分店 鳥よし(ぶんてん とりよし)/中目黒

東京の焼鳥文化を語る上で避けては通れない存在である「鳥よし」。この日は本店から徒歩数秒の場所に位置する「分店 鳥よし(ぶんてん とりよし)」にお邪魔しました。高級かつ人気の焼鳥屋としては珍しい「予約不可」というルールがあり、本店が込んでいる際には分店を案内されることもあるようです。
店内は本店にそっくりの内装であり、カウンター席やネタケースを含めてまるで鮨屋のようです。注文方式も鮨屋に似ていて、食べたいものを自由に注文しても良し、店側にオーダーストップ制の「おまかせ」でお願いしても良し。
飲み物につき、生ビールは880円、日本酒は1合1,100円から。飲み屋としてはちょっと高めの価格設定ですが、この手の焼鳥屋としては、まあ、こんなものかもしれません。
お通しのぬか漬け。この日のお野菜は大根とキュウリであり、シャキシャキポリポリとした歯切れの良い食感を楽しみます。熟成された糠床の香りがふわりと鼻を抜けますが、酸味や塩味は強すぎず上品な仕上がりです。
大根おろしにはうずらの卵黄がオンされ、シャープな辛味にまろやかさとコクを与えます。なのですが、大根おろしのお代わりは440円とまあまあ高く、なんだかなあというお気持ちです。
さっそく焼鳥。まずはハツ。当店は福島県産の銘柄鶏「伊達鶏」を用いており、炭火で表面を素早く焼き固めることで、中心部にはレア感を残しつつジュワっとした肉汁をダイレクトに感じさせてくれます。
サビ焼き。ササミを用いたひと品ですが、何だかちょっとパサついていました。つい先日「やきとり 右羽。 」で絶品のサビ焼きを楽しんだばかりなので、ついつい比べてしまいます。
かしわ 。いわゆる鶏のモモ肉であり、焼き鳥の王道です。皮目はパリッと音を立てるほど香ばしく焼きつつ程よく脂は残っており、噛みしめるほどに濃縮された鶏本来のコクを楽しむことができます。鶏肉そのもののポテンシャルを最大限に引き出す調理です。
合鴨。鶏肉の風味をより一層強めた風味が特長的。鶏肉よりも遥かに濃い鉄分が印象的で、パンチのある味覚です。
血肝。いわゆるレバーであり、当店のスペシャリテのひとつです。艶やかな照りを放ちつつ、その内部はまるでフォアグラのような口当たり。サビ焼きと違ってパサつきはなく、舌の上でマッタリと広がる濃厚なコクに思わず笑みがこぼれます。
つくね。中くらいの挽き具合であり、ギュウギュウと密度は高め。私はもっと粗目の挽き方を好むので、まあ、このあたりは人それぞれかもしれません。ナンコツのコリコリ感が心地よく命拾いしました。
山椒煮。手羽を甘辛い煮汁でじっくりと煮込んでおり普通に美味しいのですが、それほど山椒の風味が強いわけではありません。このひと皿で880円と中々のお値段なので、これなら串焼きのほうが納得感が高いように感じました。
ちょうちん。卵巣に連なる「ひも(輸卵管)」と、卵になる前の「きんかん(未成熟卵)」を一緒に串打ちしており、クニュクニュとした独特の歯ごたえと卵黄の濃厚なコクを楽しみます。
〆のお食事に付随するスープ。鶏ガラを長時間煮込んで抽出しているのか、やや白濁しており、純粋なチキンエッセンスそのもの。余計な味付けは極力抑えられていますが、その味わいは驚くほど濃厚です。ミスターコラーゲンだ。
〆のお食事は「きじ丼」。いわゆる照り焼きチキン丼であり、やや硬めに炊きあげられた白米に鶏肉が鰻丼のように敷き詰められています。タレは甘すぎずキレがあり、鶏の脂の旨味に良く合う。ただ、1,650円という価格設定はやりすぎなように感じました。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は1万円弱。質と量の割にはちょっと高いなあという気持ちはありつつも、このクオリティの焼鳥をアラカルトで注文できて予約も要らないという使い勝手の良さを考えれば悪くないディールです。16時オープンであり、早い時間帯であれば待ち無しで入店できるので、それを狙って訪れましょう。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。