必ずハマる。かけてもいい。
でもやっぱり、セブンイレブンの初出店も2019年と遅かったことですし、海を越えてサプライチェーンが分断されると難しいのかなあ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。