2024年秋、富山駅から歩いて10分ほどの場所に開業した「寿し さわ田(すし さわだ)」。富山県中小企業研修センタービル1階という面白い立地であり、駐車場で困ることはありません。路面電車の「龍谷富山高校前」停留所からもすぐです。
店内はカウンターが10席弱に、小上がりのテーブル席も用意されています。澤田伸嘉シェフは富山市内の鮨店で経験を積んできたそうで、地元の魚屋や農家との繋がりが強いそう。たぶん東京の「さわ田」とは関係ないと思う。
ビールは中瓶が750円と悪くない価格設定。日本酒のラインナップも豊富であり、あの「勝駒」なども普通に置かれていました。食事につき、私は県外客なので「富山地物にぎり」を注文。10カンにお味噌汁が付いて3,800円です。早速アラ・カンパチ・カマスがまとめて3カン並べられます。うーん、味は悪くないのですが、どうもこのようなプレゼンテーションだと、回転ずしの「富山フェア」的に感じてしまい、ロマンに欠けます。
間髪入れずアジとバイガイも並べられます。私は食べるのが決して遅いわけではありませんが、普通に渋滞するスピード感です。他方、地元の常連客とはお喋りしながら1カン1カン丁寧に提供しており、当店における県外客の取り扱いが理解できました。要するに養分であり、京都の老舗で相手にされないインバウンド客の気持ちが良くわかります。
キジエビ。富山湾で水揚げされるエビの一種で、ぷりっとした食感と上品な甘さが特長的。
ガリは薄切りで一般的なもの。シャリにつき、米そのものは美味しい気がするのですが、味付けそのものはボヤけた印象があり、あまり記憶に残りませんでした。まあ、このあたりは好みかもしれません。カツオにタチウオ。カツオは凡庸ですが、タチウオが面白いですね。あまり鮨として接する機会の少ないタネですが、脂が適度に乗り、クセが少なく食べやすい。
ベニズワイガニ。繊維が細かく、柔らかくてジューシー。上品な甘みと濃厚な旨味が心地よい、。
白エビ。身が柔らかく、プリッとした弾力ととろけるような口当たりを楽しみます。ところで先のベニズワイガニもそうですが、個人的には軍艦で盛り付けたほうが映えるのですち。
お味噌汁には魚津の醸造元「宮本みそ店」の味噌を用いているそうです。なるほど優しい味わいで、滑らかでクリーミーな口当たりが印象的。本日一番の料理です。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は5千円強。うーん、ちょっと高いなあ。「吟魚(ぎんぎょ)」グループであれば似たような支払金額で腹いっぱい飲み食いできることを考えると、色々と思うところがあります。「富山地物にぎり」という、いかにも養分的なメニューを注文してしまったのが運の尽きかもしれません。いずれにせよ、地元の常連客に連れられて行くべきお店です。おつかれさまでした。

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富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌な方は是非とも富山に。
- 鮨 大門 ←銀座の半額で味と居心地の良さはそれ以上。
- 海老亭別館(えびていべっかん) ←多皿なのにモブキャラがひとつもない。
- ふじ居(ふじい) ←非の打ち所がない日本料理店。
- 美乃鮨(みのずし) ←最も幸せパワーが発揮される価格帯。
- ピアット スズキ チンクエ(Piatto Suzuki Cinque) ←青は藍より出でて藍より青し。
- ランソレイエ(Lensoleiller) ←フランスの田舎のレストランをそのまま持ってきたような感性。
- カーヴ ユノキ(Cave Yunoki) ←料理のほとんどを富山の食材で勝負しているのが素晴らしい。
- 日本料理 山崎 ←ミシュラン3ツ星和食がこの価格で楽しめるのは富山の奇跡。
- 天ぷら小泉 たかの ←富山駅から近く昼も夜も空いているのが旅行者にとっても便利。
- KAWAZ(カワズ) ←「レヴォ(L'evo)」でスーシェフだったムッシュ川崎淳が富山市内で開業。
- レヴォ(L'evo) ←クマがぶらさがっている。
- パティスリー ジラフ(PATISSERIE LA GIRAFE) ←サロショを席巻する予感。
待機児童ゼロ、結婚した女性の離職率の低さ、貧困の少なさ、公教育の水準の高さなど、日本型の「北欧社会」が富山県にはあると分析する1冊。10年間にわたって富山県でのフィールドワークを続けてきた財政学者の視点が興味深い。