「虎ノ門ヒルズに『北京ダックマニア』という、予約が数か月待ちの北京ダック専門店がある」とお誘いを受け、その4か月後にお邪魔する運びとなりました。場所は虎ノ門ヒルズステーションタワー4階のレストラン街であり、「餃子マニア」という餃子専門店脇の金属製のスライドドアから入ります。

店内はカウンターのみで10席ほど(写真は公式ウェブサイトより)。平日は2回転の休日は3回転とギチギチの運用で、予約時間ピッタリにならないと入店できないのでご注意を。アラカルト注文も可能ですがメニュー数が少なく、色々注文すると結局コースと変わらない状況に落ち着きます。
生ビールを始め、いずれの酒も800円前後のものが殆ど。商業施設内のレストランとしては悪くない価格設定です。
お通し(?)はダックのジャーキー。ビーフジャーキーに比べると軽やかな口当たりで、ビールのお供にパリパリ食べるにピッタリです。
前菜3点セット。クラゲにトマトにパクチーサラダ。トマトは杏露酒に漬け込んでおり、甘酸っぱく華やかな香りが、むきしたミニトマトにじっくりと染み込みます。まるでフルーツコンポートのような上品な味わいのアイデア賞。
焼豚とブルーチーズ。甜麺醤で甘く濃厚に仕上げた焼豚のコクと旨味に、ブルーチーズのシャープな塩気と刺激的な風味が大胆にぶつかり合います。口に入れると、まず焼豚の甘みが広がり、後からブルーチーズの塩気が追いかけることで、絶妙な甘じょっぱさが生まれます。
アヒルの皮の香ばしさと肉の旨味を甜麺醤の甘じょっぱさで引き立てます。ネギやキュウリのシャキッとした食感がアクセント。ただ、普通に美味しいのですが、予約の困難性を正当化するほどの魅力はありません。いつでも予約できる北京ダックチェーンの「全聚徳(ゼンシュトク)」との明確な違いが私にはわかりませんでした。
北京ダックが物足りなかったので、コースとは別に追加で「本日のおすすめ」を注文。この日の「本日のおすすめ」は酢豚であり、角煮を更に黒酢餡で和えたような独特のスタイルです。角煮のとろけるような柔らかさと濃厚な旨味が、甘酸っぱいタレと良く合う。
お食事は「絶品炒飯」。ごくごくシンプルな調味ですが後を引く美味しさで、2次会3次会の〆に掻き込みたくなる味わいです。
以上を食べ、ビールを3-4杯飲んでお会計はひとりあたり1万円。都心の商業施設でこれだけ飲み食いしてこの支払金額はリーズナブル。ただ、肝腎の北京ダックは「普通に美味しい」レベルであり、「マニア」を標榜するほどの特別感はありません。何なら隣の「餃子マニア」から当店の北京ダックを注文できるとのことで、軽くずっこけました。
なるほどSNSと予約困難マーケティングを上手く組み合わせた現代的な経営手法であり、レストラン経営学部の教科書に載せたいほどです。インスタで自慢するなら今のうちなのでお早めに。予約困難とかダルい派の方は1店舗あたり200-300席を擁する「全聚徳(ゼンシュトク)」へどうぞ。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
- チャイナハウス龍口酒家(ロンコウチュウチャ)/幡ケ谷 ←東京の10,000円以下の中華だとダントツ好き
- 中華銘菜?陽(センヨウ)/東高円寺 ←率直に美味しくアラカルト可なのが嬉しい
- サエキ飯店/目黒 ←切れ味抜群
- ShinoiS(シノワ)/白金台 ←めちゃ美味しいんだけれど高いんだよなあ
- 4000 Chinese Restaurant/西麻布 ←王道中の王道の中華料理ですげえ旨い
- センス(Sense)/日本橋 ←あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境
- 南方中華料理 南三(みなみ)/四ツ谷 ←素晴らしい、何も言うことは無い
- 蓮香(レンシャン)/白金高輪 ←日本人が一般に想像する中華料理のイメージを打破する多彩な魅力
- 中華バル 池湖(いけこ)/渋谷 ←度を越した費用対効果
- 紫玉蘭/麻布十番 ←税込800円は神のなせる業
- VELROSIER (ベルロオジエ)/河原町(京都) ←フランス料理みたい
- 開化亭(かいかてい)/岐阜駅 ←過剰なものは何も無く、足りないものも何も無い
- Mott 32(卅二公館)/中環(香港) ←この中華料理はちょっと東京には無い
- Lung King Heen(龍景軒)/中環(香港) ←総合力という意味では香港における飲茶で私的ナンバーワン