鳥つき(とりつき)/恵比寿

焼鳥界隈の最高峰「鳥しき」の一門であり、池川義輝シェフの監修のもと2023年に開業した「鳥つき」。恵比寿駅から歩いて5分ほどの雑居ビル2階に位置し、同フロアに系列店「鳥佳(とりよし)」も入居するという面白い構成です。
店内はまさにイマドキの焼鳥屋であり、黒を基調としたモダンで洗練された空間。落とし気味の照明がカウンターという舞台を効果的に照らし出し、職人の手さばきと料理を際立たせる設計です(写真は食べログ公式ページより)。
アルコールはまあまあ高く、生ビールが950円にグラスワインや日本酒は2千円近くもします。ただ、後述するように食事の量がとんでもなく多いため液体を胃袋に流し込む余地はなく、結果として酒代は安く済むという面白い体験をしました。
まずはトウモロコシのすり流し。ピュアホワイト特有、果物を思わせる甘みが主役であり、滑らかな口当たり。キリっと冷えて夏の暑さを忘れさせる清涼感を楽しみます。
串焼きに入ります。まずは「かしわ」。いわゆる「近火の強火」での調理であり、内部の旨味と水分を上手く閉じ込め瑞々しくも力強い味わいに。焼鳥の王道とも言うべきひと品です。
すなぎも。コリコリとした歯応えが魅力の部位であり、クセが少なく、噛むほどにほのかな甘みと旨味が広がります。
生ハムのカルパッチョサラダ。生ハムと野菜を組み合わせ中華風に仕上げました。美味しいのですが、はたして高級焼鳥店で食べるべきひと品なのかという疑問は残ります。
せせり。首の筋肉の部分で、よく動かす部位ならではの身の締まりと強い弾力が特長的。それでいて脂の乗りも非常によく、噛むほどに濃厚な肉汁とうまみが染み出してきます。
白玉。いわゆるウズラの卵であり、外側は炭火の香りをまとってほんのり色づき、白身はぷりっとした弾力。一口で頬張ると、半熟の黄身がとろりと舌の上でとろけ、濃厚なコクを楽しみます。小さなひと品です印象深い味わいです。
ササミのサビ焼き。脂肪が少なく淡白で上品なササミの味わいを、ツンと鼻に抜けるワサビの爽やかな辛味が引き締めます。しっとりと柔らかく、繊細で洗練された味わいです。
チキンカツサンド。サクッと軽快な衣の中からジューシーな鶏肉が現れます。パンはカリッと焼き上がっており、万人受けする味わいです。串の合間に提供され、ボリューム感と親しみやすさが同居する。
ブロッコリー。思い切りの良い火入れであり、じっとりとした焦げ目が印象的。房の部分は香ばしく、芯はホクホクとした食感。余分な水分が飛ぶことで味が凝縮され、野菜とは思えないほどの力強いうまみを持ちます。
冷たいおでん。鶏、冬瓜、トマトを冷製で仕上げており、夏らしい清涼感を演出。ただ、もちろん美味しいのですが、やはり高級焼鳥店で食べる必然性は感じられませんでした。
かた。モとムネの中間のような食感と味わいであり、濃厚な旨味と適度な脂が感じられます。塩焼きで素材の甘みが引き立ち、肉々しい食感と溢れる旨味の虜になる。
チキンケバブ。鶏をスパイスでマリネし、炭火で焼き上げているのでしょうか。悪くは無いのですが、ソースの風味がどぎつく鶏の風味を制圧しています。
つくね。外は香ばしくカリッと、中はふんわりジューシー。タレ焼きでは甘辛いタレが絡み、肉の旨味と程よく調和しています。コースにボリュームと満足感を加えるひと品です。
炭火焼きしたナスを肉味噌で麻婆茄子風に頂きます。こちらもやはり美味しいのですが、中華料理屋で食べればそれで良くない?という気がしないでもない。
バンバンジー。冷製で提供され、焼鳥の合間に爽やかな変化を与えます。ただ、こちらもやはり、高級焼鳥店で(ry
ハツ。プリッ、サクッとした独特の歯切れの良さが魅力の心臓部分。内臓特有の臭みはほとんどなく、鉄分由来のフレッシュなうまみとコクが感じられます。その部位ならではの生命力あふれる味わいを堪能できました。
ヤゲンなんこつ。硬すぎず、コリコリという軽快な歯ざわりがとにかく楽しい。周りに付いたわずかな肉から染み出すうまみと、軟骨自体の素朴な味わいが、シンプルな塩味と相性抜群。
ゴールドラッシュの炭火焼き。表面の焦げ目が香ばしく、夏祭りを思わせるノスタルジックな味わい。コースに楽しい変化を与えてくれる名脇役です。
最後は手羽先。パリパリに焼かれた薄い皮の香ばしさと、骨周りについた肉の濃厚な旨味が特長的。ゼラチン質が豊富で、唇がべたつくほどのジューシーさを楽しむことができます。
鶏のひつまぶし。を炭火で焼き、刻んでご飯にのせた石焼ビビンバ風のひと品。熱々の石鍋でご飯が香ばしく、薬味や海苔を加えて味変を楽しみ、付属の鶏スープで出汁茶漬け風にも変化する。エンターテイメント性に富んだ〆のお食事です。
デザートにほうじ茶プリン。香ばしいほうじ茶の風味を活かした滑らかな甘味であり、焼鳥コースの締めに上品な余韻を残します。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1.7万円。うーん、ちょっと高いなあ。もちろん量も多いので妥当と言えば妥当なのですが、小皿料理は凡庸で、それなら割烹料理店で食べるのだけれど、というお気持ちです。焼鳥と料理の組み合わせという意味では白金「水づき(みづき)」に軍配が上がるでしょう。とはいえ焼鳥そのものは絶品なので、焼鳥だけのコースがあれば私は嬉しい。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。