エスキス(ESqUISSE)/銀座

初めて当店にお邪魔した際はイマイチだったのですが、姉妹店の「アジル(ARGILE)」の印象が結構良く、加えて「2019年2月に新体制でリニューアル」との情報を得たので6年ぶりにお邪魔しました。
リオネル・ベカ(Lionel Beccat)シェフはフランス・コルシカ島出身(写真は公式ウェブサイトより)。「メゾン・トロワグロ」でセカンドシェフにまで上り詰めた後、新宿「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」のシェフとして来日し、2012年に「ESqUISSE」へ。
食前酒(シャンパーニュ)とミネラルウォーターは込み料金という明朗会計。2019年10月には全体的な値下げを検討しているなど、東京の高級フレンチとしては珍しい試みです。ブランドブランのキリっとした旨味が火照った身体を冷やしてくれました。
1皿目は梨にカラスミ。それ以上、説明しようが無いほどの梨とカラスミ味でした。
サバ。片方は炙り、もう片方は生で。こちらも前の皿と同じく、見た目以上の何もない味わいでした。これ、目をつぶって食べたらたぶん回転寿司のサバとそんなに変わらんぞ。
リースリングのグランクリュ。私はリースリングという品種をあまり好まないのですが、コチラの1杯は実に厚みのある味わいでグレイトです。量もたっぷり注いでくれるので今夜もハッピー。
ハモそのものは炙ってあるのに出汁はヒンヤリ冷たい。うーん、不味くはないですが、ちょっと何をしたいのかわからないですね。シェフは和食に寄せたいのかなあ。
合わせる白はコチラ。ブルゴーニュらしい上品な樽の風味が心地よく、全体としての味わいの解像度も細かい。料理の力不足を補う素晴らしいペアリングです。
パンドカンパーニュは一般的なそれの味わいでした。
ボタンエビも1匹だけがペロっと置かれているだけであり、味は悪くないのですが、見た目も温度もよくありません。
エビのシェルパを担うのはクリュッグ。熟成を促進するためにあえてハーフボトルで輸入しているそうで、なるほどクリュッグはクリュッグだと言わしめるパワフルな味わいです。
キンキも魚そのものは悪くないのですが、ほんの数口だけで食べ応えに乏しい。はっきり言って立ち飲みビストロ浜町「富士屋本店」のフィッシュ&チップスのほうが美味しいです。
シャトーヌフ・デュ・パプの白。そういうものが存在することは聞いていましたが、飲むのは生まれて初めてです。そしてこれがかなり旨いのである。あの産地は殆どが重めの赤ですが、ボルドーみたいに白の人気が上がっても良い気がしました。
メインはラム。これは今夜の料理で唯一、そしてダントツに美味しかった。こんなに高次元な料理が出せるのに、これまでの迷走っぷりは何だったのでしょう。ピカソが本気出して絵を描けば超上手いみたいな感じなのかなあ。
合わせるワインもポンテカネと最高かよ。当店の料理は全体的に不思議の国のアリス状態ですが、ワインについては正統的な合わせ方で気前も良い。相対的にワインペアリングの素晴らしさが目立ったディナーです。
お茶?ハーブ水?やはり意図が見えない液体を飲んだ後はデザートです。当店のパティシエは代々木公園「PATH(パス)」との兼業であり、かのレストランでのデザートはどっちゃくそ美味しかったので期待で胸が高鳴ります。
ココナッツ風味のヨーグルトに煮込んだルバーブなどなど。おしゃれな外観ですが、味はまあ中くらい。
これはソムリエのちょっとしたギャグでしょう。「Quintessence」というデザートワイン。それにしても「Quintessence」って難しい単語ですよね。この単語に聞き覚えがあるの、フランス人よりも日本人のほうが多いんとちゃうか。
メインのデザートはグレープフルーツ主体でそれなりに美味しいのですが、代々木公園「PATH(パス)」で感じたパンチ力は見当たらず。
小菓子(?)とコーヒーでごちそうさまでした。
うーん、ちょっとどうしちゃったんだろうというレベルの迷走度合いです。初めて当店にお邪魔した際の記憶を拭い去るつもりで訪れたのに、より悪化しています。少量多皿で何を食べたか全く記憶に残らず、これで食べログ4.51(2019年9月)のミシュラン2ツ星とは今世紀最大の過大評価に感じました。
ただ、ワイン・ペアリングの素晴らしさについては既に述べましたし、サービスの技量も全く問題なし。加えてメインのラムについては尊い美味しさがありました。つまり何かが私の好みからちょっとづつズレているだけで、それがカチっとはまれば唯一無二のレストランに化けるのかもしれません。また6年後に来てみようかな。その頃には前菜とメインとデザートだけをアラカルトで注文できると嬉しいのだけれど。


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