乃木坂の住宅街にある「La couleur d'ete (ラ クルール デテ)」。私の東京フレンチとっておきの1軒であり、クラシックど真ん中のフランス料理を楽しむことができます。住宅街といっても乃木坂駅から歩いて数分の好立地。国立新美術館とセットで来るにピッタリです。
店内はシェフズテーブル2席とテーブルに6席(写真は公式ウェブページより)。いわゆるワンオペでの運営で、シェフは料理人であり、ソムリエであり、サービスマンでもある。4人以上であれば貸切OKなので、ちょっとした会食にも大活躍です。
ワインのペアリングは5-6千円と、都心のこの手のレストランとしては驚くほど良心的な価格設定で提供されます。我々は1.5万円の「海の幸と野菜を楽しむコース」をオーダーしつつ、お酒はシェフにお任せでジャンジャン飲んだのですが、それでも最終支払金額は2.5万円程度に着地しました。
まずはトウモロコシのポタージュ。旬のトウモロコシの自然で優しい甘みが溶け込んでおり、パンプキンシードオイルのナッティーな風味が味覚に彩りを添えます。生ハムの塩気が甘さを引き締め、味に奥行きを加える。
最初の魚介はシロアマダイ。パリパリと香ばしく焼き上げられた鱗と、ふっくらと甘い白身の対比が心地よい。その下に添えられたナスは滋味深いブイヨンをたっぷりと吸い込み、口の中でとろけるように旨味を放出します。
パンは素朴ながら穀物の風味をたっぷりと感じることができる逸品。上質な発酵バターと合わせて食べればそれだけで立派なごちそうです。
神通川の天然鮎。シェフのズっ友が半分趣味で獲ってくれるそうで、その身に宿る上品な甘みと内臓のほろ苦さが特長的。米粉の生地でパリっとした食感を演出しており、また、トリュフ香るソースの濃厚で土っぽい芳香が鮎の清涼感と対比し、奥深い味わいを加えます。
鮑のパイ包み焼き。サクサクの香ばしいパイ生地の中から、肉厚で弾力に富んだ鮑が姿を現します。鮑そのものの凝縮された旨味と磯の香りに、濃厚でほろ苦い肝のソースが絡み、味わいに深いコクと奥行きを与えます。添えられたカリフラワーのペーストは滑らかで優しい甘さが口当たりを軽やかにし、ラタトゥイユの野菜の酸味と甘みが彩りを添える。これが、フランス料理だ。
お口直しにグレープフルーツのグラニテ。特有の爽やかな香りと、キリッとした酸味、そして心地よいほろ苦さが見事に凝縮されています。
メインは鰻とフォアグラ。鰻のふっくらとした食感とフォアグラのとろける口当たりが調和しており、双方の濃厚なコクが融合します。下に敷かれたリゾットはプチプチもちっとした食感で、穀物の素朴な甘みが主役の濃厚さをしっかりと受け止めます。中には玉子も組み込まれており、とろりとした黄身が全体をまろやかにまとめ上げ、どこか鰻玉丼を思わせる懐かしくも新しい味覚です。ボリュームもたっぷりだ。
食事の量がとんでもないのでデザートは控えめサイズ。日本酒の風味がきいたチーズケーキであり、滑らかな口当たりで、チーズのまろやかさと日本酒の軽やかな酸味が絶妙なバランスを生みだします。添えられた完熟マンゴーのトロピカルな甘さも魅力的。
以上を食べ、たっぷり飲んでお会計は2.5万円。前回お邪魔した際は気絶するほどの量の肉料理を楽しみましたが、なかなかどうして魚介類に絞ったコースも見事です。私は理屈抜きにここの料理が好きだ。次回は秋冬にお邪魔して、ジビエ主体に濃厚なソースをたっぷりと楽しみたいと思います。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- オトワ レストラン(Otowa restaurant) ←本気でフランスの料理文化に取り組んでいる。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
- La couleur d'ete(ラ クルール デテ) ←選んだ孤独は良い孤独。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- elan(エラン) ←表参道のナポレオン。
- 銀座 大石 ←自分が働くならこういう職場。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- エルヴェ(eleve) ←アラカルトでもコースでも自由自在。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ) ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- アサヒナガストロノーム ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- エステール(ESTERRE) ←料理もサービスもパーフェクト。外せない食事ならココ。