加藤食堂(かとうしょくどう)/宜野湾(沖縄)

宜野湾あたりで旨い店を探すと必ず高評価に遭遇するのが「加藤食堂(かとうしょくどう)」。20歳未満は入店不可・ワインを嗜むことが原則的に求められる硬派なビストロであり、沖縄では珍しい「予約困難店」です。
我々は18時に予約を入れて一番乗りでお邪魔しました。車社会である沖縄ですが当店はアルコールを合わせることが前提なので、軒先には続々とタクシーが止まり始めます。代行を呼ぶ方もいるようですが、その場合は駐車場も予約制のため、事前に電話で確認しておきましょう。
たまにネット上の口コミで「お酒は飲めないと言ったら予約を断られた!絶対に許せない!」のように発狂している方がいますが、そもそもフランス料理とはワインとセットで楽しむものですよ。米を食えない連中が鮨屋に来ても困るでしょう?そういうことです。
ワインの値付けは良心的で、ハウスワインであればどれも1杯千円を切ります。ボトルワインはフランスのものが中心でした。
お通しは生ハムにオリーブ、ハード系のチーズ。なるほど手早く塩分をチャージし早速ワインを飲ませに係る寸法です。この発想につき、店主は酒飲みに違いない。
おまかせ前菜5種類の盛り合わせ。鶏レバーのムース、レンズ豆にキャロットラペなどフランスらしいツマミがズラリと並びます。いずれも王道の味わいであり白ワインをゴクゴクガブリ。
蒸し牡蠣シャンパンクリームソース。牡蠣を丁寧に蒸し上げワイン由来の香りとクリームのコクが円やかに調和します。濃厚ながら軽やかな味わい。仄かな酸味が牡蠣の旨味と磯の風味を引き立てます。
ブルゴーニュ風のエスカルゴ。芳醇な香りを放つパセリとニンニクの特製バターが主役の伝統料理です。オーブンでチンチンに焼かれたエスカルゴは柔らかくも弾力のある食感。添えられたバゲットをバターに浸し、こちらも立派なごちそうです。
カスレ。鶏モモコンフィのジューシーな旨味、自家製ソーセージのスパイシーな風味、自家製ベーコンの塩味と燻製香、白インゲン豆のほっくりした甘みが織りなす南仏の郷土料理です。じっくり煮込まれたスープは濃厚で、各素材の味が深く溶け合い一体感が醸成される。ほろりと崩れる鶏肉と豆の食感が心地よく、素朴ながら奥深い味わいです。
〆のフレンチごはん。「沖縄あやはし牛」のスネ肉をオリオンビールでじっくりと煮込み、バターライスを添えています。ハーブやスパイスも用いられているのか、牛肉だけでなく色んな味がする。ビールのほろ苦さと甘みも感じられ、濃厚かつ複雑な味覚です。
デザートにフォンダンショコラ。濃厚なチョコレートのテリーヌにアングレーズソースのバニラ香るクリーミーな甘さが良く合う。程よく苦みも感じられ大人の味わい。コーヒーというよりも濃いめの赤ワインを合わせたくなるひと品です。
こちらはクレームブリュレ。なめらかなカスタードプリンが主役であり、バニラの芳醇な香りと濃厚なクリームのコクが舌先でとろけます。表面のキャラメルはパリッと硬く、ほろ苦い甘さがアクセント。スプーンで割ると、カリカリの食感と滑らかなプリンが絶妙に交錯します。
以上を2人でシェアし、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1万円ほど。これぞビストロといった王道の味覚であり、なるほど塩気が強くワインを合わせて楽しまないと、これらの料理の神髄を味わえないと感じました。首里石嶺の「ビストロ アビエ(BISTROT HABILLER)」のシェフが当店出身だというのも頷ける。良く飲み良く食べる仲間と共に訪れましょう。Mange, bois, aime, rêve!

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。