山羊料理さかえ/牧志(那覇)

日本人の中では割に山羊を食べる文化のある沖縄。この日は牧志の有名店「山羊料理さかえ」にお邪魔します。国際通りから一本入った路地にあり旅行者にとってのアクセスが良く、「竜宮通り」という語感からは考えられないほどハードボイルドな小道沿いに位置します。
「最初のひと品が出るまでに90分を要した」「山羊料理屋なのに山羊が全て売り切れていた」など混沌としたネット上の口コミを参考にし、開店してすぐにお邪魔することとしました。先客には常連がひとりのみ。これなら注文は立て込んで無いでしょうし、未だ食材切れも無いでしょう。

ところで内装につき、「片付ける」という単語はこの店の辞書に存在しないのか、ゴミ屋敷のように全てがとっ散らかっています。部室よりも汚い。きっと調味料の賞味期限は全て平成でしょう。何かとても悪いことが起きる予感がする。
まずは瓶ビールを注文するのですが、供されるまでに30分を要しました。なぜなら前夜のゲストの残飯をゴミ袋に詰め、皿を洗うところから始まるから。「あれ~?キレイなグラスはどこ~?」とベットベトの手でゴミ袋を持ちながら店内を右往左往する店主。全てが悲劇に向かっており、そこには大惨事が待っています。
「ほらあ~、見て見て~、キレイな山羊でしょう~」と、仕入れ状況にゴキゲンな店主。山羊がキレイなのはわかったから、まずは手を洗おうか。

当然にコロナ禍であってもノーマスクであり、咳やクシャミもPLの花火のように盛大です。「ごめんね、咳は出てるけど、熱は無いから大丈夫」という謎理論が胸に沁みる。富岳に計算させずとも、カウンターに置きっぱなしの生肉に飛沫が降り注いでいることが良くわかります。

続いて店主は前夜は如何にして一見客を追い出したか、如何にして常連客すら追い出したかの武勇伝を問わず語りに披露する。加えて「ゆうべはXX社のYYさんが出張で来た。今夜はZZホテルに泊まっている」などと、プライバシーもへったくれもありません。
軽快な口まわりとは裏腹に手は遅い。注文してから1時間経っても最初のひと品が出て来ない。ずらかりたい一心なのですが、Point of No Returnは越えたと腹を括り、スマホでマンガでも読んで時間を潰そうと試みます。

しかしながら、恐るべき気まぐれな店主が場面で手を止め話しかけてくるので、調理と読書は遅々として進みません。さらには先輩面した常連客がちょいちょい絡んで来、「後ろにこのビール持ってってあげてー」と配膳の手伝いもさせられるので、時が時ならシャクシャインの戦いでも起こりかねないでしょう。常連にもマナーと遠慮は必要だぞ。
これまで訪れた飲食店の中で、最も不衛生で、最も段取りが悪いお店でした。東南アジアの屋台を下回る衛生状態。↓はグーグルマップのクチコミなのですが、フィルタリングするキーワードに「衛生」が提案されるとは飲食店としてZD。レストランにマニュアルはありませんが、少なくとも常識や経験は存在して欲しいところです。
ちなみに当記事は一見かなりキツいことを書いているように見えるかもしれませんが、全ては事実であり、誇張でも何でもありません。気になる方はグーグルマップやトリップアドバイザーの口コミを確認してみましょう。読み応えがありますよ。

もちろん当店の醍醐味は店主との語らいなので、美食の追求というよりは、時どき酒と山羊が出るトークショーを観に行くつもりで、ある種のガールズバーを楽しみに行くつもりで訪れると良いでしょう。ただし店主を「お母さん」と呼ぶと「お前を!産んだ!覚えは!無い!」と烈火の如く怒り出すのでご注意を。

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